「Heros」

ーーーーそして遂にライブラ先生は国務会議内の多数派工作で失脚。

生まれ育った孤児院の院長として引退を余儀なくされた。


その後改革派の追放と門閥支配が平行し、
停滞した空気の中 暴動が頻発していくことになる。
これが私が1部隊を率いる身になった頃の状況なのである。













ーーーーガシャン、ガシャン、ガシャン・・・・


荒々しく足を踏み鳴らし、鎧の留め具がこすれあう金属音を響かせつつ、
フェルナンドは邸宅の玄関をくぐる。

待ち兼ねたかのように、奥から青い髪の1人の少女が飛び出してくる。




「父上、お帰りなさい」




「・・・・・ああ、今戻った」




ーーーー南バレンヌ


ーーーー駐屯軍司令用の官舎





フェルナンドは少女に自分が身に付けていた鎧兜を預けながら訪ねる。



「ウィーゼル、私が留守の間、誰かが訪ねてこなかったか?」



「いえ、特に来客はありませんでした。
手紙については幾つかきていましたので、書斎の方に置いてあります。

あとお風呂も沸かしてありますので、お食事の前にどうぞ」



「そうか、すまんな」




一礼してその場を後にする娘の背中を見つめながら、今更ながらに自分に似ず出来た娘だという感慨にとらわれていた。




(私というより・・・・そうだな、あれはどちらかというと母親似だな)





ーーーー振り返ること30年前
要塞“鷲の巣”建設までの冒険行のおかげで、

フェルナンド以下の仲間たちは皇帝以下帝都の人々から熱烈な賞賛を受けた。
それはフェルナンド達が人生において味わう達成感と誇りであり、

この時の気持ちはそれから軍に復帰してからも自らの心の拠り所になった。


ルドン高原、コムルーン島、カンバーランドといった外地に勤務を経た後、

遂にフェルナンドは結婚する。
相手は当時の上官の紹介で知り合った女性で、父親は彼と同じ平民出身の娘だった。

平民出身であること、器量は人並みでも慎ましく細やかな心遣いを見せる女性だったことが結婚の決め手となった。


結婚してから4年後、夫婦は女の子を授かることになる。



母親から多くを受け継ぎつつも、
現在は勉学に勤しみつつ父親の“秘書的な”仕事も坦々とこなす娘こそ、
先程フェルナンドの前から踵を返した
青髪の若人ウィーゼルである。




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