惑星散歩

空はずっと青白いままだった。
夜でも朝でもない、終わりもしない時間。
この星はそういう空気でできている。

その空は静止しているようで、
よく見ると薄い光がゆっくり揺れていた。
風もないのに、青白い層がかすかに波打つ。
夜明けになりきれない光が、
空の奥で迷っているみたいだった。

波の音だけが、一定のリズムで続いていた。
寄せるたびに細かい水しぶきが砂に落ちて、
ぱち、ぱち、と小さく弾ける。
水はあるのに、生命の気配はない。
ただ淡々と、湿った音だけが世界を満たしていた。

私は細かい砂の上をゆっくり歩く。
足音は軽くて、波に吸い込まれてすぐ消える。
砂は冷たく、踏むたびにしっとりと沈む。

その数歩後ろで、ターレスの足音が続く。
重くて、低くて、私の歩幅に合わせている。
湿った砂が押し出されて、
小さな水の音が混じった。

青白い影が二つ、砂の上で揺れていた。

この星には神精樹の実は育たない。
だからターレスにとっては価値がない。
興味もない。

それでも、私はこの星の空気を感じたかった。
青白い空の冷たさと、
波の湿度と、
砂の柔らかさと、
ターレスの足音が後ろにあるという事実を。

ターレスが低く言う。

「……さっさと先を急ぐぞ」

私は振り返らない。
歩く速度も変えない。
呼吸だけが静かに揺れる。

「急ぐ旅でもないんでしょ」

ターレスの足音が一瞬だけ止まる。
波の音だけが残る。

私は空を見上げる。
青白い空は、どれだけ見ても変わらない。
ただ揺らぎだけがかすかに続いている。
永遠に夜明け前のまま。

ターレスが短く息を吐く気配がする。

「……好きにしろ」

また足音が始まる。
私の数歩後ろ、私の速度に合わせて。

青白い影の揺らぎと、
波の音と、
私の呼吸と、
ターレスの足音だけが、
この星で確かに続いているものだった。
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