「Heros」

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ーーーーそして遂に“運命の時”が訪れた。






ーーーー帝国暦210年



七英雄ダンタークが数千のモンスターの群れと共に、ナゼール海峡を越えて北上、
バレンヌ帝国南部国境に襲来した。


国境防衛の要であった要塞“鷲の巣”に配置されていた守備隊は、押し寄せるモンスター相手に死闘を展開する。


司令官スネイルは直ちに急使を帝都に派遣し急を知らせ、
周辺地域の友軍も直ちに警戒態勢をとった。




だが、この直後私のいる南バレンヌ守備隊に
帝都から国務会議が派遣した急使が来訪する。

国務会議、といっても当時の政界ではライブラ先生は失脚同然に引退したばかりであり、
改革派の人間も次々と排斥されていたため、

事実上“門閥保守派”の急使といっても間違いではなかった。











ーーーーその急使が命じてきた内容を聞いて、流石の私も一瞬耳を疑った。



『あくまで南バレンヌ・ルドン国境に防衛線をしき、半島及び帝都への敵侵入阻止を優先せよ。
貴下の部隊を率いてナゼール国境に駆けつけること、まかりならぬ――――』




反論しかけた私の口を封じたのは、使者が放った

『なお、国務会議としては貴君に対する待遇の改善について考慮するつもりである』


という言葉だった。


若き頃の私ならば、
自らの正義感と熱情に身を委ねて間違いなく一蹴していたことだろう。


だが自らの境遇への失望、親友への嫉妬と不信、
そして英雄になる夢が色褪せかけていた私は
その言葉をそのまま受け入れてしまう。



今にして思えば悔やんでも悔やみきれない所業であったと思っている。


その後スネイルからの急使がもたらした自分及び“皇帝陛下宛”の親書をそのまま封印し黙殺する。











ーーーー私が要塞“鷲の巣”陥落とスネイル以下守備隊の玉砕、

そして戦死者の中に
もう1人の親友キグナスの名前を見出すのは、それから間もなくのことだった。






その時初めて沸き起こってきた感情の中で
私の足はそのまま帝都アバロンにいる“恩師”の下に向かっていたーーーーー





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