4話「不意の距離と、立ち上がる尻尾」
整備区画の床は、今日もコードが散らかっていた。
気をつけて歩いていたつもりなのに——
足に何かが引っかかった瞬間、
身体が前に投げ出される。
「わっ……!」
工具箱の中身がカランと散らばり、
私は床に手をついたまま固まった。
尻尾がびくっと立ってしまって、余計に恥ずかしい。
そのとき、背後から影が落ちた。
振り返る前に、
脇の下にすっと腕が差し込まれて——
ひょい、と持ち上げられた。
「ちょ、ちょっと! 自分で立てるから!」
「は? さっきの転び方でよく言うな、整備係」
ターレスだった。
声は軽いのに、抱え上げる腕はしっかりしていて、
落とす気なんて全然なさそうだった。
床にそっと降ろされると、
彼の視線がまっすぐ、私の尻尾に向いた。
「……まだ立ってんぞ」
「み、見ないで……!」
「いや無理だろ。そんな主張してたら嫌でも目に入る」
にやっと笑われて、
顔が熱くなるのが自分でもわかった。
ターレスは足でコードをどかしながら、
私の頭を軽く小突く。
「前見て歩けって言ったよな。ほら行くぞ。
また転んだら……今度は肩に担いでやる」
「や、やだよ……!」
「じゃあ気をつけろ。
俺、整備係拾い上げるのは趣味じゃねぇんだ」
そう言いながら、
私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
その背中を見ながら、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
ターレスは振り返りもせず、
でも少し笑って言った。
「……尻尾、落ち着かせとけよ」
「ターレスのせいで立ってるんだよ……!」
「だろうな。
……そういうとこ、嫌いじゃねぇけど」
その一言で、
また尻尾がぴょこんと立ってしまった。
気をつけて歩いていたつもりなのに——
足に何かが引っかかった瞬間、
身体が前に投げ出される。
「わっ……!」
工具箱の中身がカランと散らばり、
私は床に手をついたまま固まった。
尻尾がびくっと立ってしまって、余計に恥ずかしい。
そのとき、背後から影が落ちた。
振り返る前に、
脇の下にすっと腕が差し込まれて——
ひょい、と持ち上げられた。
「ちょ、ちょっと! 自分で立てるから!」
「は? さっきの転び方でよく言うな、整備係」
ターレスだった。
声は軽いのに、抱え上げる腕はしっかりしていて、
落とす気なんて全然なさそうだった。
床にそっと降ろされると、
彼の視線がまっすぐ、私の尻尾に向いた。
「……まだ立ってんぞ」
「み、見ないで……!」
「いや無理だろ。そんな主張してたら嫌でも目に入る」
にやっと笑われて、
顔が熱くなるのが自分でもわかった。
ターレスは足でコードをどかしながら、
私の頭を軽く小突く。
「前見て歩けって言ったよな。ほら行くぞ。
また転んだら……今度は肩に担いでやる」
「や、やだよ……!」
「じゃあ気をつけろ。
俺、整備係拾い上げるのは趣味じゃねぇんだ」
そう言いながら、
私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
その背中を見ながら、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
ターレスは振り返りもせず、
でも少し笑って言った。
「……尻尾、落ち着かせとけよ」
「ターレスのせいで立ってるんだよ……!」
「だろうな。
……そういうとこ、嫌いじゃねぇけど」
その一言で、
また尻尾がぴょこんと立ってしまった。
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