7月7日記念「夜に触れる」

夜中、胸の奥がざわついて目が覚めた。
船の低い振動が、いつもより遠く感じる。
息が浅くて、指先がかすかに震えていた。
夢の残りが、まだ身体のどこかに張り付いて離れない。

隣で眠っていたターレスが、私の気配に気付いて身じろぎする。
薄闇の中で目が合うと、ゆっくりと上体を起こし、低い声が落ちた。

「……どうした」

その声を聞いた瞬間、張りつめていたものがほどけて、
胸の奥に溜まっていた言葉がこぼれた。

「……ターレスが、神精樹と一緒に消える夢を見たの」

言ったそばから、また胸が締めつけられる。
ターレスは小さく息を吐き、私の肩を引き寄せた。

「縁起でもねぇこと言うなよ」

呆れたような声なのに、腕は驚くほどあたたかくて、
背中を包む手は、震えを確かめるようにゆっくりと動く。

夢だとわかっているのに、怖かった。
もし本当に彼に終わりが来るなら、私はきっと耐えられない。
そんな未来があるくらいなら、一緒に——
胸の奥で、言葉にならない願いが静かに疼く。

ターレスは何も言わず、額をそっと合わせてくる。
呼吸が触れ合う距離で、私の震えが落ち着くまでじっとしていた。

やがて、私を抱き寄せる腕が少しだけ動いて、
額がそっとターレスの胸元へ導かれる。

胸に預けた耳に、彼の心音がゆっくり響く。
その一定のリズムが、夜の静けさに溶けていく。

髪を梳く指が、眠りより深い安心をくれる。
その温度に触れていると、さっきまでの恐怖が少しずつ薄れていった。

やがて、ターレスが私の頬に触れ、視線を合わせる。
暗闇の中でも、その瞳はまっすぐだった。

「……終わりが来るなら、お前を抱いたまま迎えてやるよ。
 だがな、俺は簡単に終わらねぇ。
 お前がいる限り、生き続けてやる」

その言葉が胸の奥に静かに沈んでいく。
返事をしようとしても、声にならなかった。
ただ、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。

ターレスの腕の中で、私はそっと目を閉じた。
彼の心音が、ゆっくりとしたリズムで響いている。
その音に合わせて呼吸を整えると、
さっきまでの恐怖が、少しずつ遠ざかっていった。

この先のことなんて、わからない。
わからないからこそ、
今ここにある温度を、ただ信じたかった。
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