静寂に寄り添う酔い
船内は深夜の航路に入り、
外の星々はゆっくりと流れていた。
非常灯の青い光だけが、部屋の輪郭を淡く照らしている。
ターレスはベッドの端に座り、
片手で額を押さえて静かに息を吐いた。
酒の香りが、彼の体温と混ざってほのかに漂う。
そっと近づくと、
ターレスはゆっくり顔を上げ、
目を細めてしばらく黙って私を見つめてきた。
「……お前、今日はやけに静かだな」
「ターレスが酔ってるから、様子見てただけ」
そう答えると、彼はふっと笑った。
普段なら絶対に見せない、力の抜けた笑み。
「……そうかよ。
気ぃ遣わせてんのは、俺のほうか」
ターレスは横になり、
私のほうへ手を伸ばす。
掴むでもなく、ただ触れられる距離まで。
「……こっち来い。
離れてると、なんか落ち着かねぇ」
促されるままにそっと横に入ると、
ターレスはゆっくり目を閉じた。
呼吸が深くなり、体温が近づく。
「……なぁ、 。」
酔いのせいか、名前を呼ぶ声がいつもより低くて、
どこか頼っているように聞こえた。
「お前が隣にいる夜は……静かでいい。
余計なこと考えなくて済む」
その言葉に胸が少し熱くなる。
私は小さく頷いた。
ターレスは目を開けずに続ける。
「……寝るまで、そばにいろ。
……いや、寝てもいろ」
その言い直しは、
酔いがほどいた本音の重さだった。
そっと肩を寄せると、
ターレスはわずかに息を吸い、
そのまま呼吸を整えるように静かになる。
「……ああ。
それでいい」
船の振動と、ターレスの呼吸だけが
ゆっくりと重なっていく。
ターレスの体温と呼吸だけが、
この夜のすべてを決めるように静かで。
私はその静寂に、ただ身を預けた
しばらくすると、
ターレスの呼吸がさらにゆっくりになっていくのに気づく。
深く、重く、まるで宇宙の底に沈んでいくようなリズム。
「……ターレス?」
呼びかけても返事はない。
目を閉じたまま、眉の力が少し抜けている。
あのターレスが──
私より先に、眠っている。
信じられないような光景なのに、
不思議としっくりくる静けさだった。
酔いの余韻が残る呼吸。
肩の力が抜けた横顔。
普段なら絶対に見せない、無防備な影。
私はそっと息を飲んだ。
こんな姿、
誰にも見せたことがないんだろう。
ターレスの胸がゆっくり上下するたび、
その体温が私の腕に伝わってくる。
触れていなくても、
彼の存在が夜を支配している。
「……先に寝るなんて、ずるいよ」
小さくつぶやくと、
ターレスは眠ったまま、わずかに眉を動かした。
まるで、声だけは届いているみたいに。
その反応が妙に愛しくて、
私はそっと彼の肩に額を寄せた。
静かな呼吸が、
私の呼吸と重なっていく。
ターレスが眠り、
私はその呼吸を見守っていた。
こんな夜は、そうそう訪れない。
だから私は、
この静寂を逃さないように目を閉じた。
外の星々はゆっくりと流れていた。
非常灯の青い光だけが、部屋の輪郭を淡く照らしている。
ターレスはベッドの端に座り、
片手で額を押さえて静かに息を吐いた。
酒の香りが、彼の体温と混ざってほのかに漂う。
そっと近づくと、
ターレスはゆっくり顔を上げ、
目を細めてしばらく黙って私を見つめてきた。
「……お前、今日はやけに静かだな」
「ターレスが酔ってるから、様子見てただけ」
そう答えると、彼はふっと笑った。
普段なら絶対に見せない、力の抜けた笑み。
「……そうかよ。
気ぃ遣わせてんのは、俺のほうか」
ターレスは横になり、
私のほうへ手を伸ばす。
掴むでもなく、ただ触れられる距離まで。
「……こっち来い。
離れてると、なんか落ち着かねぇ」
促されるままにそっと横に入ると、
ターレスはゆっくり目を閉じた。
呼吸が深くなり、体温が近づく。
「……なぁ、 。」
酔いのせいか、名前を呼ぶ声がいつもより低くて、
どこか頼っているように聞こえた。
「お前が隣にいる夜は……静かでいい。
余計なこと考えなくて済む」
その言葉に胸が少し熱くなる。
私は小さく頷いた。
ターレスは目を開けずに続ける。
「……寝るまで、そばにいろ。
……いや、寝てもいろ」
その言い直しは、
酔いがほどいた本音の重さだった。
そっと肩を寄せると、
ターレスはわずかに息を吸い、
そのまま呼吸を整えるように静かになる。
「……ああ。
それでいい」
船の振動と、ターレスの呼吸だけが
ゆっくりと重なっていく。
ターレスの体温と呼吸だけが、
この夜のすべてを決めるように静かで。
私はその静寂に、ただ身を預けた
しばらくすると、
ターレスの呼吸がさらにゆっくりになっていくのに気づく。
深く、重く、まるで宇宙の底に沈んでいくようなリズム。
「……ターレス?」
呼びかけても返事はない。
目を閉じたまま、眉の力が少し抜けている。
あのターレスが──
私より先に、眠っている。
信じられないような光景なのに、
不思議としっくりくる静けさだった。
酔いの余韻が残る呼吸。
肩の力が抜けた横顔。
普段なら絶対に見せない、無防備な影。
私はそっと息を飲んだ。
こんな姿、
誰にも見せたことがないんだろう。
ターレスの胸がゆっくり上下するたび、
その体温が私の腕に伝わってくる。
触れていなくても、
彼の存在が夜を支配している。
「……先に寝るなんて、ずるいよ」
小さくつぶやくと、
ターレスは眠ったまま、わずかに眉を動かした。
まるで、声だけは届いているみたいに。
その反応が妙に愛しくて、
私はそっと彼の肩に額を寄せた。
静かな呼吸が、
私の呼吸と重なっていく。
ターレスが眠り、
私はその呼吸を見守っていた。
こんな夜は、そうそう訪れない。
だから私は、
この静寂を逃さないように目を閉じた。
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