このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第1章―少女ミズラ、海を超えて運命の場所へ―


「まったく、どこにでも変な人間っているものね…あっ」

帰ろうとして、ハタと気づく。
さっき男を蹴り飛ばした時の衝撃でか、サンダルの紐が切れていた。

これでは履いて歩けない。仕方なく、サンダルを脱いで手に持つ。

石畳の上を素足で歩くのは、気持ちの良いことではなかった。
土や草と違って、ヒンヤリとして気味が悪い。
しかも、堅い路面に合わないサンダルで歩き回っていたせいで、足そのものが痛くなっている。

胸に切れたサンダルを抱いて大通りに出る直前、ミズラは石畳の隙間に足を引っかけて、転び欠けた。

あっ、と思った瞬間というのは、何故かスローモーションで見えるものだ。
腕が使えず、顔が地面に近づいている。


きっと痛い―そう思ったが、衝撃はこなかった。

代わりに、ウェストの辺りを支えられるような感触。


「大丈夫?」

かけられた声と、抱き起こされる腕。顔を上げれば、知らない人が立っていた。

特に背が高いわけでも、特別美男子なわけでもない。
ただ腕がしっかりしていたことから、何かしら武術を修めているのは間違いないだろう。

空色の髪と、同じ色の瞳が、目につく…それだけなのに。

「よかった、無事みたいだね」

笑顔は、特別だった。

吸い込まれるような笑みに、視線が外せなくなる。

「靴が、壊れてるみたいだけど…」

「えっ、あっ、その…サンダルの紐が、切れちゃって…」

ミズラが必死に抱えるサンダルを見て、彼は「なるほど」と苦笑した。

「それじゃ、歩きにくいだろう。すぐそこに、なじみの靴屋があるんだ。案内するよ」

「いや、その、あたしは大丈夫…です、からその…」

言葉がドギマギしてしまい、上手く繋がらない。

それでも、彼に「歩けそう?」と問われると、素直に頷いてしまった。

5/11ページ
スキ