渡された温度
ターレスの部屋は暗かった。
どこからともなく落ちる青白い光が、
床と壁をうっすら照らしている。
その淡い光が、ターレスの横顔の輪郭だけを
静かに浮かび上がらせていた。
私は彼の腕を枕にして横になり、
ふたりで同じ缶をゆっくり回し飲みしていた。
炭酸のはじける音が、静かな部屋に小さく混ざる。
ターレスは無言のまま、
缶を軽く揺らして残りを確かめる。
「……まだ飲むのか」
低い声が、青白い光に溶けていく。
「ちょっとだけ」
そう言って缶を差し出すと、
ターレスは受け取らず、
私の手をそっと押し戻した。
ターレスの腕が背中にまわって、
身体がゆっくり起きる角度になる。
そのまま胸に寄りかかって、缶に口をつけて一口だけ飲んだ。
「持っとけ」
ターレスが低く言うと、
私の手首をそっと掴んで、
そのまま缶を自分の口元へ引き寄せた。
缶の縁に口を寄せ、ほんの少しだけ含む。
そのまま、ゆっくりとこちらへ身体を寄せてくる。
青白い光が、彼のまつ毛の影を長く落とした。
その動きが静かで、
部屋の空気が一瞬だけ止まったように感じた。
距離がゆっくり縮まる。
まつ毛の影が頬に触れそうで、
呼吸が混ざるほど近い。
触れたかどうか分からない軽さで、
温度だけがそっと伝わってきた。
青白い光の中で、
その一瞬だけがやけに鮮明だった。
ターレスが離れると、
静けさがゆっくり戻ってくる。
口の中に残ったお酒の温度はすぐに薄れていくのに、
その“渡された瞬間”だけが、
やけに鮮明に残っている。
自分で飲んだときとは違う、
どこか柔らかい余韻が舌の奥にひっそりと残っていて、
それがターレスのものだとすぐに分かった。
胸の奥がじんと揺れる。
私は小さく息を吸った。
ターレスの近さが、まだ残っている。
「……ずるいよ」
声に出した途端、
ターレスのまつ毛がわずかに影を揺らした。
笑ったのかどうか分からない、
あの無愛想な顔のまま、目だけが細くなる。
「お前がこぼしそうにしてた。
……ほら、落ち着け」
言葉は冷たいのに、
腕はそのまま私を抱き寄せる位置にあって、
青白い光の中で、その温度だけが静かに深まっていく。
呼吸がゆっくり重なって、
夜がそのまま深く沈んでいった。
どこからともなく落ちる青白い光が、
床と壁をうっすら照らしている。
その淡い光が、ターレスの横顔の輪郭だけを
静かに浮かび上がらせていた。
私は彼の腕を枕にして横になり、
ふたりで同じ缶をゆっくり回し飲みしていた。
炭酸のはじける音が、静かな部屋に小さく混ざる。
ターレスは無言のまま、
缶を軽く揺らして残りを確かめる。
「……まだ飲むのか」
低い声が、青白い光に溶けていく。
「ちょっとだけ」
そう言って缶を差し出すと、
ターレスは受け取らず、
私の手をそっと押し戻した。
ターレスの腕が背中にまわって、
身体がゆっくり起きる角度になる。
そのまま胸に寄りかかって、缶に口をつけて一口だけ飲んだ。
「持っとけ」
ターレスが低く言うと、
私の手首をそっと掴んで、
そのまま缶を自分の口元へ引き寄せた。
缶の縁に口を寄せ、ほんの少しだけ含む。
そのまま、ゆっくりとこちらへ身体を寄せてくる。
青白い光が、彼のまつ毛の影を長く落とした。
その動きが静かで、
部屋の空気が一瞬だけ止まったように感じた。
距離がゆっくり縮まる。
まつ毛の影が頬に触れそうで、
呼吸が混ざるほど近い。
触れたかどうか分からない軽さで、
温度だけがそっと伝わってきた。
青白い光の中で、
その一瞬だけがやけに鮮明だった。
ターレスが離れると、
静けさがゆっくり戻ってくる。
口の中に残ったお酒の温度はすぐに薄れていくのに、
その“渡された瞬間”だけが、
やけに鮮明に残っている。
自分で飲んだときとは違う、
どこか柔らかい余韻が舌の奥にひっそりと残っていて、
それがターレスのものだとすぐに分かった。
胸の奥がじんと揺れる。
私は小さく息を吸った。
ターレスの近さが、まだ残っている。
「……ずるいよ」
声に出した途端、
ターレスのまつ毛がわずかに影を揺らした。
笑ったのかどうか分からない、
あの無愛想な顔のまま、目だけが細くなる。
「お前がこぼしそうにしてた。
……ほら、落ち着け」
言葉は冷たいのに、
腕はそのまま私を抱き寄せる位置にあって、
青白い光の中で、その温度だけが静かに深まっていく。
呼吸がゆっくり重なって、
夜がそのまま深く沈んでいった。
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