ツバメに恋した青年と、雛鳥の翼と。


「ファナねぇ…。あの子は良い子よ。そりゃもう、間違いなく。
清楚だし穏やかだし、頭も良いし。ある意味、お似合いじゃない?」

「いやまぁ、そりゃそうだろうけどよ。
ドワイトのやつだって、顔もそれなりに良いし、成績は抜群に良いし、何しろ実家は超金持ちだぜ?
が、色々ずれてるというか、天然というか、頭良いのにどうしょうもなくバカとしか言いようがない部分もあるだろ?」

「…まぁ、騙されやすいタイプなのは間違いないわね。
とりあえず、ファナはそういう野心のある娘じゃないから、安心なさい」


過去に士官学校時代、実家の財産と、それなりに端麗な容姿に惹かれて、様々な女性がアプローチをかける現場を、フランクリンも目撃してきた。

しかし、そこは問題ではない。

「そういう野心のある娘が、あいつの繰り出す高度過ぎる会話についていけなくて、ドワイト本人がアプローチだと認識する前に消えていく様を、俺も何度も見てきたよ。
彼女なら、それもないんだろうなとは思ってる。
…が、問題はあの恋愛未経験者が、果たして相手にしてもらえるか、だ」

「…そこはまぁ、どっこいじゃない?
あの子の周りも、男っ気ないし。本好き過ぎて会話がイミフなことも間々あるし。
でも、どんなに相性良くても、あの子が誰かと付き合うってことはないと思うわ。忙しいというか、せわしないというか、余裕がないというか」

「…というと?」


フランクリンの聞き返しに、イザベラは麦酒を飲み干して、僅かに逡巡してから口を開いた。


「あの子、子持ちだもん」

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