サッチ隊長の場合
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
駆けつけたエースにラクヨウを連れてきてもらい、その鎖で逃げられないよう捕縛しながら引き起こせばティーチの下敷きになっていた女がようやく姿を現す。
苦しかったのか、ぷはっと小さく息を吐き出した。
(生きてた…)
しかしもう虫の息。
あれだけ刺されて血を流したのだ。
今まだ生きている事が不思議なほどに…
朦朧としている女と視線がぶつかる。
その瞬間、女はにこっと笑った。
「……っ!」
何故この状況で笑える?
死にそうになっているのに何でこんなに綺麗に笑うんだ。
やるせなくて眉間にぐっと力を込める。
でないと情けない顔を晒しちまいそうで…
徐々に閉じられて行く瞼に、思わず女を抱き起こす。
「おい!しっかりしろ!!」
頬を軽く張るが、すでに意識は深く沈んでしまったようで、ぐったりと俺にもたれかかったままピクリとも動かない。
もう手遅れかもしれない。
そうは思っても思わずマルコを見上げた。
「先に医務室行け!俺もすぐ行く」
「……っ!!」
マルコがそう言うならまだ助かる見込みがある。
急いで血まみれの女を抱きかかえて医務室のある階へ急ぐ。
傷に障らないよう気をつけなければならないのがもどかしい。
「ナース!誰かいるか!!」
廊下から叫べばいくつかある医務室からダイヤが顔を出す。
「サッチ隊長?どうし……ッ!?早くこっちへ!」
俺の腕の中でぐったりしている女を見て状況をすぐに察してくれたようだ。
大きく開けられたドアをくぐり、ベッドへ降ろせばダイヤが準備していたハサミでブラウスを手早く切っていく。
服を取り去り応急処置を、と思ったところで…
「……あら?」
「んんん!?」
ダイヤも俺も思わず変な声がでた。
現れた白い素肌。
そこには何もなかった。
これだけブラウスが穴だらけの血まみれなのに。
あれだけ刺されていたはずの腹も背中も脇腹も、傷一つない綺麗なもんだった。
「サッチ隊長、これはいったい…?」
「いや…俺にもさっぱり…」
それでも青白い顔色をしているから、血は大量に流れていたはずなのだ。
念のために輸血をするのに、女の血液型を調べるべく注射器で血液を少量抜く。
すると再びダイヤが変な声を出す。
「ええええ!?」
「何だ!?どうした!?」
そばに寄って手元を覗きこんでみるも、何で驚いているのかさっぱりわからない。
「サッチ隊長…この子、何ですか?」
「…それは俺が聞きてぇよ」
突然現れた、どこのどいつかも知らない女。
どういうわけか、俺を助けてくれた。
軽く経緯を説明すれば、ダイヤは難しい顔でこの女の状況を教えてくれる。
「彼女、血液型が何にも一致しないんです」
「それはつまり…?」
「人間にも動物にも当てはまらない、全く見たことない血液型なんです」
「んんん!?」
怪我が消えた事についてはうちにもマルコやエースといった能力者がいるから、驚いたもののさしてあり得ない話じゃない。
だけど血液型が違うというのはどういうことなのか。
顔色は悪いものの、それでもすやすやと眠る女。
呼吸は落ち着いているようだし、傷口もふさがっているからこれ以上出血することはないから、その点では安心だという。
「サッチ隊長…どうしましょう?」
「どうするもこうするも…」
ひとまず安心と言われても、素性もわからない女。
命を助けてもらった事は間違いが、オヤジを狙ってやってきた敵の可能性が0ではない限り、警戒しておくことにこしたことはない。
「…とりあえず海楼石の錠を持ってくるわ」
「サッチ隊長……、…はい、お願いします」
ダイヤも何か言いたそうにしていたが、考えは俺と同じ所に落ち着いたのだろう。
いったん医務室を出て物置から海楼石の錠を持って帰ってくるも、当たり前だが女は目を閉じたまま。
ブラウスも下着も使い物にならなくなってしまったから上半身は何も着ておらず、その白い体を隠す為に胸元まで布団がかけてある。
仕方ないとはいえさっきバッチリ見てしまった女の体は華奢を通り越し、ろくに物を食えていないのかと思う程にやせ細っていた。
こんな体でオヤジを襲えるはずがない…
そう思いながらも今にも折れちまいそうな程細い首にかちり、と錠をはめる。
すると女はわずかに眉をひそめた。
「ん…っ…」
さっき盛大に叫んでたせいもあるのか、少しかすれた声がもれる。
やっぱり能力者なんだろうか?
それにしても…
上半身だけとはいえ裸体に首に拘束具。
苦しそうな顔に声…
…一体どんなプレイだ。
しかもエースよりも遥かに年下だろう、幼さがだいぶ残っていた。
…なんだかこう、とぉってもイケナイ事をしている気分になる。
(……いやいやいや)
こんな時に何を考えているんだ。
頭を振り、変な考えを頭の隅に追いやる。
ダイヤがため息をついたのは気のせいではないだろう。
ジトッと目を向けられる。
「ははは…」
「まったくもう!」
ダイヤが女に布団を首元までかける。
血の気のないその顔に触れてみればひやりとしていて、本当に生きているのかと不安になる。
それでもわずかに上下する布団に、しっかりと呼吸をしているのが見てとれて思わず息が漏れた。
「ダイヤ、ここ任せてもいいか?」
「えぇもちろん。見ておくわ」
まずは…オヤジに報告しなくては。
医務室から出てそのままオヤジの部屋へと向かえばマルコが走ってくるのが見えた。
おそらく指示を飛ばして急いで来てくれてたんだろう。
先程までの焦りが消えた俺を見るなりマルコは怪訝そうな顔をする。
「サッチ…?」
「あー、うん。なんか……大丈夫っぽい?」
「……は?」
うん。だよな。
そういう反応するだろうって思ってたさ。
「詳しい話はオヤジと一緒に聞いてくれないか?ティーチもどうなったか気になるし…」
オヤジの部屋からはティーチの始末方法について話し合われている声が聞こえてきた。
そっとドアを開けるとオヤジと目が合う。
つらそうな顔をするオヤジの顔に、今さらティーチへの怒りがこみ上げてくる。
…その怒りは果たしてオヤジ一人の為のものだったか?
ふと先ほどの大きな瞳を思い出すが、ぐっと眉を寄せて怒りと戸惑いを押し殺す。
「どうするエース」
「火拳で焼き殺す」
「万が一助かったらどうする」
マルコとエースの会話に割って入る。
「体に余すことなく爆弾くくりつけりゃいいんじゃね?」
それを火拳で焼いたらいくらティーチでも無事ではいられないだろう。
しかしラクヨウはそれでも不安だという。
「…いっそ内側から」
その言葉に一同が顔を見合わせる。
火薬は武器庫にストックがたんまりあったはずだ。
「「「「よし、火薬詰め込むか」」」」
先ほどまで目をぎらつかせ野心を滾らせていた様子からうって変わって、ティーチはさっと顔を青くする。
冗談だろ、とかこんな所で、とかブツブツ言っていたが、白ひげ海賊団の鉄の掟を忘れたわけではないだろう。
その証拠に脂汗が先ほどから止まらない。
ほんの数刻前まで、気心知れた親友だと思っていた。
実際ティーチとはかなり仲が良かった。
それでもその関係はティーチの偽りの上に成り立っていたものだったのだ。
馬鹿みてぇだ…
エースとラクヨウがティーチを連れてオヤジの部屋を出ていく。
残ったのはオヤジと俺、そしてマルコだ。
「それでサッチ、さっきの女が大丈夫ってのはどういう事だよい?」
マルコが先を促せばオヤジもスッと目を細めて俺の言葉の続きを待つ。
「傷がな?なかったんだ」
「どういうことだ、お前のその服はあの女の返り血だろうが」
「あぁ、でも無くなってた。今念のため海楼石の錠をつけてある」
俺の白い服についた血の量を見れば、普通ならばヤバい状態だと思う。
あれだけナイフで刺されていたのだ。
その傷が無くなっているというのは能力者以外に考えられない。
先ほど医務室でダイヤから聞いた話も含めて説明すると、オヤジは何か考え込むように髭を指先でいじる。
「もしかしたら…とんでもねぇ奴が迷い込んじまったかもしれねェな」
思うところがあるのか、どこか遠くを見ながらもその目は鋭い。
「オヤジ?」
「まだ憶測の域だが…下手したら世界が大きく動くかもしれねぇぞ」
「「……ッ!!?」」
マルコと顔を見合わせる。
「それはあの女が…ヤベェっていうのかよい?」
「いや…そいつが落ち着く先によって、だな」
何にせよあの女から話を聞いてみないと判断できないという。
全てはあの女が目を覚ましたら…
「サッチ、その女の様子見ててくれねぇか」
「…わかった」
時間がある時は極力見ているようにしよう。
そう思い立ち上がれば、オヤジに呼びとめられる。
「…サッチ」
「んー?」
「お前が無事でよかった」
「……っ!!」
グッ、とこみ上げるものを歯を食いしばってこらえる。
別に死ぬことが怖いとは思わない。
けれどもオヤジを海賊王にしてやりたいし、その姿も見たい。
兄弟とバカ騒ぎもまだまだしていたいし、美味しいものも作ってやりたい。
とにかく未練がありまくりなのだ。
ちょっとの油断で俺はもしかしたらこの場にいなかったかもしれない。
あの女があの瞬間に現れなかったら…
「オヤジ…」
「何だ」
「俺、あいつに助けられたんだ…だから…」
「あぁ…大事な息子の命の恩人だ。オメェの思うようにしろ」
あの女が…彼女が何であれ、何かあったら今度は俺が助けてやりたい…
何故かそう思うんだ。
よく知らない奴なのにそう思うのは恩もある。
けれども多分…
俺に見せたあの綺麗な笑顔がなんだか帰る場所をなくした迷子のように見えちまったからだと思う。
苦しかったのか、ぷはっと小さく息を吐き出した。
(生きてた…)
しかしもう虫の息。
あれだけ刺されて血を流したのだ。
今まだ生きている事が不思議なほどに…
朦朧としている女と視線がぶつかる。
その瞬間、女はにこっと笑った。
「……っ!」
何故この状況で笑える?
死にそうになっているのに何でこんなに綺麗に笑うんだ。
やるせなくて眉間にぐっと力を込める。
でないと情けない顔を晒しちまいそうで…
徐々に閉じられて行く瞼に、思わず女を抱き起こす。
「おい!しっかりしろ!!」
頬を軽く張るが、すでに意識は深く沈んでしまったようで、ぐったりと俺にもたれかかったままピクリとも動かない。
もう手遅れかもしれない。
そうは思っても思わずマルコを見上げた。
「先に医務室行け!俺もすぐ行く」
「……っ!!」
マルコがそう言うならまだ助かる見込みがある。
急いで血まみれの女を抱きかかえて医務室のある階へ急ぐ。
傷に障らないよう気をつけなければならないのがもどかしい。
「ナース!誰かいるか!!」
廊下から叫べばいくつかある医務室からダイヤが顔を出す。
「サッチ隊長?どうし……ッ!?早くこっちへ!」
俺の腕の中でぐったりしている女を見て状況をすぐに察してくれたようだ。
大きく開けられたドアをくぐり、ベッドへ降ろせばダイヤが準備していたハサミでブラウスを手早く切っていく。
服を取り去り応急処置を、と思ったところで…
「……あら?」
「んんん!?」
ダイヤも俺も思わず変な声がでた。
現れた白い素肌。
そこには何もなかった。
これだけブラウスが穴だらけの血まみれなのに。
あれだけ刺されていたはずの腹も背中も脇腹も、傷一つない綺麗なもんだった。
「サッチ隊長、これはいったい…?」
「いや…俺にもさっぱり…」
それでも青白い顔色をしているから、血は大量に流れていたはずなのだ。
念のために輸血をするのに、女の血液型を調べるべく注射器で血液を少量抜く。
すると再びダイヤが変な声を出す。
「ええええ!?」
「何だ!?どうした!?」
そばに寄って手元を覗きこんでみるも、何で驚いているのかさっぱりわからない。
「サッチ隊長…この子、何ですか?」
「…それは俺が聞きてぇよ」
突然現れた、どこのどいつかも知らない女。
どういうわけか、俺を助けてくれた。
軽く経緯を説明すれば、ダイヤは難しい顔でこの女の状況を教えてくれる。
「彼女、血液型が何にも一致しないんです」
「それはつまり…?」
「人間にも動物にも当てはまらない、全く見たことない血液型なんです」
「んんん!?」
怪我が消えた事についてはうちにもマルコやエースといった能力者がいるから、驚いたもののさしてあり得ない話じゃない。
だけど血液型が違うというのはどういうことなのか。
顔色は悪いものの、それでもすやすやと眠る女。
呼吸は落ち着いているようだし、傷口もふさがっているからこれ以上出血することはないから、その点では安心だという。
「サッチ隊長…どうしましょう?」
「どうするもこうするも…」
ひとまず安心と言われても、素性もわからない女。
命を助けてもらった事は間違いが、オヤジを狙ってやってきた敵の可能性が0ではない限り、警戒しておくことにこしたことはない。
「…とりあえず海楼石の錠を持ってくるわ」
「サッチ隊長……、…はい、お願いします」
ダイヤも何か言いたそうにしていたが、考えは俺と同じ所に落ち着いたのだろう。
いったん医務室を出て物置から海楼石の錠を持って帰ってくるも、当たり前だが女は目を閉じたまま。
ブラウスも下着も使い物にならなくなってしまったから上半身は何も着ておらず、その白い体を隠す為に胸元まで布団がかけてある。
仕方ないとはいえさっきバッチリ見てしまった女の体は華奢を通り越し、ろくに物を食えていないのかと思う程にやせ細っていた。
こんな体でオヤジを襲えるはずがない…
そう思いながらも今にも折れちまいそうな程細い首にかちり、と錠をはめる。
すると女はわずかに眉をひそめた。
「ん…っ…」
さっき盛大に叫んでたせいもあるのか、少しかすれた声がもれる。
やっぱり能力者なんだろうか?
それにしても…
上半身だけとはいえ裸体に首に拘束具。
苦しそうな顔に声…
…一体どんなプレイだ。
しかもエースよりも遥かに年下だろう、幼さがだいぶ残っていた。
…なんだかこう、とぉってもイケナイ事をしている気分になる。
(……いやいやいや)
こんな時に何を考えているんだ。
頭を振り、変な考えを頭の隅に追いやる。
ダイヤがため息をついたのは気のせいではないだろう。
ジトッと目を向けられる。
「ははは…」
「まったくもう!」
ダイヤが女に布団を首元までかける。
血の気のないその顔に触れてみればひやりとしていて、本当に生きているのかと不安になる。
それでもわずかに上下する布団に、しっかりと呼吸をしているのが見てとれて思わず息が漏れた。
「ダイヤ、ここ任せてもいいか?」
「えぇもちろん。見ておくわ」
まずは…オヤジに報告しなくては。
医務室から出てそのままオヤジの部屋へと向かえばマルコが走ってくるのが見えた。
おそらく指示を飛ばして急いで来てくれてたんだろう。
先程までの焦りが消えた俺を見るなりマルコは怪訝そうな顔をする。
「サッチ…?」
「あー、うん。なんか……大丈夫っぽい?」
「……は?」
うん。だよな。
そういう反応するだろうって思ってたさ。
「詳しい話はオヤジと一緒に聞いてくれないか?ティーチもどうなったか気になるし…」
オヤジの部屋からはティーチの始末方法について話し合われている声が聞こえてきた。
そっとドアを開けるとオヤジと目が合う。
つらそうな顔をするオヤジの顔に、今さらティーチへの怒りがこみ上げてくる。
…その怒りは果たしてオヤジ一人の為のものだったか?
ふと先ほどの大きな瞳を思い出すが、ぐっと眉を寄せて怒りと戸惑いを押し殺す。
「どうするエース」
「火拳で焼き殺す」
「万が一助かったらどうする」
マルコとエースの会話に割って入る。
「体に余すことなく爆弾くくりつけりゃいいんじゃね?」
それを火拳で焼いたらいくらティーチでも無事ではいられないだろう。
しかしラクヨウはそれでも不安だという。
「…いっそ内側から」
その言葉に一同が顔を見合わせる。
火薬は武器庫にストックがたんまりあったはずだ。
「「「「よし、火薬詰め込むか」」」」
先ほどまで目をぎらつかせ野心を滾らせていた様子からうって変わって、ティーチはさっと顔を青くする。
冗談だろ、とかこんな所で、とかブツブツ言っていたが、白ひげ海賊団の鉄の掟を忘れたわけではないだろう。
その証拠に脂汗が先ほどから止まらない。
ほんの数刻前まで、気心知れた親友だと思っていた。
実際ティーチとはかなり仲が良かった。
それでもその関係はティーチの偽りの上に成り立っていたものだったのだ。
馬鹿みてぇだ…
エースとラクヨウがティーチを連れてオヤジの部屋を出ていく。
残ったのはオヤジと俺、そしてマルコだ。
「それでサッチ、さっきの女が大丈夫ってのはどういう事だよい?」
マルコが先を促せばオヤジもスッと目を細めて俺の言葉の続きを待つ。
「傷がな?なかったんだ」
「どういうことだ、お前のその服はあの女の返り血だろうが」
「あぁ、でも無くなってた。今念のため海楼石の錠をつけてある」
俺の白い服についた血の量を見れば、普通ならばヤバい状態だと思う。
あれだけナイフで刺されていたのだ。
その傷が無くなっているというのは能力者以外に考えられない。
先ほど医務室でダイヤから聞いた話も含めて説明すると、オヤジは何か考え込むように髭を指先でいじる。
「もしかしたら…とんでもねぇ奴が迷い込んじまったかもしれねェな」
思うところがあるのか、どこか遠くを見ながらもその目は鋭い。
「オヤジ?」
「まだ憶測の域だが…下手したら世界が大きく動くかもしれねぇぞ」
「「……ッ!!?」」
マルコと顔を見合わせる。
「それはあの女が…ヤベェっていうのかよい?」
「いや…そいつが落ち着く先によって、だな」
何にせよあの女から話を聞いてみないと判断できないという。
全てはあの女が目を覚ましたら…
「サッチ、その女の様子見ててくれねぇか」
「…わかった」
時間がある時は極力見ているようにしよう。
そう思い立ち上がれば、オヤジに呼びとめられる。
「…サッチ」
「んー?」
「お前が無事でよかった」
「……っ!!」
グッ、とこみ上げるものを歯を食いしばってこらえる。
別に死ぬことが怖いとは思わない。
けれどもオヤジを海賊王にしてやりたいし、その姿も見たい。
兄弟とバカ騒ぎもまだまだしていたいし、美味しいものも作ってやりたい。
とにかく未練がありまくりなのだ。
ちょっとの油断で俺はもしかしたらこの場にいなかったかもしれない。
あの女があの瞬間に現れなかったら…
「オヤジ…」
「何だ」
「俺、あいつに助けられたんだ…だから…」
「あぁ…大事な息子の命の恩人だ。オメェの思うようにしろ」
あの女が…彼女が何であれ、何かあったら今度は俺が助けてやりたい…
何故かそう思うんだ。
よく知らない奴なのにそう思うのは恩もある。
けれども多分…
俺に見せたあの綺麗な笑顔がなんだか帰る場所をなくした迷子のように見えちまったからだと思う。
2/2ページ