歯形の温度
ターレスの寝室は、
船の低い振動が遠くで響くだけで静かだった。
その静けさの中で、
ターレスは寝台に座り、
腕を組んだままぼんやりと前を見ている。
その横顔を見ていると、
胸の奥がざわつく。
理由なんて分からない。
ただ、
噛みたい
という衝動だけが、じわりと湧き上がってくる。
気づいたら、私は近づいていた。
ターレスが視線だけこちらに向ける。
「……何だよ」
その声が低くて、
その落ち着きが、
余計に噛みたくさせる。
私はそっと手を伸ばし、
ターレスの肩に触れた。
ターレスは拒まない。
むしろ、ほんのわずかに肩を傾けてくる。
噛みやすい高さに。
誘ってる。
絶対に誘ってる。
私はそのまま、
ターレスの肩に歯を当てた。
軽く。
でも確かに噛んだ。
ターレスの呼吸が、
一瞬だけ深くなる。
「……またか」
言葉は呆れているのに、
声の奥にある温度は、
私にだけ向けられている。
もう一度噛もうとした瞬間、
ターレスの手が私の手首を包んだ。
止めるんじゃない。
ただ、
“強さを見ている”
そんな触れ方。
「やりすぎんなよ」
その声が胸に落ちる。
次の瞬間、
ターレスがゆっくりと身を寄せてきた。
私がターレスの肩に噛み跡をつけた場所と同じ、
私の肩に、ターレスが歯を立てる。
私が噛んだ強さより、
ほんの少しだけ深く。
痛くはない。
でも“逃がさない”という意思が静かに伝わる。
息が止まる。
ターレスは噛んだあと、
その場所を舌でゆっくりなぞった。
確かめるように、
熱を読むように、
静かに。
「お前が先にやったんだ。
返すのは当然だろ」
声は低くて静か。
でもその奥にある熱だけは、
私に向けられていると分かる。
ターレスが私の肩に歯を立てたあと、
そのまま少しだけ顔をずらして、
鎖骨の上をゆっくりと噛む。
強くじゃない。
“ここも返す”みたいに、静かに。
私は思わず息を吸い込んで、
ターレスの腕に手を添えた。
その腕に、
私はそっと噛み返す。
ターレスは、自分の腕についた噛み跡を一度見てから、
その位置に“返すように”私の腕へ顔を寄せ、
肌をゆっくり舌でなぞって確かめた。
次にターレスが噛んだのは、
私の肩の少し後ろ。
さっきよりも柔らかい場所。
私はターレスの手首にそっと歯を当てる。
骨の出ていない、噛んでも痛くないところを選んで。
ターレスはわずかに息を吐いて、
その指先で私の首筋をなぞる。
触れたあと、
そこにまた静かに歯を立てる。
噛む場所が変わるたびに、
距離の近さが変わって、
呼吸の重なり方も変わる。
でも、
どの場所でも、
ターレスの噛み方は同じだった。
深すぎず、
浅すぎず、
“逃がさない”とだけ伝える強さ。
私はまた噛む。
ターレスも返す。
場所を変えながら、
確かめるように、
静かに。
その繰り返しだけで、
夜がゆっくり満ちていく。
船の静けさと、
ターレスの体温と、
私の衝動だけがそこにあった。
船の低い振動が遠くで響くだけで静かだった。
その静けさの中で、
ターレスは寝台に座り、
腕を組んだままぼんやりと前を見ている。
その横顔を見ていると、
胸の奥がざわつく。
理由なんて分からない。
ただ、
噛みたい
という衝動だけが、じわりと湧き上がってくる。
気づいたら、私は近づいていた。
ターレスが視線だけこちらに向ける。
「……何だよ」
その声が低くて、
その落ち着きが、
余計に噛みたくさせる。
私はそっと手を伸ばし、
ターレスの肩に触れた。
ターレスは拒まない。
むしろ、ほんのわずかに肩を傾けてくる。
噛みやすい高さに。
誘ってる。
絶対に誘ってる。
私はそのまま、
ターレスの肩に歯を当てた。
軽く。
でも確かに噛んだ。
ターレスの呼吸が、
一瞬だけ深くなる。
「……またか」
言葉は呆れているのに、
声の奥にある温度は、
私にだけ向けられている。
もう一度噛もうとした瞬間、
ターレスの手が私の手首を包んだ。
止めるんじゃない。
ただ、
“強さを見ている”
そんな触れ方。
「やりすぎんなよ」
その声が胸に落ちる。
次の瞬間、
ターレスがゆっくりと身を寄せてきた。
私がターレスの肩に噛み跡をつけた場所と同じ、
私の肩に、ターレスが歯を立てる。
私が噛んだ強さより、
ほんの少しだけ深く。
痛くはない。
でも“逃がさない”という意思が静かに伝わる。
息が止まる。
ターレスは噛んだあと、
その場所を舌でゆっくりなぞった。
確かめるように、
熱を読むように、
静かに。
「お前が先にやったんだ。
返すのは当然だろ」
声は低くて静か。
でもその奥にある熱だけは、
私に向けられていると分かる。
ターレスが私の肩に歯を立てたあと、
そのまま少しだけ顔をずらして、
鎖骨の上をゆっくりと噛む。
強くじゃない。
“ここも返す”みたいに、静かに。
私は思わず息を吸い込んで、
ターレスの腕に手を添えた。
その腕に、
私はそっと噛み返す。
ターレスは、自分の腕についた噛み跡を一度見てから、
その位置に“返すように”私の腕へ顔を寄せ、
肌をゆっくり舌でなぞって確かめた。
次にターレスが噛んだのは、
私の肩の少し後ろ。
さっきよりも柔らかい場所。
私はターレスの手首にそっと歯を当てる。
骨の出ていない、噛んでも痛くないところを選んで。
ターレスはわずかに息を吐いて、
その指先で私の首筋をなぞる。
触れたあと、
そこにまた静かに歯を立てる。
噛む場所が変わるたびに、
距離の近さが変わって、
呼吸の重なり方も変わる。
でも、
どの場所でも、
ターレスの噛み方は同じだった。
深すぎず、
浅すぎず、
“逃がさない”とだけ伝える強さ。
私はまた噛む。
ターレスも返す。
場所を変えながら、
確かめるように、
静かに。
その繰り返しだけで、
夜がゆっくり満ちていく。
船の静けさと、
ターレスの体温と、
私の衝動だけがそこにあった。
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