「Heros」

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ーーーー副議長公邸


ーーーーライブラの書斎





「これは・・・・」




階下から聞こえてくる友人達のざわめきが微かに耳に入ってくる中で、

2階の書斎に呼ばれていたフェルナンドの手には一冊の分厚い本があった。



「未開の地に向かおうとする教え子へのせめてもの餞別だ」



忘れるわけがない。
幼年学校在学中、こっそり忍び込んででも読みたかった“英雄伝”そのものだった。



「お前達にとっていわばこれが“人生の羅針盤”のようなものだったのだろう?


大事業に乗り出そうとする3人の若者への餞別として一番良かろうと思ってな。
・・・・まぁ、以前より経年劣化で古臭くなっているところは勘弁してくれ」



「・・・・・ありがとうございます、ライブラ先生!!」



まるで幼年学校時代に戻ったかのような満面の笑みで英雄伝を握りしめるフェルナンドに対し、

ライブラもうんうんと頷きながら笑みを絶やさなかった。



やがてライブラはフェルナンドと共に屋外のテラスに出る。

季節は春先とは言いながらも、
北国に位置する帝都の夜は未だ肌寒い。

空気が冷たく澄んでいるせいか、漆黒の夜空には満天の星々がより近い存在としてチカチカと各々の光を放っていた。




「お前に礼を言わねばな、と思っていたのだ・・・」



「・・・・・え?」




「・・・スネイルから聞いたぞ。自信を失っていたキグナスに渇を入れてくれたのだろう?」



「ま、まあ。そうなります、か・・・?」




胸ぐらを掴んで耳元で怒鳴っていた情景を思い出して、フェルナンドは苦笑いをしつつ頭を掻いた。



「・・・あれの母親サファイアは確かに不世出の天才だった。
その能力は確かに常人離れしていて、私でさえも術の潜在エネルギーだけならば完全に凌駕されていたのだからな・・・」



「・・・・・・」




「英雄サファイアを母にもったキグナスはこれで終わっていたかもしれない。
そういう意味では悪友3人組の友情は本当に貴重なものだよ。

終生大事にすることだ」



今更ながらに自分達の繋がりを褒められると何故かこそばゆい。

フェルナンドは顔を赤らめて苦笑いするしかなかった。




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