伝説の三振り
その日、綱吉は震えながら離れにた。
身体は包帯だらけで生気が余り無く今にも倒れそうだ。
綱吉「……もう嫌だ」
こんのすけ「主様、申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに……」
綱吉「こんのすけは悪く無いよ。誰も悪く無いんだ」
こんのすけ「しかし!あのクソ担当員がまともなら主様がこんな思いをしなくっても良い筈です!」
綱吉「……………」
綱吉は歪んだ笑みを浮かべる。
綱吉は少しずつ心を病み辛うじて意思を保っていた。
綱吉「…もう誰でもいいからから俺を楽にして欲しい」
こんのすけ「っつ…!」
こんのすけは顔を歪ませ綱吉に抱き付く。
するといきなり眩い光が綱吉がいる部屋を包み込み綱吉とこんのすけは驚き目を瞑る。
綱吉「っ…?!」
こんのすけ「っ…主様!」
光が収まり綱吉は目を開けると3振りの刀があり驚く。
綱吉「刀?何処から……」
こんのすけ「大太刀、太刀、打刀ですね。しかし見たことが無い物です」
綱吉「…何だか今まで見て来た刀剣男士達とは違う感じがする。暖かい感じがする」
綱吉は少し迷ったが打刀に手を伸ばす。
こんのすけは驚き綱吉を止めるが打刀は光り、桜の花弁が舞い顕現する。
琥珀「オレの名は大空琥珀。海空綱吉が唯一打った3振りの一つ打刀・神刀。宜しくね、主」
綱吉「えっ……」
こんのすけ「海空綱吉?聞いた事が無い刀匠です」
琥珀「……(あぁ、俺と同じ運命を辿った見たいだな。それに悪縁がかなり憑いてる)」
琥珀は腰に着いてる刀を抜き綱吉に向ける。
綱吉は顔を青ざめ怯え、こんのすけは驚き綱吉を守る為に前に出る。
綱吉「っ…!」
こんのすけ「何をなさる積もりですか!」
琥珀「うん、主に憑いてる悪縁をバッサリと切ろうかと思って」
綱吉「えっ……」
琥珀「オレは神刀だから悪縁の類いは全てを祓う力があるんだ。だから、主に憑いてる悪縁を祓う」
琥珀は刀を振り落とし悪縁を祓う。
綱吉は自分の身体を刀が通り驚き、こんのすけは驚き目を見開く。
琥珀「うん、コレで大丈夫だよ」
綱吉「刀が……」
こんのすけ「主様、大丈夫ですか!」
綱吉「斬られた筈なのにどうして……」
琥珀「オレの刀は人を斬る事は出来ない。だから、主に傷が無いんだ。驚かせてごめんね」
綱吉「……っ」
琥珀「主、お願いがあるんだけど、残りの2振りも顕現して欲しい、2振りはオレの兄達で絶対に主を守る為に力を貸してくれるから」
綱吉「…でも、俺は」
琥珀「大丈夫、オレも主を守るよ。どんな事があっても必ず守る」
琥珀は刀をしまい綱吉を優しく抱き締めてる。
綱吉は驚き身体を強張せ、琥珀は優しく背中を撫でる。
琥珀「今日まで良く頑張ったね、もう大丈夫。これからはオレがキミを守るよ。安心して、約束する。必ず全ての物から守るって約束する」
綱吉「っ…!」
綱吉は琥珀の背に腕を回し抱き付き、涙を流し叫ぶ。
綱吉「どうして!どうして俺がこんな目に合わないといけないの!俺はただ平凡に暮らしていたかっただけなんだ!」
琥珀「………………」
綱吉「それなのにリボーンが現れて、日常が少しずつズレて行って友達や仲間が出来たけど皆は俺自身を見て無かった!どうして、どうして、俺がこんな思いをしないといけないだよ!」
こんのすけ「っ……」
綱吉「もう嫌だ!俺はもう痛いのも悲しいのも嫌だ!
う……あ………………あぁ………う、うわあぁぁぁぁ―――――――――!」
琥珀「……これからはオレが守るよ。ずっとそばにいる」
綱吉はしばらく泣き続け眠ってしまった。
琥珀は真っ赤になった目元を優しく撫で敷いてあった布団に綱吉を寝かせる。
琥珀「…さて、何が聞きたいのかな?」
こんのすけ「……私は貴方様の事は知りません。しかもカンスト済、他の刀剣男士様達とは明らかに違う」
琥珀「そうだね、オレ達は本霊だよ」
こんのすけ「なっ…!」
琥珀「この子の心の奥底に眠る、願いで俺達は此所に来た。オレ達を作ったのは海空綱吉、彼の事は知ってるかな?」
こんのすけ「…海空綱吉、ハッ!あの伝説の刀匠。海空綱吉様ですか!」
琥珀「そうオレ達、3振りは彼が作った刀の中でも最高傑作だ。彼がたった一人の幼馴染の為に作った刀」
こんのすけ「……伝説の刀剣、大空琥珀様、黒羽様、霧人様ですか!」
琥珀「そう、まだ顕現されて無いけど兄さん達は主の事をとても気に入ってる。主の為に力を貸してくれるよ」
こんのすけ「っ…!どうかお願いします、主様を助けて下さいませ!」
琥珀「うん、約束するよ。必ず守る」
こんのすけ「ありがとうございます!」
こんのすけは泣き出し琥珀は優しく頭を撫でてあげる。
数時間後、綱吉は目を覚ます。
綱吉「……………」
琥珀「起きたかな?」
綱吉「…ンッ」
琥珀は優しく頭を撫で、綱吉を見詰める。
綱吉は意識がはっきりして頭を撫でられていた事に気付き、顔を赤くさせる。
綱吉「ふぁ!」
琥珀「ふふふっ、可愛いなぁ」
綱吉「っ……」
琥珀「起きたばかりなんだけど兄さん達を顕現して欲しいんだ」
綱吉「…はぃ、本当に俺で良いんですか?」
琥珀「勿論だよ、オレ達はキミが大好きなんだ。だから此所に来た」
綱吉「っ…大好き」
琥珀「うん、大好きだよ」
綱吉は俯き、しばらくして顔をあげて残っている2振りの刀を顕現する。
黒羽「僕は大空黒羽。守り刀だよ。決して折れたりはしない。あらゆる者からキミを守るよ。琥珀の兄だ」
霧人「僕は大空霧人です。海空綱吉が唯一打った妖刀です。あらゆる悪縁を呼び、相手を呪うのが得意です。可愛い、琥珀の兄です」
綱吉「……美形」
こんのすけ「確かにそうですね。今まで見て来た刀剣男士様達とは明らかに違う部類のイケメンです」
琥珀「向こうもオレ達の事は気付いている筈」
こんのすけ「そうですね…結界は張っていますが、レベルが高い刀剣男士様がいたら直ぐに結界は破れられます」
琥珀「主の体調か良くないのも原因の一つだね」
綱吉「……………」
こんのすけ「はぃ…」
琥珀「主は審神者になってどれくらい経つの?」
こんのすけ「2年になります」
琥珀「じゃあ、16歳くらい?」
綱吉「どうして俺が16歳って分かったの?」
琥珀「何となくかな(まぁ、大体は分かるんだよね)」
霧人「琥珀と同じくらいですね、ですが痩せすぎです」
琥珀「そうだね、手っ取り早くその傷治そうか」
綱吉「えっ……」
こんのすけ「そんな事が出来るんですか!」
琥珀「オレの神気を主に注ぎ、怪我を治す」
こんのすけ「っ、主様を人では無い者にするお積もりですか!」
琥珀「他の刀剣男士ならそうかも知れないけど俺は神気まで祓う力があるから怪我が治ったら神気を祓い、人に戻す事が出来るんだよ」
こんのすけ「誠ですか?」
黒羽「本当だよ、安心しな」
琥珀「主、手を」
綱吉「うん…」
琥珀は綱吉の手を握り、神気を送る。
綱吉は神気により身体が活性され、傷が治っていき、琥珀は全ての傷が治った事を確認して送った神気を祓い綱吉を人に戻す。
琥珀「コレで大丈夫だよ」
綱吉「凄い、傷が治ってる。跡も残って無い」
こんのすけ「良かったです、主様のお怪我が治って」
琥珀は気配を感じて扉を見る。
其処にはこんのすけと瓜二つの管狐がいた。
「審神者様、母家に来て刀剣男士様達に挨拶をして下さい」
こんのすけ「何度も言った筈です!主様は母家には行かないと!」
琥珀「…此所に来てどれくらいが経つ」
こんのすけ「まだ2日です、琥珀様」
琥珀「そう、そっちのこんのすけ。主はオレが連れて行くよ。だから先に母家に戻って」
「分かりました」
こんのすけ「琥珀様!」
管狐は部屋から出て行き、こんのすけは琥珀を睨んでいた。
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