「Heros」

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「ーーーーー長らくご無沙汰していました、ライブラ先生」



「フェルナンド・・・・」




昼下がりの暖かい風が頬をよぎる中、

孤児院の遊び場、
片隅の切り株に腰を下ろし目の前で無邪気に遊ぶ子供達を笑顔で静かに眺めていたライブラは、気配なく傍らに立った教え子の顔を見つめ暫し言葉を失っていた。






ーーーー帝都アバロン郊外



ーーーー孤児院





フェルナンドがこの孤児院に来るのは今日が初めてではない。
フェルナンドが幼年学校学生及び青年士官時代、
恩師ライブラから自ら育った孤児院に他の教え子達と何度か一緒に招かれ、食事や孤児達の相手をさせられたものだった。


だが壮年になったフェルナンドがここに来るのは実に20数年ぶりのことであり、

ライブラ本人とこのように直接顔を合わせるのも8年ぶりのことだった。













「ーーーー生憎何もないが、紅茶だけは良いものを揃えておるからな。ま、気楽にやりなさい」



「・・・・いただきます」



ライブラに連れられて院長室に案内されたフェルナンドは、
椅子に座り目の前に出された淹れたての紅茶に口をつける。

ライブラもフェルナンドの正面の席に腰を据えながらも、
ただ黙って教え子の様子を見守っていた。



ライブラから見て、長い年月が経過したおかげで雰囲気・筋肉・顔の皺や髭など青年の頃とは一変してしまっていたが、
こうして1対1で向き合って見ると若かりし時代と少しも変わらない。

憔悴気味とはいえ、昔と変わらぬ“教え子”がそこにいた。











「先生。私は・・・・・」



「・・・・・ん?」



「・・・私は何も知らなかった。何も知らないまま、親友を死地に追いやってしまったのです。

それも2人も・・・・」



「・・・・・・」




要塞“鷲の巣”陥落と守備隊玉砕の報を受けたフェルナンドは、
流石に平静ではいられなかった。

だがどうにか周囲に心の動揺を気づかれないように振る舞い、
七英雄ダンタークが北上せず南方に去っていったことを確認するや状況報告の為帝都に向かう。



そこでフェルナンドは知ることになった。

国軍上層部や知り合いの貴族達から得た情報により、
自分がいかに親友スネイルの境遇を誤解していたかということをーーーー






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