「Glory」

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『ーーーー・・・父上・・・・父上』




「ん・・・・・・」




傍らで袖を引く娘の囁きに、フェルナンドはつかの間のうたた寝からようやく目覚めた。



「そろそろ始まりますよ・・・・」



「そうか・・・・・済まんな、ウィーゼル」



「父上こそ・・・・お疲れが、本当に」




「ふっ・・・・・・・・」




心配気な表情を浮かべる娘に対し、フェルナンドは口許に笑みを浮かべることで応えると静かに顔を上げた。

来賓・貴賓席の最後列に座るフェルナンドの視界の先では、
彼が直前まで携わっていた慰霊碑除幕式と親友の名誉回復の場面が厳かに始まろうとしていた。





ーーーー帝都アバロン郊外



ーーーー帝国共同墓地




普段は人気の少ない墓地の敷地は、今日に限っていえば信じられないほどの人、人、人で埋め尽くされていた。

今日は共同墓地の一角に設けられた慰霊碑の除幕の日。

それは遡ること数年前、
帝国南境において2度にわたって繰り広げられた要塞“鷲の巣”における攻防で戦死した兵士達の名が刻まれた慰霊碑である。





この2日前から帝都皇宮で行われていた守備隊戦死者への叙勲と生存者への表彰。


そこでは第1次要塞攻防戦で戦死した術士キグナスも帝国術士最高の称号“黄金術士”が追贈され、息子のクラックスが遺族として代わりに勅命を受けた。


これは第2次攻防戦で七英雄ダンタークを倒したクラックス自身、


『この力は亡き父が命をかけて私に渡してくれたもの。故に父キグナスこそ救国の英雄として称えられるべき』


と訴え、自身の功績より父の名誉回復を優先した思いが結実した瞬間でもあった。

他にも戦没者や生き残りが叙勲・顕彰の栄誉に浴していった。






そして今日の慰霊碑除幕に合わせて行われる慰霊祭。
軍籍を離れ皇帝から命じられた無任所大臣として長年準備してきたフェルナンドにとって、彼自身が念願する”贖罪”の集大成であり、

慰霊祭最後に行われる第1次攻防戦の司令官スネイルに対する“帝国元帥”追贈は記念すべき大きな節目となる筈だった。




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