「Glory」
ーーー慰霊碑除幕が終わり、続いて亡き戦友でもあるスネイル叙勲の瞬間が訪れようとしていた。
慰霊碑除幕に引き続く形で国務会議議長が正面の演壇に登壇する。
時を同じくして会場の端から近衛軍団選抜の儀仗隊と軍楽隊が足踏み揃え整斉と入場してきた。
(漸くこの時が来た・・・・全てはこの時の為に)
演壇にスネイル唯一の遺族である未亡人が黒い喪服姿で登壇するのを見守りつつ、
フェルナンドの脳裏にスネイルが遺した皇帝宛の最後の親書の末尾が蘇る。
『・・・我が友フェルナンドこそ国家の柱石、我亡き後必ず外敵を撃ち破ってくれましょう。
・・・死後の守備隊の名誉に格別のご高配を―――』
「将軍スネイルを“帝国元帥”に任じる。」
片膝をついて頭を下げるスネイル未亡人の前に立つ議長が読み上げる勅命の文言が朗々たる響きをもって会場内に響き渡る。
「祖国に対する優れた功績と勇気に対し、“第1級戦勝勲章”を“元帥杖”とともにこれを授与する。
帝都廟堂又は戦場帷幕いずれにあっても国家に益する人材を喪ったのはひとえに我が不徳の致すところである。
また跡継ぎなく家門廃絶することは我が望むところにあらず。
後世に元帥の功績と我が不明を伝えるため、宜しく親族より適切な後継を迎え、元帥輩出の家門を存続させることを合わせて命じるものであるーーーー」
議長の口から自分の言葉が伝えられているポールの表情に感慨深いものが浮かんでいるのが、遠目からもよく分かった。
議長が勅命を読み上げた後、近衛兵の1人が元帥杖と勲章が乗せられたクッションを捧げ持つ形で演台へと上がった。
未亡人は顔を上げ、近衛兵から差し出された元帥杖と勲章を恭しく受け取る。
「勅命謹んでお受けいたします。亡き夫に成り代わり、皇帝陛下に厚く御礼申し上げます」
未亡人が深々と頭を下げたのを合図に、
会場内に近衛軍団軍楽隊の葬送の戦太鼓が高らかに響き渡る。
ーーーードン、ドン、ドン、ドドン・・・・
太鼓の調べが響く中、儀仗隊が隊列を崩すことなく演台に進んでくる。
両手に元帥杖と勲章を捧げ持つ未亡人も立ち上がり、正面に向き直って横隊に整列した白銀の儀仗隊と相対した。