「Heros」

「ああ・・・・・・・」



目の前で繰り広げられる光景にウィーゼルの胸の中は感動で一杯だった。

父が言うように、たとえ父が“英雄”に値しないのだとしても、
それを越えてあまりある光景がここにあるーーーー



今までの歴史において、これだけの人々から慕われ惜しまれた“英雄”が果たして何人いただろうかーーー



ふと横にいる父フェルナンドの顔を覗き見た時、
ウィーゼルは父の瞳から一筋の涙がスゥッと流れ落ちるのを目にした。




「ウィーゼル・・・・」



「父上・・・・」



「このような気持ちになれただけでも・・・私はこの世に生を受けたことに感謝したい。

天界にいったら思う存分歴代の“英雄”達に自慢できる・・・」



「・・・・・」




コクコクと無言で頷くウィーゼルに再度微笑みかけると、
フェルナンドは目の前に広がる人の群れと
晴れ渡る青い空に目をやった。




(さあ、その時がきたようだ・・・・)






フェルナンドの意識がゆっくりと霞みを帯び、ぼんやりしたものになってきた時、

彼の鼓膜に馬の嘶きと馬蹄の音、
そして聞きなれた声が入ってくる。





ーーーーブルルルッ・・・



ーーーードガガッッ・・・ドガガッッ




「通して・・・お願いだ、通して!!!」



(陛下・・・お越しになられましたのか・・・・)



馬を飛び降りて人波をかき分けかき分け進んでくる若き皇帝ポール。

背後から続く成り立て術士クラックスと近衛軍団長トーラスの姿。










(・・・・・・・・・・)



心なしか安心したのだろう。
自分でもそれが分かる。
瞼は自然と閉じられ、
手足と上体から力が抜けていく。

頭の中に残っていた意識が霞の中に包まれていく。

周囲から聞こえていた喧騒も既に耳には届かない。


無音と真っ白い世界の中に消えていくフェルナンドの意識が最後に感じ取ったのは、

この場にいるはずのない 親友の、自分自身を呼ぶ懐かしい声だった――――













“おーい、フェルナンド。こっちこっち。こっちだってば!!”



“早く行こうよ~~、ライブラ先生待たせると怒られちゃうよ~~~”












“ああ、分かってるよ。スネイル、キグナス・・・・・・すぐに追いつくさ・・・・――――――”






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