ラビットがライト向けと言い張る歴史同人誌〜マグやんを添えて〜


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「ふうん」

久々に、小説の類を『面白いな』と思った気がする。
だって小説とかって結構小難しかったりするじゃん?
アレがあんまし無くて、読みやすかった。
………その『本』を差し出して来たのがマグである、という事実、その一点だけでとんでもなくアレな気がしてしまうのはまた別として。

「どうでした?」
「いいんじゃない?いつものアレが無いのであればだけど」
「だから無いって言ってるじゃないですかー」

いつぞやの『普通の』本、という話ややりとりを覚えていたマグが、今度はこの本を持ってきた。
…相手がマグじゃなかったら、今以上素直に楽しめたんだろうけどなあ。
なんというか、俗に言う色眼鏡的なモノが外せなくて、百合だの薔薇だのそういうのじゃなかろうな…とつい疑ってかかる自分が居る。
コレがマグの言うところの『フィルター』か。
毒されてんな自分。

「明確な定義としての名前がある訳じゃないんですけど、うーん…歴史ファンタジー?の一種?としてこういうのがあるんですよ。史実や現実を踏襲しながら完全に架空の人物や出来事で物語を作る、みたいな。私は『別次元』『別時空』とかって呼んだりしてますけど」

頑張って『フィルター』を外して説明を聞けば、ああ結構面白いんだなこういうの、と納得した。
妄想って言っちゃったらマグのアレみたいで若干申し訳ないけれども、そういうのし甲斐がありそうだし、作ってる側が楽しそうだなって。
所謂時代劇とも少し違うから、史実に則したオチがあるのがわかってるとかでもない分、ワクワクしながら読める気がする。

「クラウは気にってくれたみたいですよ。見たことないジャンルで面白いって。伝承法があるから普通の歴史モノはちょっとつまらない~とか言ってた覚えがあるんですけど、傾向としてこういう、時流の中での精神的関係性好きそうだなー…と思ったらクリティカルヒット!」

………ちょい待ち。

前はあたしの方が先に読んで、検閲じゃないけど、ソレに近いよーな事をした上でクラウにパス回したのに、今回はクラウに先に読ませたのか。
その上でそのテンションなのか。
あー、ヤな予感がする…

「このまま行ったら洗脳成功するかな…グレーゾーン中のグレーゾーン、妄想のし甲斐があってオイシすぎる…ごはんがおいしいのにツボりすぎておなかいっぱい…ホント、腐ィルターかけてもかけなくってもオイシいって罪だわ…ぐへへ…」

ぼそぼそ(妙な声で)呟き続けるマグ。
うわあ美人の無駄遣い。
可愛い顔の筈なのにとってもゲス顔してるってすごくね?

…っと、現実逃避おっぱじめてる場合じゃない。


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クラウしっかりしてマグに踊らされてるよ!!

…と言えたら良かったんだが、間に合わなかった。
あたしが見つけた時既に読書家モードになっていたクラウは、どうも件のジャンルに近いモノを探しては読んで、を繰り返しているらしい。

アレ自体に百合だの薔薇だのが内包されてなかったとしても、だ…『布教』しくさっているマグとしては、どーしても『薔薇』として見せたくてしょーがないんだろーな。
でもってクラウはそんな思惑にちっとも気付かず、気に入ってしまった勢いのままマグの策略で外堀埋められだしてんだろーな。うん。

今この場で止めるのはどう考えても無理なので、マグがよく使う表現でいえば『そっ閉じ』しておく。

………後で忠告はしとくつもりだけど、クラウ恥ずかしさで発火したりしないかな?
それが問題だ。うん。
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