「Glory」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




ーーーー慰霊祭から2年後、



ーーーーフェルナンドの葬儀の日、



喪服姿のウィーゼルは亡父の棺を背にし、
来訪した勅使の前で片膝をついていた。









ーーーー戦友を含む要塞“鷲の巣”関係者の名誉回復に後半生を捧げ、文字通り全てを為し終えた後に力尽きた父フェルナンド。

その臨終には人伝に聞いた元部下や遺族がこじんまりした邸宅にどっと押し寄せ、その光景に満足して旅立った父をウィーゼルは看取った上で、
悲しみを押し殺し葬儀までの所持万端をてきぱきとこなしていった。

フェルナンドが亡くなる直前に駆けつけた皇帝ポールには、父の遺言でもある『平民として質素に。皇帝陛下はじめ閣僚各位の国務に支障をきたさぬよう』に基づき、謝辞を述べつつも皇宮に戻るよう促していたのだ。


そして葬儀当日。
粗末な棺桶の中で様々な色合いや種類の花々に包まれて安らかに眠る父の傍らで、ウィーゼルは遺族代表として気丈に参列者と接していた。



邸宅前で最後の別れを交わそうとする元部下や遺族、更にはフェルナンドの旧友等千人近くでごった返す中、

昼過ぎになり2名の近衛兵を従えた勅使が葬儀会場であるフェルナンドの邸宅を訪れる。


そして驚く参列者達を尻目に真っ直ぐフェルナンドの棺の前まで進み、
今こうしてウィーゼルと相対しているのである。






「遺族からの懇願により本日皇帝陛下は国務を優先して参列なさりません。ですが」



眼前のウィーゼルを見下ろす形で勅使は言葉を紡ぎ、ここで一瞬言葉を切る。




「本日の閣議において、陛下は今我が手にある勅命を最初にご裁可なされました。
また陛下からは勅命を読み上げるより先に読み上げるよう別途私信を言付かっております。」




(・・・・・・・)




勅使が懐から従弟直筆の親書を取り出したのを見て、
ウィーゼルは勅命を受ける時と同様に頭を垂れて静かに目を閉じた。

いつしか邸宅内外は静寂が支配し、
参列者達は固唾を飲んで勅使が発する次の言葉を待った。



8/12ページ
スキ