ツバメに恋した青年と、雛鳥の翼と。

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□ツバメに恋した青年と、雛鳥の翼と。
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「ドワイト…ユーフラジー…マゼラン陛下の直属部隊所属の、あのドワイトさんか!?なんでまた、お前の幼年学校のノートに、名前が…」

「うん。まぁ、なんというか…。あたしの、“初恋の人“かな」

そんなことを言えば、案の定「はぁ?」と顔をしかめる…一応、現・恋人。
こういうとこ、あたしより年上なのに、やっぱ子どもっぽい。

「あっ、ひょっとして妬いてる?」

「バカ、んなわけねぇだろ?!ガキの頃の話にまで、一々嫉妬してられるか」

「なぁんだ、つまんないの。言っとくけど、あたしは今でも、ドワイトさんのこと、スッゴくカッコいい素敵なお兄ちゃんだと思ってるんだからね!!」

「だから、”お兄ちゃん“だろ!!そりゃカッコいいさ。皇帝陛下の直属で、軽歩隊出身ながら頭脳明晰で、陛下の執政にまで関わってるような人なんだからな」

そう早口でまくし立てて、シアはぶつくさと荷物の片付けに戻ってしまった。

…妬いてなくても、拗ねてるわね。間違いなく。


この時から、たったの3年後…あたしが10歳の時に、お姉ちゃんは病気で死んでしまった。
本当なら、あたしが生まれて初めて好きになった人は、あたしの「お兄ちゃん」になってくれるハズだった。
でも…婚約直後にお姉ちゃんは入院して、その後、結婚式ができるまでに回復することはなかった。 

…思えば、儚い初恋だったなぁ。
最初から、ドワイトさんが好きなのはお姉ちゃんだって、あたし気づいてたんだから。
今更、ドワイトさんのことを男性として見ることなんて、できないけど。


その後、あたしはお姉ちゃんの親友だったベル姉さんに引き取られた。
ドワイトさんも、あたしの後見人に名乗りを上げてくれたけど、「女同士の方が気楽でしょ?」っていうベル姉さんの一言で、あたしは姉さんと一緒に暮らすことに決めた。

とはいえ、ケーキとか持ってしょっちゅう顔を見にきてくれたし、試験勉強なんか完全にドワイトさんに頼りっぱなしだったっけ。
ベル姉さんは、勉強だけは教えてくれなかったから。

優しくて、頭もよくって、頼りがいがあって…今でも、あたしにとっては最高にカッコいいお兄ちゃん。
さすがに、面と向かって「お兄ちゃん」なんて、恥ずかしくて呼べなくなっちゃったけど。

…おっかしいなぁ。あたしがつき合うなら、きっとお兄ちゃんみたいな、真面目で優しい人だと思ってたのに。
理想と現実は違うけど…好きになっちゃったんだから、仕方ないかな。


「…ん?なんだよ。オレの顔なんかジロジロ見て」

「ううん、なんでもない」

「惚れ直したなら、素直にそう言えよ」

「んもう、自惚れてんじゃないわよ、バカ!!」


〈終〉

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