第2章―少女ミズラ、伝説の"皇帝の半身"と出会う―


予定されていた、ハリー帝によるテレルテバ視察は、急遽延期されることとなった。

闘病中であった先帝・アガタの逝去により、国葬が営まれた為である。

アガタ帝の遺体は、自身の名を冠した記念病院の裏手墓地の一角、双子の弟である副帝ピーターの眠る墓へ、共に納められた。


大抵の行事は、それにより延期されたが、本人が遺言として「自分が死んでも、絶対に先送りにしないように」と釘を刺していた、甥のジェイコブとベスマの結婚式だけは、予定通りの日程で行われた。


そして、更にその半年後、ようやく諸々の調整が上手くいき、ハリー帝によるテレルテバ視察が実現する。


同行者は、軍師・ハクヤク、ホーリーオーダー・ジェイコブ、重装歩兵・トータス、そしてノーマッド・ミズラ。

このテレルテバ視察については、軍師ハクヤクの記した正確な記録が残されている。


テレルテバの聖なる塔を占拠していた、七英雄ノエルの部下を名乗るモンスターとの戦闘。

そして、行方不明になったテレルテバの守護部隊を探して、砂漠を縦断。


ようやくたどり着いた、砂漠の真ん中に突如現れた謎のオアシス―移動湖において、一行は宿命とも言える邂逅を果たす。


「鋼のような肉体を持ち、その身体に圧倒的な強さを滲ませながらも、決して紳士的な態度を崩しはしなかった。
空のような蒼い瞳と髪…どこかハリー陛下に似ていたかもしれない。
彼は、私たちが帝国の人間であるにも関わらず、まったく武器を抜くこともなく、テレルテバから手を引いた―」


後の皇帝ミズラが、後継者である武装商戦団副頭目・マゼランに語ったという逸話。

彼らが砂漠で出会ったその男。


それはまさしく、七英雄の一人・ノエル。



その宿命的出会いを、この時のミズラが知るはずもなかった―。



To be continued....?

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