「Glory」
ーーーそんなフェルナンドの眼前では慰霊碑除幕次いで慰霊祭が一連の式次第に従って粛々と進行していく。
慰霊碑前の専用席に座を占める皇帝ポールが見守る中、
帝国を代表する形で国務会議議長が弔辞を手に慰霊碑前で慰霊の言葉を述べている。
「ーーー当時の帝国と国務会議の援軍なき過酷な状況にあっても、愛国心と使命感を胸に寡兵ながら倍する敵襲に孤軍奮闘、その命を散華させながらも国家の存立を守り抜いた兵士諸君の敢闘は、正しく正史に記録させるべきものであり・・・・・・・・」
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議長の読み上げる言葉を聞きながら、ウィーゼルはちらりと傍らの父の横顔を盗み見た。
慰霊文を読み上げる役は本来守備隊の兵士個々の功績整理や遺族への保証、更には慰霊祭全般の準備を所掌したフェルナンドが相応しい筈だった。
だが当のフェルナンド自身が固持したため
国務会議議長が担うことになったのだ。
今フェルナンドやウィーゼルが座る席も、
フェルナンド自身の要望により目立たぬ最後列担った経緯がある。
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ウィーゼルは父の選択の理由を知っているが故に彼の意志に理解を示す一方、
父自身が成した功績が表彰されていないことに忸怩たる思いが心の片隅に残っていた。
彼が元帥任命や勲章授与に匹敵する功績をあげたことは、皇帝はじめ周知の事実であるにも関わらず、である。
戦後父を変わらず補佐してきた娘の立場としては、ある意味無理からぬことであるかもしれない。
彼女自身、父の部下や遺族が皇帝或いは父自身に直訴する場面を何度も見聞きしていた。
その都度フェルナンドは厚意自体に謝意を示しつつ、
いつもこのような言葉で締めくくっていた。
『皆の名誉こそ、我が栄光である。今の私にはそれで十分だよ』