第3章-後編 ―戦士ミズラ、聖なる塔を登る―
「夜になると、あの塔からモンスターたちが降りてくる。
今のところ特に被害はないようだけれど、今夜に限って…という可能性もあるだろう?
モンスターたちが悪さをしないように、見張っていて欲しいんだ。
君なら、この街の裏道や路地にも詳しいだろう?
街中で万が一戦闘になった場合、土地勘がある人間の方が断然有利だ」
「…それが、オレの役目か?」
「そう。君の力量を見込んでの頼みだ。
引き受けてもらえるかな?」
「あったりめえだろ!!この街の警備に関することなら、オレの一家以上に詳しいやつはいねぇ!!」
少年はすっかりやる気になったようで、ぐっと拳を握りしめる。
「ありがとう。でも、これだけは約束して。
モンスターが現れても、決してこちらからは手は出さないこと。
それから、無理や無茶はしないこと。
倒せない敵に挑んで君が倒れたら、この街にとって大切な人材を失うことになるからね。
わかったかい?」
「わかったぜ!…いや、了解しました、陛下!!
この町は、オレが責任持って守ります!!」
ダブダブのマント姿で、敬礼するネマーン。
ハリーは、笑顔で「頼んだよ、砂漠の戦士・ネマーン」と肩に手を置いた。
「とりあえず、夜の作戦決行まで、十分に食事をとって、自宅で待機していて。準備は万全に。
あまり、身の丈に合わない物は使わないようにね」
「はい、では一端失礼しますです!!」
敬礼姿のまま勢いよく頭を下げると、ネマーンは大剣を抱えて、食堂唯一の出入り口から走り去っていった。