「Heros」

「だが、お前や・・・ポール陛下や、クラックス、エイリークのお陰で、私は正道に立ち返ることができたのだ。

本当に、礼を言うぞ・・・・・・・」


そこには死ぬ直前の人間が表すという静けさと柔らかさを醸し出した 微笑みがあった。


「強いて心残りといえば・・・・お前の花嫁姿が見られなかったことくらいか・・・・」



「父上っっ・・・!!」



「父親失格、と言われても仕方ないな・・・・・・」



「いえっっ・・・・・全ては私がお手伝いしたかったからです。だからお気になさらないで・・・・・・っ」




耐えられなくなったウィーゼルは父の掌を両手でしっかり握りしめる。
見つめてくるその瞳は既に潤んでいた。





(ああ・・・これで十分だ)




フェルナンドは目を閉じ鼻から大きく1つ息を吐く。




(月並みだが・・・もう思い残すことはない。

英雄にはなれなかったが、こうして父親にはなれたのだ。


スネイル、キグナス、そしてライブラ先生・・・・・・・・・)




心の中で亡き親友や恩師に向かって語りかけた、その時だった。











“・・・ワァァァ・・・ーーーー”


“ワァァ・・・・ーーーーーーー”



開け放たれている窓の外から聞こえてくる 大勢の人々の喧騒。




「あの声は・・・屋敷の外からか?」




次第に近づいてくる喧騒の熱気に思わず目を開き、窓の外に顔を向けるフェルナンド。



「もしや、ポー・・・いえ皇帝陛下がお越しになられたのでは・・・。

皇宮には既に使いを走らせていましたから」




「何という畏れ多い・・・私のようなもののために陛下の貴重な時間を奪ってしまっては、国務を停滞させてしまうではないか・・・」



こんな時にも相変わらず堅苦しいな、と涙目ながらに苦笑するウィーゼルに、
フェルナンドは身体を揺さぶらせながら、残り少ない力を総動員する。



「起こしてくれウィーゼル。陛下をお迎えするに、このような姿のままでは・・・・臣下として分を外すわけにはいかん・・・」



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