呼吸が触れた夜に

その夜は、忘れられない夜になった。

いつもはひんやりしているターレスの寝室なのに、
その日は、私と彼の呼吸だけで空気がゆっくり揺れていた。

抱きしめられた腕の中は思っていたより温かくて、
胸の奥がじんわりと落ち着かなくなる。

額を寄せた瞬間、
ターレスの視線が絡みつくように離れなくて、
呼吸がひとつ乱れるたびに、
その乱れを彼が拾ってくる。

名前を呼ぶと、
彼の瞳がわずかに揺れて、
その揺れが胸の奥にじわりと広がる。

背中のほうで、
ターレスの尻尾が落ち着かないように揺れているのがわかる。
怒っているわけじゃない。
ただ、私の声に反応しているだけ。

その正直さが愛しくて、
胸の奥が熱を帯びていく。

静かなはずの寝室が、静かじゃなくなる。
ふたりの呼吸が重なるたび、
夜が少しずつ深く沈んでいく。
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