二人だけの涼しさ

その星は、空気そのものが熱を含んでいて、
歩くだけで汗が滲むような暑さだった。
船に戻った瞬間、私は思わず息を吐く。

「……外、暑かったね」

そう言うと、ターレスは横目で私を見て、
少しだけ口角を上げた。

「水浴びでもするか。水は前に立ち寄った星で十分補給したし問題無い」

それだけ言って、浴室へと歩いていく。

宇宙船の浴室は金属の壁がひんやりしていて、
外の熱気が嘘みたいに静かだった。
ターレスはシャワーの温度を確かめ、
水を手で払って落とす。

水が肩に触れた瞬間、
ひんやりした感触が肌に染み込んでいく。
乾いた空気にさらされていた体が、
ゆっくりほどけていくようで、
思わず目を閉じた。

「……気持ちいい……」

小さく漏れた声に、
ターレスは髪をかき上げながらこちらを見る。
濡れた黒髪が額に張りついて、
鍛えられた肩から胸にかけて水が流れ落ちる。
光が筋肉の影を強調して、
その姿は静かな色気を帯びていた。

次の瞬間、
ターレスは手のひらで水をすくい、
私の肩めがけてぱしゃっとかけてきた。

「ほら、もっと冷やせ」

冷たさに肩が跳ねると、
ターレスは少しだけ笑う。

「外の熱、まだ残ってるだろ」

挑発みたいなのに、
その仕草はどこか優しい。

浴槽に水を張ると、
ターレスは先に入って、
手を伸ばして私を引き寄せた。

「こっち来い。……気持ちいいぞ」

水の中は外よりずっと涼しくて、
体が軽くなる。
私はターレスの胸に寄りかかるように横たわり、
彼の腕が自然に背を支える。

水の冷たさと、
ターレスの体温の対比が心地よくて、
息がゆっくり整っていく。

ターレスは私の濡れた前髪を指で軽く払って、
視界からどけるように整えた。

水の冷たさが体の奥まで広がって、
暑さがようやく抜けていくのを感じた。

「……これくらいがちょうどいいな。
 暑い星で動き回った後は、こうして冷やすのが一番だ」

水音だけが静かに響く中、
二人で抱き合って横たわる時間は、
外の暑さを忘れるほど穏やかだった。

その静けさの中で、
ターレスは低い声で言った。

「宇宙船の中で水浴びなんて、贅沢だな。……お前となら悪くねぇ」

水の冷たさより静かに、
その言葉が胸へ落ちていった。

ターレスは少しだけ視線を横に流し、
浴室の外の気配を確かめるように息を吐いた。

「……あいつらには内緒だぞ」

低い声でそう言って、
私を抱き寄せる腕の力をほんの少しだけ強めた。
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