光りの大空



✻それぞれの決断と覚悟✻


 綱吉は次の日退院する。
 骸は一緒に退院して柿本達はまだ怪我が治っていないので入院中だ。

 綱吉は骸を連れ家に帰る。

 ガチャ!

「ただいま、母さん」
「ただいま」

 するとリビングから奈々がやって来る。

「お帰りなさい、ツックン、リッチャン」

 奈々は2人を抱き締める。

「……うん、母さん。リボーン達に律都が女の子だって話したよ。それ以外は話して無い」
「そう……。ツックンが決めたなら母さんは何も言わないわ。……所でその子は?」
「……お邪魔します」
「リビングで話すよ」
「分かったわ」

 綱吉達はリビングに移動するとリボーンはエスプレッソを飲みながら座っていた。

「帰ったか」
「うん、ただいま。母さん、提案なんだけど右隣の家と後ろの広場が売り家になってるよね」
「えぇ?」

 綱吉は自分の席に座り、律都も座る。
 骸は綱吉が指を指した席に座り奈々は人数分のお茶を用意して座る。

「実は父さんに頼んで買って貰ったんだ」
「そうなの?」
「うん、それで買った敷地とこの家の敷地を繋げて2階建ての大きな家を新しく建てたいだ」
「新しく家を?」
「うん、いずれランボ達が大きくなった時、1人部屋が必要になる。……それから骸、挨拶を」
「六道骸です。宜しくお願いします」
「沢田奈々です。宜しくね、骸君」
「はい」
「骸と後、2人がいるんだけどちょっと事情があって親と住めなくなって沢田家で一緒に暮らしたいと思ってるんだ、駄目かな……」
「……普段我儘を言わないツックンが初めて私達にお願いを言うなら母さんは叶えたいわ」
「ありがとう、母さん」
「でも、ツックン。新しいお家が出来るまでどうするの?」
「恭弥が暫く離れを貸してくれるって言うから新しい家が建つまで雲雀家でお世話になろうかなと思う」
「恭君の所?」
「うん、彼処には俺と葎都の部屋もあるし、母さんも恭華さんと色々と話すのも良いと思うんだ」
「そうね、久し振りに恭華ちゃんと話すのも良いかも知れないわね」
「ツナ兄、お引越しするの?……それに、どうして」
「あぁ、ふぅ太には思う所があるかも知れない。骸にも色々と事情が合ってあんな事をした。許せとは言わない。だけど骸は俺の物になった。今後、ふぅ太達には手を出さない。それだけは約束する」

 ふぅ太は複雑な表情をさせ、頷くとランボ達の所に向かう。

「それで、ツックン。引っ越しはいつするの?」
「実は引っ越し作業者は手配してるから後、一時間で来る。ふぅ太達は自分達の荷物を一箇所に集めておけるか?」
「大丈夫だもんね!」

 ふぅ太達は子供部屋に向かう。

「私も荷物を片付けるわ」
「いきなりで済まない」
「大丈夫よ」

 ビアンキは自分の部屋に戻り、リボーンを見る。

「リボーンも荷物を片付けてくれ。骸は退院したばかりだけど、俺の手伝いを。葎都は自分の部屋。終わったら俺も手伝うから」
「うん、分かった」
「母さんも必要な荷物を纏めるわ」

 それぞれの部屋に戻り、綱吉は骸を連れて部屋に向かう。
 骸は綱吉の部屋を見ると余り物が無いのに驚く。

「キミくらいの年の子供ならゲームや本等を沢山あると思っていたんですけど」
「……二年前の出来事がなければそうなっていたかもな。二年前に全部捨てた。必要な物しか今は置いて無い」
「そうですか、それで僕は何をすれば良いんです」
「あぁ、マスキングテープで箪笥や机が開かない様にしてくれ。俺はパソコンを運べる様にする」
「分かりました」

 二人で纏められる物は纏めて一時間後に引っ越し業者がやって来て全ての荷物をトラックに詰め、沢田家は空っぽになる。

「からっぽだもんね!」
「ツナ兄、お家は壊しちゃうの?」
「…そうだな、色々と思い出はあるけど再利用出来る素材は使う予定だよ。それにふぅ太達が大きくなって、この家を出て行ったとしても此処はお前達の家なのは変わらない。何時でも帰って来い」

「「「っ……!」」」

 ふぅ太達は目を見開き、綱吉を見てふにゃりと笑みを浮かべ綱吉に抱き着く。

「ツナ、だいすきだもんね!」
「イーピンも!」
「絶対に帰って来るね!」
「あぁ……。お前達は俺の弟妹だからな」

 綱吉達は雲雀家に向かうと雲雀と母親の恭華が待っていた。

「いらっしゃい。自分の家と思ってゆっくりと過ごしてちょうだい」
「恭華ちゃん、お世話になりますね」
「うふふっ、良いのよ。それに久しぶりにゆっくりとお喋りしましょう?」
「えぇ」
「荷物は全て倉庫に運んで置いたよ、それから子供達は此処にいる間はマナーや勉強を教えるから。覚悟しな」
「はい!」
「がんばるもんね!」
「赤ん坊達の部屋も離れに用意してあるから」
「分かったぞ」
「それから綱吉と律都の部屋は許可が下りない場合は決して入らないように」
「まぁ、そうだな。色々とあるからな」

 リボーン達は頷くと今後の話しをしていく。
 工事予定では三ヶ月掛かる予定になっている。
新しい家は今まで住んでいた家の二倍の広さになり、キッチンやリビングは広くなり、一階は寝室と広めの子供部屋と二部屋。
 二階は六部屋になり、屋上も出来る事になる。

「…なんて言うか豪邸ですね」
「全部の部屋は防音効果が付いた部屋になる。騒いでも音が漏れないようにする積もり。それに何となく、あと一人。増えるな」
「まだ増えるのかい……」
「何となくな」

 雲雀は顔を顰め、ため息を吐く。
 そして一週間後に柿本達が退院し雲雀家に合流し、骸が1人の少女を連れて来る。

「……………」
「…駄目ですか」
「名前は」
「凪です、彼女は交通事故で右目と内臓を失い、家族に捨てられてしまったんです」
「保護したなら、骸。最後まで面倒を見ろよ」
「分かっています、凪。挨拶を」
「…凪です、宜しくお願いします」
「あぁ、宜しく」

 綱吉は母親の奈々と律都と雲雀達に紹介し、凪を特別養子縁組し沢田家に迎え入れる。

「宜しくね、凪ちゃん。私の事はお母さんって呼んでね」
「…お母さん?」
「えぇ、まさかリッチャンの他にも可愛い娘が出来るなんて!」

 奈々は凪の頭を優しく撫で、綱吉達と同じように凪に愛情を注いでいく。


✩*・°・*.*.。*・☆・*・°・*.*.。*☆

京子&ハルSIDE

 綱吉から呼び出されて一週間が経ち二人は何となく会いたくなり、ナミモリーヌに来ていた。

「ハルちゃん、久しぶりだね」
「はい、京子ちゃんは元気でしたか?」
「うん」

 二人は他愛のない話しをしていたが楽しいのに楽しく無かった。
 笑っているけど何処かつまらない。

「…ハルちゃん、私。ツナ君が好き」
「私もツナに恋をしています……」
「ふふっ、じゃあ私達はライバルだね」
「はい!」
「……あの時のツナ君は怖かったけど、きっと私達を思ってああしたと思うの」
「はい、でも…これからツナさんや皆さんと二度と一緒にいられない方が怖いです……。それに寂しいです……」
「うん…私も……」

 二人は涙を流すがその瞳には覚悟が宿る。

「っ…泣くのはこれで最後です!」
「そうだね……。」

たとえどんなことが起ころうとも傍にいたい。
たとえどんなことが起ころうとも支えたい。
だって……大好きだから!
理由なんて分からない。
そう思ったからそうするだけ。
覚悟しててね、マフィアのボス候補さん?
女の子は大好きな人の為なら強くなれるんだよ。


✩*・°・*.*.。*・☆・*・°・*.*.。*☆


獄寺SIDE

10代目の言いたいことは理解した。
元々俺は裏の人間だったから危険なのは俺が一番理解している。
全部、全部分かっているのに……理解しているのに。

「なんでこんなに腑抜けてだろうな………」

煙草の煙を吹かしながら空を見上げる。
生憎の曇り空、もしかしたら雨が降るかもしれない。
ジャポーネに来て早1年半か。
毎日が何かしらと騒がしかった。
10代目に着いて行こうと決めて色んな奴が周りにいて、10代目の本当の姿が見たいって思って。
信用して欲しいって信頼して欲しいって本気で思って、両方持っている雲雀が羨ましくって。

「今更10代目が傍にいない日常が想像できねぇや……」

皆10代目の何かしらに惚れて憧れて………。

「初めて仲間が出来たって思っていたのかもな、俺は」

それは今にも崩れそうな脆い糸のようなもので繋がっていたのかもしれない。
そんな俺たちの関係に俺は心地よさを感じていた。
野球馬鹿と芝生頭が何かいって、俺が文句言って、口論しているのをアホ女が無理矢理入ってきて、笹川が芝生頭宥めて、そして10代目が隣で律矢さんと手を繋いでいた。
それが俺たちの日常だった……。

「ずっと続けばいいと思っていた……」

あの時の10代目は苦しそうに眉を顰めて言った。
10代目もあんな顔するんだと思った。
本当は誰よりも優しくて誰も傷付けたくなくてそのくせに自分はどれだけ傷付いてもいいなんて思ってて……。
俺たちの事ばっか考えて自分のことは何も考えちゃいないんだ、あの人はそんなのは……。

「狡い、…よな?俺だって10代目のこと考えたって…いいよな?」

気が付いたら煙草は消えていた。
そして曇っていた筈の空は晴れていた。
何処までも澄んでいて青い空に手を伸ばした。

「何処までもお供します、10代目!たとえそれが人の道を外れた鬼の道であろうとも…修羅の道であろうが蛇の道であろうがこの獄寺隼人は着いて行くッス!」

今はまだその背中を追いかけさせてもらいますがいつか隣を歩けるくらいの男になって見せます!



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