序章―在位期間は、歴代最短の5年。 それでも人々は、彼女の名を語り継ぐか―


「これは現在も、我々が引き継いでいる行事なのですが…夏至の日の日が暮れる頃に、その年に一番できの良い織物を、あの慰霊碑へ供えに行くのです。
ミズラ様が生前、亡くなるその時までされていたことでした。
最後の年も、ご病気であったにも関わらず、あの慰霊碑までご自身が織られた布を持って行き、その場で意識を失われて、そのままお亡くなりになったと…」

村の言い伝えには、「安らかなお顔で、すべてに満足されたかのようでした」と残されている。

そのことからも、ミズラ帝が退位後、住まいを故郷ステップではなくこのサバンナに選んだのも、あの慰霊碑に執着があったからだと推測される。

そして、ミズラ帝が織物を供えに慰霊碑へ通っていたという夏至の夜は、自身がクイーンを倒した日ではなく、先代ハリー帝がクイーン退治に赴き、その地で命を落とした日であった。


5年間の在位の後、帝都アバロンからも、故郷からも離れたかつての戦いの地に残ったミズラ帝は、一体どのように生きたのか。

結局のところ、本当のことは誰にも分からない。

しかし、サバンナで散ったかつての仲間たちに、深い敬愛の念を抱いていたことは、間違いないようである―。

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