3話「ポッド誤発進事件」
帰還ポッドの着地音が響いた瞬間、
整備区画の空気がぴりっと変わった。
バーダックさんのポッドだ。
私は工具を握り直し、
深呼吸してから駆け寄る。
ハッチが開くと、
熱気がふわっと流れ出た。
戦闘帰りのバーダックさんは、
汗の匂いと焦げた砂の匂いをまとっていて、
目つきもまだ鋭いまま。
「……戻った」
短い声。
私はこくりと頷き、ポッド内部に身を乗り出した。
焦げ跡、砂埃、破片。
いつも通り――いや、今日はいつも以上に汚れている。
「今日、激しかったんですね……」
返事はない。
ただ、肩で息をしている。
私は作業に集中しようとした。
けれど、足元の砂に気づくのが遅れた。
「わっ……!」
足が滑り、身体が前に倒れる。
視界がぐらりと揺れた。
次の瞬間、
バーダックさんの腕が私の肩をがしっと支えた。
熱い。
戦闘帰りの体温が、布越しでもわかる。
「……動くな」
低く、短い声。
怒っているわけじゃない。
ただ、戦闘の余韻がまだ抜けていないだけ。
「す、すみません……っ」
声が震える。
でも、言葉はちゃんと出た。
その時だった。
――ピッ。
ポッドのセンサーが、
私の姿勢を“搭乗”と誤認した。
「えっ、ちょ、ちょっと待って……!」
ハッチが閉まる。
バーダックさんが眉をひそめた。
「……チッ」
短い舌打ち。
私に向けたものじゃない。
完全に“機械トラブル”への苛立ち。
でも私はびくっと肩を震わせる。
次の瞬間、ポッドが発進した。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「落ち着け」
落ち着けるわけがない。
でも、バーダックさんの声は妙に冷静で、
その落ち着きが逆に心臓をばくばくさせた。
バーダックさんのスカウターが
ピッ、ピッ と点滅し、
耳元で軽い声が響いた。
『バーダックさん、帰ってすぐ災難だったな。
すぐ誘導するから、そのまま待ってくれ』
「……了解した」
『整備兵は大丈夫か?
悪かったな、うちの新人がまたやらかした』
私は返事ができない。
喉がつまって、声が出ない。
『あんまりビビらせてやるなよ、バーダックさん』
「ばかやろう、ビビらせねーよ」
その軽口に、
少しだけ胸が軽くなった。
ポッドが揺れるたび、
バーダックさんの肩が触れそうになる。
その熱が、
戦闘帰りの生々しさが、
胸をざわつかせた。
「……息、荒いぞ」
横目でちらりと見られる。
「ち、違……っ」
弱い反発をした瞬間、
すぐに目をそらしてしまう。
「落ち着け。
すぐ戻る」
それだけ言って、
また前を向く。
ポッドが着地し、
ハッチが開くと冷たい空気が流れ込んだ。
バーダックさんは私をちらりと見て、
短く言った。
「……怪我はないな」
私は深く頭を下げた。
「……す、すみませんでした……!」
バーダックさんは足を止め、
ほんの一瞬だけこちらを見る。
「……お前のせいじゃない。
センサーが馬鹿になってただけだ」
淡々とした声。
それだけ言って歩き去る。
私はその背中を見送ることしかできなかった。
「……で?」
背後から影が落ちる。
ターレスだ。
隣にはラディッツもいる。
二人とも、完全に面白がっている顔。
ターレスがにやにやしながら言う。
「憧れのバーダックと二人でポッド旅行は楽しかったか?」
「やめてよ、あれは、本当に事故で…!」
ターレスが肩をすくめる。
「へぇ。
事故であんなに顔赤くなるか?」
「……っ」
喉の奥で言葉がつっかえて、息だけが漏れる。
その横で、ラディッツが腕を組んで私を見てくる。
「……おい、大丈夫か?
顔真っ赤だぞ」
心配してくれてる声なのに、
口元はちょっと笑ってる。
「まあ……あんな状況じゃ仕方ねぇか」
ターレスがポッドを指で叩く。
「じゃあ次は俺のポッドで“事故”ってみるか?」
「……っ」
声が出なくて、視線だけ泳いでしまう。
ラディッツは苦笑しながらターレスの肩を軽く叩く。
「おいターレス、あんまやりすぎんなよ。
こいつ、固まってんぞ」
でもその声は、
完全に“面白がってる”声だった。
「……でもまあ、転ぶのはお前らしいな」
私はもう、
顔から火が出そうだった。
整備区画の空気がぴりっと変わった。
バーダックさんのポッドだ。
私は工具を握り直し、
深呼吸してから駆け寄る。
ハッチが開くと、
熱気がふわっと流れ出た。
戦闘帰りのバーダックさんは、
汗の匂いと焦げた砂の匂いをまとっていて、
目つきもまだ鋭いまま。
「……戻った」
短い声。
私はこくりと頷き、ポッド内部に身を乗り出した。
焦げ跡、砂埃、破片。
いつも通り――いや、今日はいつも以上に汚れている。
「今日、激しかったんですね……」
返事はない。
ただ、肩で息をしている。
私は作業に集中しようとした。
けれど、足元の砂に気づくのが遅れた。
「わっ……!」
足が滑り、身体が前に倒れる。
視界がぐらりと揺れた。
次の瞬間、
バーダックさんの腕が私の肩をがしっと支えた。
熱い。
戦闘帰りの体温が、布越しでもわかる。
「……動くな」
低く、短い声。
怒っているわけじゃない。
ただ、戦闘の余韻がまだ抜けていないだけ。
「す、すみません……っ」
声が震える。
でも、言葉はちゃんと出た。
その時だった。
――ピッ。
ポッドのセンサーが、
私の姿勢を“搭乗”と誤認した。
「えっ、ちょ、ちょっと待って……!」
ハッチが閉まる。
バーダックさんが眉をひそめた。
「……チッ」
短い舌打ち。
私に向けたものじゃない。
完全に“機械トラブル”への苛立ち。
でも私はびくっと肩を震わせる。
次の瞬間、ポッドが発進した。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「落ち着け」
落ち着けるわけがない。
でも、バーダックさんの声は妙に冷静で、
その落ち着きが逆に心臓をばくばくさせた。
バーダックさんのスカウターが
ピッ、ピッ と点滅し、
耳元で軽い声が響いた。
『バーダックさん、帰ってすぐ災難だったな。
すぐ誘導するから、そのまま待ってくれ』
「……了解した」
『整備兵は大丈夫か?
悪かったな、うちの新人がまたやらかした』
私は返事ができない。
喉がつまって、声が出ない。
『あんまりビビらせてやるなよ、バーダックさん』
「ばかやろう、ビビらせねーよ」
その軽口に、
少しだけ胸が軽くなった。
ポッドが揺れるたび、
バーダックさんの肩が触れそうになる。
その熱が、
戦闘帰りの生々しさが、
胸をざわつかせた。
「……息、荒いぞ」
横目でちらりと見られる。
「ち、違……っ」
弱い反発をした瞬間、
すぐに目をそらしてしまう。
「落ち着け。
すぐ戻る」
それだけ言って、
また前を向く。
ポッドが着地し、
ハッチが開くと冷たい空気が流れ込んだ。
バーダックさんは私をちらりと見て、
短く言った。
「……怪我はないな」
私は深く頭を下げた。
「……す、すみませんでした……!」
バーダックさんは足を止め、
ほんの一瞬だけこちらを見る。
「……お前のせいじゃない。
センサーが馬鹿になってただけだ」
淡々とした声。
それだけ言って歩き去る。
私はその背中を見送ることしかできなかった。
「……で?」
背後から影が落ちる。
ターレスだ。
隣にはラディッツもいる。
二人とも、完全に面白がっている顔。
ターレスがにやにやしながら言う。
「憧れのバーダックと二人でポッド旅行は楽しかったか?」
「やめてよ、あれは、本当に事故で…!」
ターレスが肩をすくめる。
「へぇ。
事故であんなに顔赤くなるか?」
「……っ」
喉の奥で言葉がつっかえて、息だけが漏れる。
その横で、ラディッツが腕を組んで私を見てくる。
「……おい、大丈夫か?
顔真っ赤だぞ」
心配してくれてる声なのに、
口元はちょっと笑ってる。
「まあ……あんな状況じゃ仕方ねぇか」
ターレスがポッドを指で叩く。
「じゃあ次は俺のポッドで“事故”ってみるか?」
「……っ」
声が出なくて、視線だけ泳いでしまう。
ラディッツは苦笑しながらターレスの肩を軽く叩く。
「おいターレス、あんまやりすぎんなよ。
こいつ、固まってんぞ」
でもその声は、
完全に“面白がってる”声だった。
「……でもまあ、転ぶのはお前らしいな」
私はもう、
顔から火が出そうだった。
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