第3章-後編 ―戦士ミズラ、聖なる塔を登る―
近づくにつれ、モンスターの気配が濃厚になってくる。
「…おい、なんかぞろぞろ出てきたぜ」
手前の民家の影に隠れ、トータスが向こうを伺う。
「数は…意外と多くない。15体といったところだろうか」
ジェイコブが冷静にそれを確認し、ハクヤクは「それも、見たところ上級モンスターとも思えませんね」と補足する。
「ただし、期待を裏切られる可能性も否めません。
向こうが出て来なくなったのを見計らって、突入しましょう。
陛下、その時は合図を」
「わかった。みんな、武器は構えておいて。
周りに悟られないように、急ぐよ」
出てきたモンスターは、順次散っていく。
ハリーは、塔の入り口付近から完全にモンスターが姿を消したことを確認し、「今だ!」と小声で合図を出した。
陣形を構えたまま塔に突入し、素早く中に入り込む。
気づかれた気配はなく、外のモンスターが慌てて戻ってくる様子もない。
「なんとか、突入はできたようだね」
ジェイコブの言葉に、トータスは「なんだ、呆気ねぇ」とため息を吐くが、ハクヤクはきっちり「油断するのは、まだ早いですよ」と釘を刺した。
「わーってるっての。とりあえず、上を目指すんだよな」
「そうだね。奥には何もなさそうだし、アルマノス守備隊長の証言では、最上階に『ノエルの部下』がいた、と」
ハリーはその言葉の後に、小さく「本当にノエルの部下であるなら、気を抜くと危ないだろう」と付け加える。
「分かってるわ。あたしたち、誰も簡単な任務だなんて思ってないもの。
さ、急ぎましょう」
「だな。オレが先頭で、何かあったら止まるからとりあえず付いてきてくれよ」
そう言って、トータスは階段に足を向ける。
思ったより狭い階段で、隊列を取ったまま上るのは難しい。
一列となって、トータスの次にジェイコブ、ハリー、ミズラと続き、後方を確認しながらハクヤクが殿となる。