7月7日記念「星の光に溶ける口づけ」

空は濃い青で、夜なのにどこか温度を含んでいた。
この星の大気は薄く、光を遮るものがほとんどない。
だから天の川は、地球で見るよりずっと濃かった。

星の粒が無数に集まって、
ゆっくりと流れているのがわかるほどの密度。
空の半分を埋め尽くす光の川が、
静かに瞬きながら広がっていた。

私はその光の下で、
さっき触れたばかりの温度を唇に残していた。

ターレスは私の頬に触れたまま、
その指先だけがわずかに熱を帯びている。
風も音もない夜。
聞こえるのは、私たちの呼吸だけ。

私が小さく息を整えようとした瞬間、
ターレスの親指が頬をゆっくりなぞった。
優しさというより、
“確かめる”ための触れ方。

「……俺が好きか」

その一言が、
夜の静けさに深く沈んだ。
頭上の星々が、息を潜めたように見えた。

逃げ場なんてない。
でも、逃げたいとも思わなかった。

私はターレスの胸元に、そっと手を置いた。
力なんて入っていないのに、
触れた瞬間、ターレスの呼吸がわずかに止まった。

天の川の光が、
ターレスの横顔を淡く照らす。
その影が揺れて、
私の手元に落ちた。

「……好きだよ」

言葉にした途端、
ターレスのまつげが一度だけ震えた。
驚きでも喜びでもない。
もっと深いところで、
私の言葉を飲み込むような反応。

私は続ける。

「だから……
あなたのこと好きなわたしを、どうかこのままそばに置いて」

言い終えた瞬間、
ターレスの指が私の顎を静かに持ち上げた。

返事はなかった。

ただ、
ターレスの目が、
私の言葉の奥まで覗き込むみたいに深くなる。

そのまま——
ターレスの唇が、もう一度私の唇に触れた。

胸の奥まで落ちてくるような、
静かで重い口づけ。

その口づけのまま、
ターレスの腕が私の背にまわった。

一瞬で、強く抱き寄せられる。
逃げられないほどの力なのに、
不思議と怖くない。

身体がターレスの胸に押し寄せて、
その体温が息の間近で混ざる。
それでも口づけは途切れない。
深く、静かに、
私を抱きしめたまま続いていた。

離す気はない。
その意思が、
深く重なる口づけの中に静かに滲んでいた。

頭上では、
天の川がゆっくりと流れ続けている。
その光が、寄り添うふたりの影を
ひとつに溶かしていた。
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