【ファーストコンタクト】
「あっ、そうそう。アタシはヒルト。クリームヒルトってんだ。キミは?」
「…ユリシーズ。ユーリでいい」
「そっか。ヨロシクね、ユーリ」
「あ、あぁ…」
終始押されっぱなしではあったが、珍しくユリシーズが女性とまともに会話していた。
兄たちがこの場にいれば、「明日はサラマットでも雪が降るか」などと茶化したに違いない。
そう考えると、急に気恥ずかしくなって、ユリシーズはやけ気味に水筒の中身を干したのだった。
アマゾネスのクリームヒルト。
サラマットの実質的長であるジャンヌの妹分にして、村のNo.2と誰もが認める彼女は、ロックブーケとの戦いの後、皇帝キャサリンの凱旋と共にアバロンへと移住した。
そして彼女は、キャサリン帝夫君・シーシアス閣下の実弟であるユリシーズと結婚したことから、彼女の義妹として、そして友人として、長い時間を親しく過ごすこととなる。
彼らの間に生まれた娘たちこそ、後の皇帝エカテリーナ、皇后ユノーであるが…そんな大それた未来など、落ち着かずに水を煽るユリシーズには、想像出来るわけもなかった。
【運命の出会いなど、大概こんなものである】