「Heros」
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「―――――今この時より新時代が始まる!!
もし私に不服ならば、いつでも挑んでくるがいい。全て受けてたつ!!
負けるつもりはない!!!」
文武百官が勢揃いした大広間に、若き皇帝の燐とした力強い声が響き渡る。
そしてガックリと肩を落とす国務会議の保守派の面々。
今まで国政の場を支配していた力関係が逆転した瞬間だった。
ーーーー帝国暦214年
ーーーー皇宮 大広間
時は第2次“鷲の巣”攻防戦の直後、
皇帝以下フェルナンドら要塞守備隊の生き残り・従軍した各軍団が
国民歓呼に応えながら帝都・皇宮に戻ってきた直後だった。
ライブラ老師の死を目の当たりにして“覚醒”した青年皇帝ポール。
彼は軍人としてだけでなく
政治家としても既にその力量を“覚醒”させていた。
戦地から凱旋するまでに周到な根回しを展開、
ライブラ直系の改革派を結集させるだけでなく、
門閥内の穏健派を取り込み門閥陣営を事実上分断、
帝国各地に展開する軍団の忠誠宣誓を求めることで事実上帝国全軍を掌握、
カンバーランドやヤウダといった有力自治領の改革派にも勅令を発して、帝都の門閥系と繋がる勢力からの実権奪取を呼び掛けていたのだ。
保守派は今この瞬間にその事態を悟るほど完全に油断しており、
歴史的戦勝によって主導権を確立していたポールによって、
この時門閥保守一党支配に終止符が打たれたのであるーーーーー
(立派になられた・・・見ておられますか、ライブラ先生・・・・。
貴方が希望を託した少年は今至上の高みに自ら立たれましたぞ・・・・)
広間にすら戦勝を祝するために集まっていた屋外からの歓呼の声が聞こえてくる。
そんな声を耳にしながら、フェルナンドは腕や肩に巻いた包帯を無意識に撫でながら、
林立する人混みの末席から目の前で展開された情景を感慨深げに見つめていた。
上座からは皇帝ポールの若々しく力強い宣言が続く。
「現在帝国を蝕み停滞させている諸問題に全力をもって取り組む。
今ここに抜本的な改革の時が来たことを宣言する。
そして、今回要塞“鷲の巣”の戦没者や生き残った者に対する不当な扱いを見直して名誉を回復させ、
帝国がそうした英雄達にとって“守るに値する国”であり続けるよう、力を尽くす!!!」
“オオオオ・・・・・”
(これで・・・ようやく決心ができた。
生き残った私の残りの人生、陛下のご意志を具現するために全てをなげうつことを・・・・)