夏の終わりの光を並んで
夕暮れの色が、地球より少しだけ薄い惑星だった。
補給のために降り立っただけのはずなのに、空気はどこか祭りの前触れのようにそわそわしていて、私は思わず足を止めた。
「……なんだ、この匂い」
隣でターレスが鼻をひくつかせる。
草の香りに、金属のような甘い粒子の匂いがまざっていた。
丘の上に出ると、星の住民たちがぽつぽつと集まりはじめていた。
誰も喋らない。
ただ、空を見上げて待っている。
私もつられて空を見た。
深い群青の奥で、なにかがゆっくりと脈打っている。
最初の光は、音もなく咲いた。
白い花弁のような光がふわりと広がり、ほどけるように散っていく。
胸の奥がふっと震えた。
「……花火、だ」
私がつぶやくと、ターレスは腕を組んだまま、ゆっくりと光の呼吸を見つめた。
「祭りらしいな」
次の光が咲いた瞬間、ターレスはふっと笑った。
「……音も立てずにこんな華を咲かせるとは、おもしろいじゃねーか」
光が咲くたびに、私の影とターレスの影が重なったり離れたりする。
風がふたりの間をすり抜けていくたび、惑星の空気の温度が肌にやさしく触れた。
遠くで星の住民たちが小さく歓声をあげたが、ここまで届く前に空気に溶けて消えた。
この場所だけ、時間がゆっくり流れているようだった。
「偶然立ち寄った星でこんなに綺麗なものが見られるなんて、私たち……運がいいね」
そう言うと、ターレスは横目で私を見る。
その視線は、光に照らされていつもより少し柔らかかった。
最後の花火は、青白い光の大輪だった。
惑星の空がゆっくりと呼吸し、ふたりの影が寄り添うように揺れた。
青白い大輪の余韻が、ゆっくり胸に残った。
この光をターレスと並んで見られたこと——
それだけで、この夜は静かに特別になった。
花火が終わると、丘の上のざわめきがすっと静まった。
さっきまで空にあった光が消えたぶん、夜が少しだけ深くなった気がした。
帰り道、足元の砂がかすかに音を立てる。
祭りの余韻がまだ空気に薄く漂っているのに、
もう誰も空を見上げていない。
私はふと、隣を歩くターレスを見た。
彼はいつものように前だけを見ているのに、
その歩幅が私に合わせて少しゆっくりになっているのがわかった。
その静けさが、花火の終わりよりも胸に沁みた。
ターレスは空を見上げることなく、低く言った。
「……来年も補給ついでに寄ってやる」
その言葉が、祭りの終わった夜道にそっと落ち着いた。
補給のために降り立っただけのはずなのに、空気はどこか祭りの前触れのようにそわそわしていて、私は思わず足を止めた。
「……なんだ、この匂い」
隣でターレスが鼻をひくつかせる。
草の香りに、金属のような甘い粒子の匂いがまざっていた。
丘の上に出ると、星の住民たちがぽつぽつと集まりはじめていた。
誰も喋らない。
ただ、空を見上げて待っている。
私もつられて空を見た。
深い群青の奥で、なにかがゆっくりと脈打っている。
最初の光は、音もなく咲いた。
白い花弁のような光がふわりと広がり、ほどけるように散っていく。
胸の奥がふっと震えた。
「……花火、だ」
私がつぶやくと、ターレスは腕を組んだまま、ゆっくりと光の呼吸を見つめた。
「祭りらしいな」
次の光が咲いた瞬間、ターレスはふっと笑った。
「……音も立てずにこんな華を咲かせるとは、おもしろいじゃねーか」
光が咲くたびに、私の影とターレスの影が重なったり離れたりする。
風がふたりの間をすり抜けていくたび、惑星の空気の温度が肌にやさしく触れた。
遠くで星の住民たちが小さく歓声をあげたが、ここまで届く前に空気に溶けて消えた。
この場所だけ、時間がゆっくり流れているようだった。
「偶然立ち寄った星でこんなに綺麗なものが見られるなんて、私たち……運がいいね」
そう言うと、ターレスは横目で私を見る。
その視線は、光に照らされていつもより少し柔らかかった。
最後の花火は、青白い光の大輪だった。
惑星の空がゆっくりと呼吸し、ふたりの影が寄り添うように揺れた。
青白い大輪の余韻が、ゆっくり胸に残った。
この光をターレスと並んで見られたこと——
それだけで、この夜は静かに特別になった。
花火が終わると、丘の上のざわめきがすっと静まった。
さっきまで空にあった光が消えたぶん、夜が少しだけ深くなった気がした。
帰り道、足元の砂がかすかに音を立てる。
祭りの余韻がまだ空気に薄く漂っているのに、
もう誰も空を見上げていない。
私はふと、隣を歩くターレスを見た。
彼はいつものように前だけを見ているのに、
その歩幅が私に合わせて少しゆっくりになっているのがわかった。
その静けさが、花火の終わりよりも胸に沁みた。
ターレスは空を見上げることなく、低く言った。
「……来年も補給ついでに寄ってやる」
その言葉が、祭りの終わった夜道にそっと落ち着いた。
1/1ページ