光りの大空



✻過去(1)と拒絶✻

 襲撃事件から3日が経ち綱吉は目を覚ます。

「………………」
「起きたかい、綱吉?」
「……恭弥?」

 綱吉はゆっくりと起き上がり周りを見ると恭弥と隣には律都が眠っていた。

「キミは3日も眠っていたんだよ」
「3日……他の連中は?」
「笹川了平、山本武、獄寺隼人は同じ病室で入院してる。……六道骸達は隔離病室で監視されながら入院してるよ」
「そう…………。」

 ガラッ!

「起きたのか、ツナ」
「うん、今さっきね。恭弥から聞いたよ。獄寺君達の事は」
「そうか」

 リボーンは綱吉に近寄り、ベッドの上に座る。

「リボーン、獄寺君達はいつ退院出来る?」
「治療はボンゴレ医療チームが行って行ってる。明日には全員退院出来るぞ」
「明日……」
「お前はちゃんと検査をしてから退院だそ」
「分かってる……。リボーン、頼みがあるんだ」
「何だ?」
「明日、獄寺君達を全員、この病室に集めて欲しい、子供達を抜かしてだ」
「京子達やビアンキもか?」
「そう、全員。俺に関わった人、全員。……トマゾーは抜きで」
「分かったぞ……」
「明日、俺の事を話すよ」
「……綱吉、良いのかい?」
「あぁ、それでどう選ぶかは向こうが決めれば良い。話せる事は話すけど、沢田家の秘密は話す積りは無い」

 綱吉は隣で眠っている律都の頭を撫でる。

「いつ、全員を呼ぶ」
「退院の3時間前に呼んで欲しい」
「分かったぞ」

 そして次の日、綱吉の病室に獄寺達が集まる。
 しかし肝心の綱吉は席を外しいない。
 綱吉は律都と雲雀を連れて骸達の病室に来ていた。

「入るぞ」

 ガラッ!

「何度も言ってるだろ、綱吉。部屋に入る時はちゃんとノックをして返事が帰って来てから入るようにって」
「だって骸だから」
「マフィアが何しに来たんですか」
「柿本千種から聞いたか?」
「大体は」
「六道骸、柿本千種、城島犬。お前達は俺が引き取る。戸籍はこっちで用意してやる。学校にもちゃんと行って貰う。黒曜中から並盛中に転校して貰う。」
「……綱吉の頼みだから仕方がないから手続きは僕がしておいた。風紀を乱したら咬み殺す」
「異論は聞かない。そして骸」
「何ですか……」
「ボンゴレ霧の守護者に任命する」
「……………はい?」
「幻術師は数えるしかいないんだよ。お前の幻術は一級品で俺が知る幻術師の中でも1番の使い手だ。守護者だからって行動を制限する積りは無い。黒いマフィアは俺が10代目になってから全部潰す積もりだ」
「貴方は何故、マフィアの癖にマフィアを憎んでいるんですか?」
「……お前らと一緒だからだ」

 綱吉は律都を抱き締め、骸を見る。

「律矢は男の格好をしてるけど女の子なんだよ」
「………………」
「今から9年前、律矢は黒のマフィアに誘拐され人体実験をされ全てを忘れ、感情を無くし今日まで男として生きて来た」
「……………」

「「「……………」」」

「律矢が誘拐され、俺は2年間感情を無くし、人形見たいに生きて来た。やっと律矢を助けられたと思ったら律矢は俺を忘れてた。だから俺は黒のマフィアが憎い」
「綱吉、そろそろ時間」
「分かってる。3人共、今から俺の病室に来て貰う。そこで俺の事を話す」

 綱吉は律都の手を握り、雲雀達を連れ自分の病室に戻る。

 ガラッ!

「10代目!」
「大丈夫か、ツナ?」
「うん、大丈夫だよ」

 綱吉は病室に入り、その後を骸達が入って来る。

「テメーらは!」

 骸達は獄寺を無視し、綱吉はベッドに座り、雲雀と律都は綱吉の両脇に立ち、骸達は後ろに立つ。

「あの、何故私達が呼ばれたんですか?」
「……今回の襲撃事件は知ってるよね」
「うん……。並中の風紀委員が襲われる事件だよね」
「違う、今回の襲撃事件は俺を見付けるのが目的だった」
「ツナ君を?」
「京子ちゃんとハルは日本にはヤクザがあるのは知ってるよね」
「はい、知っています」
「ヤクザは裏の人間、人間には表の人間と裏の人間がいる。裏の人間は簡単に人間を殺す事が出来る事も知ってるよね?」

「「……………」」

「海外ではマフィアと呼ばれ、イタリアにあるマフィア。ボンゴレマフィア・直系に当たるのが沢田家。ボンゴレを作ったのは俺の4代前に当たる沢田家康・ジョットと呼ばれる。そして俺は次期ボンゴレ10代目。ボスになる」
「そ……そんな」
「ツナさんが……」
「本当だよ。故に俺は何度も命を狙われて来た」

 ハルと京子は動揺しながら綱吉を見る。

「……リボーン君は?」
「リボーンはボンゴレから派遣された家庭教師で俺をボスにする為に来た。リボーン自身も黒の人間」

「「……………」」

「俺のそばにいれば必ず捲き込まれる危険がある。……金輪際、俺に近寄らないで欲しい」

「「っ……!?」」

 2人は驚き、座っていたイスから立ち上がる。

「い…嫌です!……ハルは嫌です!」
「私も嫌だよ!……折角仲良くなれたのにそんなの嫌だよ!」
「……俺は何十人もの人間を殺した事がある」

「「「「「なっ……!」」」」」

「初めて人間を殺したのは今から2年前……学校帰りに誘拐され並盛の外れにある廃墟の建物に連れて行かれた。そこで俺は誘拐した人間を嬲り殺した」
「な、ぶり…殺した……?」
「男達が持っていた、武器・拳銃を奪い何度も撃ち、地面に流れる大量の血、顔に媚り付く血、服や手に付く血……。止めてくれって懇願する男や助けてくれって言う男を俺はただの肉の塊になるまで壊し続けた」
「っ!」
「…うっ!」
「ねぇ……そんな俺のそばにいればいずれ、自分達がそうなるかも知れないだよ?」

 綱吉はユラリと立ち上がり一瞬で動き2人の首にトンファーをギリギリ止める。

「「っ……!」」

「動くな……少しでも動けば殺す」
「沢田!」

 綱吉は無表情で殺気を浴びせる。

「脅しじゃ無い。金輪際、俺に近寄るな」
「う…あっ」

 2人の呼吸は荒くなり顔色は悪くなる。
 綱吉はトンファーを下ろし2人に背を向ける。

「これで分かった筈……。俺のそばにいれば、いずれ敵対するマフィアに襲われるかも知れない。生半可な気持ちでいれば死ぬかも知れない」
「…はぁ…はぁ…っ……」
「もう一度言う。金輪際、俺のそばに近寄るな」

 2人は床に座り込み涙を流し身体を擦る。
 綱吉は雲雀を見ると雲雀は頷き2人を病室から連れ出す。

「これで、俺が遊びじゃ無く本当のマフィアのボス候補だと分かったよね。山本、笹川先輩」
「……あぁ」
「京子ちゃんには悪い事をしたと思います。先輩を襲ったのは後ろにいる城島犬。骸達はマフィアを憎み俺を見付ける為に今回の襲撃事件を起こした。本来なら捕まる筈だったけど俺が手を回し俺が引き取る事に決めた。それに2人にはマフィアは危険だと言う事を身を持って知って欲しかった。一度、道を間違えれば二度と戻れなくなる」
「分かっている、京子には危険な目にはあって欲しくない」

 綱吉はベッドに座ると雲雀が戻って来る。

「2人は看護婦に任せて来たよ」
「ありがと、恭弥。2人には話して無いけど俺は誘拐された男達を殺した後、壊れた」
「壊れた?」
「悪夢に魘され、幻覚に魘され、食事は受け付けなく食べても戻し、他人を拒絶した」
「母親の奈々や家光さえ綱吉は拒絶したんだよ。唯一、そばにいられたのは僕と律矢だけ……見ていて僕らは何も出来なかった。少しずつ痩せて行き、無表情で怯え、泣きながら暴れ、手が付けられなかった」
「父さんがシャマルを呼び、カウンセラーを受け、俺は……正気に戻った。それから俺は他人との間に壁を作る事にした」
「……ツナにとって俺らは何だ?」

 綱吉は山本達を見詰める。

「……他人と仲間の狭間、だから今なら戻れる。……俺に近寄るな」
「俺は……!」

 コンコン!

「失礼します。獄寺さん、山本さん、笹川さんをお迎えに来ました」
「時間だよ。3人は最終検査をしたら退院出来るから」

「「「っ……!?」」」

「連れて行って下さい」

 3人は顔を歪め、看護婦に連れて行かれる。
 綱吉はベッドに横たわる。

「良かったのアレで?」

「「「………っ!」」」

 今までベッドの脇にあった台の上にいた、子猫が綱吉を見る。

「……ヒカルだよね?」
「そうだよ。7年ぶりだね」
「初めて見た時、直ぐに分かった。………でも」
「綱吉君……」

 綱吉はちゃんとベッドに座る。
 ヒカルは床に降りると人の姿になり綱吉を抱き締める。

「っ…!」
「キミはこの7年間、頑張って力を付け姫を守って来た事を僕は知っている。キミはとても優しく、誰よりも純粋な心を持ってる」
「俺の手は血で汚れてる。…律都の事は誰よりも大好きなんだ。でも………やっぱり俺はアイツらを許す事は出来ない。必ず見付けて地獄に落とす」
「綱吉君…僕は止めないよ。キミはキミが思った通りに進むと良い。僕はキミをサポートする為に生まれて来たんだ」
「ヒカル、良いの?」
「うん」
「ツナ、コイツは……」
「リボーン、ごめん。ヒカルは沢田家と9代目とその守護者しか知らない、秘密なんだ。今は言えない。一つだけ律都は男装しているけど女の子なんだ」

 ビアンキとリボーンは驚いた顔をさせ、律都を見る。

「律都の事はまだ話したく無い。……リボーンはジェネラルドックの事は知ってる?」
「あぁ、世界最高峰の情報屋だ。高額な依頼料を取り、だが情報は正確で一切、裏の人間からは依頼を受けない。そして奴の名を語った奴は殺される。そして誰1人、奴の顔は知らない」
「……………」

 綱吉はヒカルから離れ、リボーンを見る。

「そのジェネラルドックは俺だよ」

「「「「「なっ……!」」」」」

「なっ!」

 骸達やビアンキ、リボーンは驚いた顔をさせる。

「俺は名前は沢田綱吉。次期ボンゴレ10代目兼情報屋・ジェネラルドック。以後、お見知りおきを」

 綱吉はそう言ってお辞儀をする。

「本当か、雲雀!」
「本当だよ。綱吉は最初は家光の所でハッキングを覚え、後は独学でハッキングを覚え様々な情報を調べて情報屋を始めた。今じゃ世界最高峰の情報屋になった」
「誘拐があってからは俺と律都の情報は全て消した。……偽りの情報を流して父さんはそれからイタリアに移り、家族と距離を置き母さんは父さんがマフィアのNo.2の地位を持ってる事も知ってる。




俺自身に大きな闇を抱えてるのも自覚してる」

 綱吉は苦しげな表情を浮かべ手を握り締める。
 ビアンキはゆっくりと立ち上がり綱吉を抱き締める。

「ツナ、辛い事を話してくれてありがとう。私は貴方達の味方よ。何か困った事があれば言って頂戴。必ず力になるわ。大好きよ、ツナ、リツ」

 ビアンキは“あの子達を見て来る”と言い病室を出て行く。

「少しは前に進む事に決めたんだな」
「……………」
「沢山悩め、沢山考え、そして沢山泣け。……そして沢山の味方を作れ。お前ならもっと強くなれる。力も心も」

 ガシガシと綱吉の頭を撫でシャマルは部屋を出て行く。

「ツナ」
「……リボーン」
「今、どんな気持ちだ?」
「……モヤモヤしてグルグルしてる」
「お前が認めた仲間なんだろ、胸張って待ってろ。それがお前の役目だ。突き放すような言い方をしたけど認めているんだろアイツらを?」
「…うん。ちゃんと分かり、自分で選んで欲しい、俺を受け入れるなら俺も今度こそ皆を受け入れる」
「そうか」
「リボーン……。ダメツナは演技で勉強や運動は出来る。力や超直感も使える。黙っててごめん」
「いや、許さねぇぞ」
「っ…!」
「だから、ツナ、もっと俺を信頼しろ。俺はお前達を守ってやる」
「……ありがとう、リボーン。リボーンは最高の家庭教師だよ」

 リボーンはニヒルに笑い、病室を出て行く。
 部屋に残ったのは7人だけ。

「彼女の事は話さなくって良かったんですか?」
「今は良い、俺の過去を聞いてどう思った」
「……キミの時間は止まったまま今日まで生きて来た。癒やす事が出来るのは彼女だけ、そうですよね?」
「…そうかも知れないな。なぁ、もうどうすれば良いか分からないんだ。……情報屋になったのは律都を誘拐した奴らを見付ける為、でも見付ける事は出来なかった」

 綱吉は涙を流し泣く、普通の子供なら感情を露にして泣くのに綱吉はそれを押し殺し泣く。

「……………」

 律都は綱吉を抱き締め、綱吉はビクリとするが背中に手を回し律都を抱き締める。



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