みちのくの…
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サッチを囮にティーチを泳がせれば、案の定ヤミヤミの実を奪いに来た。
あとはフン縛って目論見を吐かせて裏切りが確定したところで始末した。
あの光を無くした黒曜石…
手折ったティーチを俺がこの手で葬りたかったと、上がる火柱を見ながら拳を握る。
らしくないと自分でも思うさ。
だけどそう思っちまうもんは仕方ない。
医務室を覗けばナースに綺麗にしてもらったメイが静かに寝ていた。
安らかなその寝顔にホッとする。
髪を梳けばふわふわで柔らかい指通り。
こいつの笑顔と同じだ。
そのまま手を滑らせて頬を撫でればくすぐったかったのか、少し身をよじらせた。
薄暗くて寒いところに長くいたんだ。
ゆっくり休ませてやりたいと思う一方で早く目を覚ませばいいと思う。
早くその目に俺を映せばいい…
「みちのくの…」
懐かしい言葉を思い出した。
今の俺にぴったりじゃないか。
眠り姫は口付けで目を覚ますんだったか。
身を屈めて小さな唇に触れてみる。
…寝込みを襲って何をやってるんだか。
これじゃあいつらと何も変わらない。
それでも欲しいと思った。
「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに…」
「……乱れそめにし…われならなくに…?」
すっと瞼が開き、その目に俺が映った。
「…マジで目が覚めるとは…」
「…………?」
「いや、こっちの話だ」
首を傾げるメイにそう言えば素直に頷く。
こうも素直だと逆に心配になる。
悪い大人に騙されるんじゃないか…
あぁ、その悪い大人が何を言うんだろう。
自嘲すればメイはまた首を傾げた。
「何でもねぇよ。ところで知ってたんだな。あの句」
「あ、はい。前に学校で暗記させられましたから…」
学校って事はメイは学者なんだろうか。
その疑問は一先ずわきに置いておき、手を差し出せば掴んで身体を起こした。
恐らく小柄なナースの服なんだろうが、それでもがぶかぶかで肩から服がずり落ちている。
襟口を摘まんで服を整えてやれば、メイは慌てて首元を両手で合わせた。
「はっ、お見苦しい姿をお見せしました…!」
「今更、だろ」
「あう…そうでしたね」
自棄になっていた事を恥じているのか、一瞬顔を伏せた。
それでもすぐに俺を真っ直ぐに見つめる。
あぁ、光が戻ってきたのか…
「こっちにも百人一首あるんですね」
「百人一首?」
「あれ?違うんですか?」
「昔の詩人が詠んだ句だ」
「そうなんですか…」
そこは一緒なんだ、つぶやいたメイはそう言えばと首を傾げた。
「どういう意味なんですか?」
「……は?」
「その句って百人一首っていう…んーと、とにかく百個覚えさせられたうちの一つなんです。百個覚えるのに精一杯で意味知らないんですよね」
「…まんまじゃねぇか」
「え…?」
「自分で調べるこったな」
「えぇ!?」
素直に教えるのは癪でそっぽを向けばメイは焦ったように俺の服を引っ張った。
それでも教えてやるつもりはないと態度で示せば諦めたようで、ぽすりとベッドに戻るとすぐにうとうととし出した。
手を伸ばして目元を覆ってやる。
「もう少し寝てろ」
「はい…。…イゾウさん…」
「ん?」
もう半分夢の中なのか、小さな声で呼ばれて口元に耳を寄せる。
「…私がここにいるということは…つまりは…」
「…あぁ。ティーチが裏切った」
「サッチさんは…」
「お前のお陰で生きてる」
「…よかっ…た…」
静かに繰り返す呼吸に夢の中に旅立った事がわかる。
目元から手を放すと、そこには満足そうな笑みを浮かべたメイがいた。
あとはフン縛って目論見を吐かせて裏切りが確定したところで始末した。
あの光を無くした黒曜石…
手折ったティーチを俺がこの手で葬りたかったと、上がる火柱を見ながら拳を握る。
らしくないと自分でも思うさ。
だけどそう思っちまうもんは仕方ない。
医務室を覗けばナースに綺麗にしてもらったメイが静かに寝ていた。
安らかなその寝顔にホッとする。
髪を梳けばふわふわで柔らかい指通り。
こいつの笑顔と同じだ。
そのまま手を滑らせて頬を撫でればくすぐったかったのか、少し身をよじらせた。
薄暗くて寒いところに長くいたんだ。
ゆっくり休ませてやりたいと思う一方で早く目を覚ませばいいと思う。
早くその目に俺を映せばいい…
「みちのくの…」
懐かしい言葉を思い出した。
今の俺にぴったりじゃないか。
眠り姫は口付けで目を覚ますんだったか。
身を屈めて小さな唇に触れてみる。
…寝込みを襲って何をやってるんだか。
これじゃあいつらと何も変わらない。
それでも欲しいと思った。
「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに…」
「……乱れそめにし…われならなくに…?」
すっと瞼が開き、その目に俺が映った。
「…マジで目が覚めるとは…」
「…………?」
「いや、こっちの話だ」
首を傾げるメイにそう言えば素直に頷く。
こうも素直だと逆に心配になる。
悪い大人に騙されるんじゃないか…
あぁ、その悪い大人が何を言うんだろう。
自嘲すればメイはまた首を傾げた。
「何でもねぇよ。ところで知ってたんだな。あの句」
「あ、はい。前に学校で暗記させられましたから…」
学校って事はメイは学者なんだろうか。
その疑問は一先ずわきに置いておき、手を差し出せば掴んで身体を起こした。
恐らく小柄なナースの服なんだろうが、それでもがぶかぶかで肩から服がずり落ちている。
襟口を摘まんで服を整えてやれば、メイは慌てて首元を両手で合わせた。
「はっ、お見苦しい姿をお見せしました…!」
「今更、だろ」
「あう…そうでしたね」
自棄になっていた事を恥じているのか、一瞬顔を伏せた。
それでもすぐに俺を真っ直ぐに見つめる。
あぁ、光が戻ってきたのか…
「こっちにも百人一首あるんですね」
「百人一首?」
「あれ?違うんですか?」
「昔の詩人が詠んだ句だ」
「そうなんですか…」
そこは一緒なんだ、つぶやいたメイはそう言えばと首を傾げた。
「どういう意味なんですか?」
「……は?」
「その句って百人一首っていう…んーと、とにかく百個覚えさせられたうちの一つなんです。百個覚えるのに精一杯で意味知らないんですよね」
「…まんまじゃねぇか」
「え…?」
「自分で調べるこったな」
「えぇ!?」
素直に教えるのは癪でそっぽを向けばメイは焦ったように俺の服を引っ張った。
それでも教えてやるつもりはないと態度で示せば諦めたようで、ぽすりとベッドに戻るとすぐにうとうととし出した。
手を伸ばして目元を覆ってやる。
「もう少し寝てろ」
「はい…。…イゾウさん…」
「ん?」
もう半分夢の中なのか、小さな声で呼ばれて口元に耳を寄せる。
「…私がここにいるということは…つまりは…」
「…あぁ。ティーチが裏切った」
「サッチさんは…」
「お前のお陰で生きてる」
「…よかっ…た…」
静かに繰り返す呼吸に夢の中に旅立った事がわかる。
目元から手を放すと、そこには満足そうな笑みを浮かべたメイがいた。