間奏曲―短編集。 ミズラと、仲間と、彼らを取り巻く人々―
アバロン術法研究所、通称・術研は第5代皇帝アメジストの時代に作られた。
それまで、術といえば魔術士の専売特許であったが、これにより術法はアバロン兵にとってより身近な物となる。
また、アメジスト帝が建設を計画し、アガタ帝の時代に設立されたアバロン大学では、基礎からより深い発展まで、その授業が行われるようになった。
その中からは優秀な術使いが誕生し、大学出身の術士を特に「軍師」と呼ぶようになったのはこの時代である。
そして、術士や軍師はもとより、歩兵や猟兵などその他の帝国兵も、基本的な術法を習得するようになったのだ。
もちろん必修ではないし、場内に待機している駐在組であっても全く術法を覚えていない人間もいる。
しかし、皇帝の直属部隊となれば話は別だ。
常に皇帝と共に最前線へ繰り出す必要のある彼らは、最低でも基本術法を押さえておくことが、定められてはいないが暗黙の了解となっている。
ノーマッドの村から上京し、寿退職する姉の代わりに皇帝直属部隊に配属となったミズラは、ここへ来て壁にぶつかった。
当たり前だが、彼女は術など全く習ったことなどなかったのだ。
それどころか、ノーマッドの村に学校というものは存在しない。
基本的な読み書きと四則演算くらいはできるが、それ以上を学ぶ必要がないのである。
仕方なく、ミズラは人生初の「勉強」をすることになった。
…が、しかし。