伝説の三振り



石切丸「彼をどうする積もりだい」
琥珀「今は何も……」

 琥珀はにこりと笑う。

琥珀「実は今剣さんも欲しいんだけど此所から今剣さんが母屋からいなくなったら良からぬ事を思う人も出て来るかも知れないから諦めるよ」
今剣「ボクもですか?」

 今剣は驚き琥珀を見る。

琥珀「うん、でもたまに離れに来て欲しいな、岩融さんも喜ぶし主も喜ぶと思う」
今剣「えっ?」
琥珀「主は短刀の子達と一緒に遊ぶのは喜ぶと思うんだ(元が一緒だから、オレはアイツらと遊ぶのは好きだった。だから)」

 琥珀は懐かしそうに目が細め今剣を見詰める。
 三日月はそんな琥珀を見詰めると琥珀は視線に気付きふわりと笑う。

三日月「………………」
琥珀「……?」

「「「……………」」」

 暫くの沈黙があったが琥珀は話し出す。

琥珀「母屋には裏切り者がいるから気を付けてね」
石切丸「……こんのすけだね」
琥珀「気付いていたんだ」
石切丸「あぁ、私達は初代審神者に顕現され慕っていた。でもアレはサポート役だって言う割にはコレといったサポートをする事はなかった。ノルマをこなせと言うだけで何もせず、政府の事ばかり優先していた」
琥珀「乗っ取りの時も何もしなかった」
石切丸「あぁ、初代は頑張ったけどこの本丸は乗っ取られてしまった」
琥珀「そして少しずつ祟り場になって行った」

「「「「………………」」」」

琥珀「少しずつだけど、主の霊力がこの本丸に流れていっているからいずれはこの本丸は元に戻るよ」
石切丸「…そうだね、それじゃさっき言っていた三振りを渡すよ」
琥珀「ありがとうございます」
今剣「所で離れには審神者しかいないのですか?」
琥珀「うん、こんのすけと一緒。主には言って無いけどオレの守りの念がついているから大丈夫かな?離れからは出ないように言ってあるから」

 石切丸と小狐丸は立ち上がり三振りを取りに行く。
 部屋には琥珀と今剣に三日月の3人になる。
 今剣はチラチラと琥珀を見ていて、琥珀はにこりと笑い、手招きする。

今剣「っ…!」
琥珀「髪の毛を縛ってあげる」
今剣「いいんですか?」
琥珀「うん」

 今剣は琥珀に近寄り座り、琥珀はポケットから櫛を出し優しくとかしていく。
 サイドから裏編み込みをしていき最後にお団子にしてまとめて縛る。

琥珀「うん、可愛い」
今剣「ありがとうございます!」
三日月「見事だな」
琥珀「三日月さん?」

 三日月は琥珀に近寄り、今剣を見ると今剣は嬉しそうに笑う。

今剣「みてください、三日月殿。琥珀殿がしばってくれました!」
三日月「ウム、良く似合っているぞ」
今剣「ほんとうですか!」
琥珀「……ふふっ、可愛い」
今剣「琥珀殿はとてもいいにおいがしますね。なにかつけているんですか?」
琥珀「うーん、特に付けて無いよ。これでも刀剣女士だからね、匂いで居場所が分かったら大変だから」
今剣「そうですか、でもほんとうにいいにおいがしますよ」
琥珀「そうなんだ。自分では分かんないかな」

 琥珀は首を傾げ、すると三日月は琥珀の髪の毛を撫でる。
 琥珀はきょとんとして三日月を見る。

琥珀「三日月さん?」
三日月「……柔らかいな」
琥珀「ありがとう、これでもちゃんと手入れはしてるからかな。じゃないと兄さん達が色々と言って来るから」

 琥珀は困ったように笑う。

三日月「琥珀殿は兄妹と仲が良いのだな」
琥珀「うん、過保護だけど2人は優しくて何時も俺の事を守ってくれる。時には厳しい時もあるけど殆どは甘やかされてるかな」

 琥珀はふわりと笑うとそこに石切丸と小狐丸が戻って来る。

石切丸「おや、今剣。髪がさっきと違うね?」
今剣「琥珀殿がしばってくれたのですよ!」
小狐丸「三日月殿は何を?」

 三日月はずっと琥珀の髪を撫でていたのだ。
 琥珀は気にする事は無く三日月の好きなようにさせていた。

三日月「触り心地良い髪でな」
小狐丸「………そうですか」
石切丸「琥珀殿、左文字派の太刀・打刀・短刀の3振りで良かったんだよね?」
琥珀「はい、有り難うございます。石切丸さん」
小狐丸「しかし、どうやって持って行く積もりですか?特に太刀は重いですよ?」
今剣「では、ボクがお手伝いします!」
琥珀「有り難う、お願いしようかな」
今剣「はい!」

 今剣は嬉しそうに笑い跳び跳ねる。
 琥珀は石切丸から打刀と太刀を受け取り、今剣は短刀を持つ。

琥珀「では、離れに戻ります。余り遅くなると主が心配するので」
今剣「あの琥珀殿……」
琥珀「はい?」
今剣「すこしのあいだ、はなれにいてもいいですか?」
琥珀「大丈夫だよ、主も喜ぶと思う」
今剣「ほんとうですか。…あの石切丸、はなれにしばらくいてもいいですか?」
石切丸「大丈夫だよ、彼は本当に優しい人の子見たいだから」

 今剣は嬉しそうに笑う。

琥珀「まだ明るいから姿を視られると厄介だな……」

 琥珀はそう言うと自身に掛かっている術を解き、石切丸や三日月は驚いた顔をさせる。

琥珀「今剣君、手を」
今剣「てですか?」
琥珀「うん、この術は俺は苦手なんだけど、自分を入れて3人なら飛べるんだ」
三日月「飛ぶ?」
琥珀「簡単に言えば転送装置と一緒です。此所から離れに一瞬で移動出来るのかな」
石切丸「それは凄い…」
琥珀「俺寄りも霧人兄さんの方が凄いよ。1度に10人以上を連れて飛ぶ事が出来るから」
石切丸「10人以上……」
琥珀「はい、じゃあ今剣君、行こうか」
今剣「はい!」

 琥珀は意識を集中させると清らかな霊力が微かに漏れ出す。
 すると琥珀と今剣の身体に霧が掛かっていく。
 三日月はそんな2人に手を伸ばし、石切丸達は驚いた顔をさせる。
 琥珀は気にする事はなく術を発動させ、琥珀達の姿は消える

小狐丸「消えてしまいましたね」
石切丸「そうだね、三日月がまさか着いて行くとは」
小狐丸「……恐らく琥珀殿の事が気に入ったのでしょう」
石切丸「そうだね、あの三日月が1度気に入った者を野放しにするとは思えない」
小狐丸「しかし兄2人は琥珀殿の事をかなり大切にしているのは確かですよ」
石切丸「まぁ、今はこの本丸がどうなるか見守ろう」
小狐丸「そうですね」

 琥珀達は離れての庭先に移動していた。

今剣「三日月殿、なぜ?」
三日月「さぁな?」
琥珀「いきなりは危ないですよ。2度としないで下さいね」
三日月「分かった」

 すると玄関の方から綱吉の大きな声が聞こえて来る。

綱吉「こんのすけ、離して!」

こんのすけ「なりませぬ!どうかもうしばらくお待ち下さい!」

今剣「さにわ殿の声ですね」
琥珀「どうしたのかな?」

 琥珀達は玄関の所に向かう。

琥珀「どうしたの?」
綱吉「っ…琥珀!」

 綱吉は琥珀に抱き付き、琥珀は驚いた顔をさせこんのすけを見る。

こんのすけ「琥珀様、戻られましたか!」
琥珀「うん、それで何を揉めていたの?」
綱吉「琥珀が母屋に行って戻って来ないから迎えに行こうと………」
琥珀「……なるほど、それでこんのすけが主を引き止めていたのか」
こんのすけ「はい」
琥珀「ただいま、主。怪我とかはして無いから大丈夫だよ」
綱吉「本当?」
琥珀「うん、だから安心して」

 琥珀は優しく背中を撫でると綱吉は軽く抱き締めてから身体を離す。
 そして今剣と三日月を見て驚いた顔をさせる。

綱吉「今剣君と……確か三日月宗近さん」
今剣「さにわ殿、こんにちはです」
綱吉「こんにちは、今剣君。琥珀、どうして2人が此所に……」
琥珀「刀を運んでくれたのかな」

 今剣は短刀を三日月は打刀・太刀を持っていた。



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