終わった星の窓辺

塔の中は、雨の音だけが世界の残響みたいに響いていた。
外の大地は神精樹に吸われ尽くれ、街の輪郭は崩れ、
灰色の霧の中でゆっくりと溶けていく。
ターレスが植えた“種”が終わらせた星――その静けさが、
高い窓から一望できた。

私は崩れた階段に腰を下ろし、
塔の壁を叩く雨の反響を聞いていた。
湿った空気は薄く、文明の終わりの匂いがかすかに漂う。

窓にはもうガラスがなく、
雨の気配がそのまま塔の中へと滲み込んでくる。
外気が触れるたび、
塔の空気はわずかに揺れ、
世界の終わりが“直接触れてくる”ようだった。

その静寂の中で、ひとつだけ異質な音がした。
ターレスが神精樹の実を齧る、
果肉がほどける低く湿った音。
雨と滅びの世界に混じるその音は、
まるで“まだ終わっていないもの”の存在を告げるようだった。

窓際に立つターレスは、
雨に煙る星を見下ろしながら、ゆっくりともう一口齧る。
肩がわずかに動き、そのたびに塔の空気が震える。
私はその音を聞きながら、
終わった星でふたりだけが生きているという事実を静かに受け止めていた。

雨と、滅びと、実を齧る音。
それだけが、この星に残された確かな気配だった。
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