光が滞留する空の下で

この星の空は、昼も夜もなく、ずっと暗い。
大気は薄くて、歩く音さえ長く残らない。
私はその静けさにまだ慣れなくて、
一歩ごとに“知らない世界を歩いている”感覚が胸に広がっていた。

ターレスは前を歩きながら、私の歩幅だけはいつも確かめてくれる。
無言なのに、置いていかない距離だけは変わらない。

宇宙船が見えてきた頃、空がふっと揺れた。

私は思わず立ち止まった。
ターレスも同じように空を見る。

ひと筋。
またひと筋。

高い空で光がほどけていく。
その流れ方は、私が知っている流星とはまるで違った。
光の尾が異様に長く、
空の奥でゆっくり曲がりながら滞留するように見える。
まるで空そのものが光を抱え込んでいるみたいだった。

胸が一気に熱くなる。

「……こんなふうに流れるんだ……」

声が自然に漏れた。

ターレスは横目で私を見る。
その反応を楽しんでいるような、静かな目。

「この星の空気は薄い。光が逃げにくいんだ。
 ……よくある景色だ」

その言葉は、旅に慣れた人のゆるやかな温度をしていた。

私が見上げたまま動けなくなるのを見て、
ターレスはそっと隣に立つ位置を整える。

「見るなら、ここでいい」

肩が触れそうな距離。
私が少し近づくと、ターレスは避けない。

流星がいくつも落ちていく。
光の筋が重なり、夜空がゆっくり裂けていくように見える。
この星の空は、私の知っている空よりずっと深くて、静かだった。

光が私の髪を淡く照らす。
ターレスはその横顔をちらりと見て、
ほんの一瞬だけ視線をそらした。

「そんなに感動するか」

私はうなずく。
胸が震えるほど綺麗だった。

ターレスは短く息を吐き、
ほんのわずかに口元を緩める。

「……初めてなら、そうなるか」

流星群はしばらく続き、
私たちは同じ空を見上げていた。

やがて光が少しずつ減り、夜が静けさを取り戻す。
ターレスは歩き出しながら、私の手首を軽く引いた。

「戻るぞ。空気が冷えてきた」

その仕草はあまりにも自然で、
胸に静かなあたたかさだけが残った。
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