第3章-後編 ―戦士ミズラ、聖なる塔を登る―


ハクヤクがまとめた情報によると、敵があの塔から出てくるのは深夜零時頃。
今のところ人間に被害はなく、主に塔の外側をウロウロしているようだが、理由は分からないという。

更に彼が調べたところによると、あの3本の塔は古くから存在し、テレルテバの人々には「聖なる塔」と呼ばれて大切にされてきたが、いつから存在しているのか、誰が何のために作ったのかは分からないそうだ。

「じゃ、なんで"聖なる塔"なんて呼ばれてるんだ?」

「知りませんよ。
昔からそこにあるものであれば、それだけで価値のあるものですし…もしかしたら、文字として残らないような太古の時代に、何かあったのかも知れませんけれどね。
所詮我々は、形として伝え残されていることしか知ることはできません」

ハクヤクはいかにも学者らしいことを言うが、トータスは訳が分からないとばかりに「つまり、誰にもわかんないわけか」と欠伸をかみ殺した。

その態度に、ハクヤクは大げさにため息をついて「これでも、調べられるだけのことは調べたのですがね」と帳面を閉じる。

宿の食堂において、夕食の席をセッティングしてもらった一行。
いつもなら、街の住人も夕食時にやって来ることも多いようだが、バレンヌ皇帝が来ている為か、彼らの他には誰もいない。

自室に引っ込んだものの、一度眠ってしまったせいかなかなか眠れなかったミズラは、結局再び弓の手入れをしてすぐ食堂へ戻ってきた。
しばらくして空腹に耐えかねたトータスが姿を現し、早めに夕食を頼むこととなったのだ。

ちょうどそこへ、残るメンバー…ハリーとジェイコブが現れた。

「お待たせ。ミズラも、もうすっかり大丈夫そうだね」

そう笑いかけられ、一瞬胸の奥が高鳴った。
それを隠して、ミズラは「ハリーのおかげよ。ありがとう」と笑い返す。

2人が席に着き、落ち着いたところで再びハクヤクが帳面を開く。

「昼間の調査の通り、内部構造は至ってシンプルです。
最上階まで伸びる階段の他にもエリアはあるようですが、ひたすら上っていけば簡単に上階には行けるでしょう。
問題は、その七英雄の部下を名乗るモンスターが、どれほどのものかということです」

「手こずる可能性もある、ってことだよな」

「まあ、それは充分に。
ひとつ確かなのは、敵が七英雄の下にいる存在である以上、七英雄ほど強くはないということだけですよ」

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