エース隊長のお部屋
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「メイー!」
洗濯物を干し終えてカゴを抱えているとどこからかエース隊長に呼ばれた。
キョロキョロとしていると、今しがた干し終えたシーツ群の影からエース隊長がひょっこり顔を覗かせた。
「はいはいなんでしょうかエース隊長」
「あのよ、不思議…」
「失礼しまーす」
エース隊長の言葉の途中で私はさっさとその場を離れる為にエース隊長に背中を向けた。
それなのにエース隊長ときたら私の頭を鷲掴みにしてくれやがる。
「いだだだだだ!!!」
「まぁ聞けって」
「どうせまた飴ちゃん寄越せって言うんでしょう?あげませんよ!」
「ちげぇよ」
「……?」
予想した言葉とは別の答えが返ってきて思わずエース隊長を振り返る。
エース隊長は私が持っていたカゴを取り上げると船内へと足を向けた。
多分カゴを置きにリネン室へと向かうんだろう。
私も後に続く。
「メイって不思議飴舐めたことあるのか?」
「ありませんよ」
「舐めろよ」
「嫌ですよ。何が起きるかわからないのになんで舐めなきゃいけないんですか」
「バカだなぁメイ。何が起きるかわかんねぇから面白いんじゃねぇか」
「…つまりは暇つぶしに付き合えと、そう解釈しても?」
「おう」
私はエース隊長からカゴを奪い返すとさっさと歩き出す。
まぁ、足の長いエース隊長はすぐに追い越して後ろ歩きしながら私の顔を覗き込む様にして歩くんだけど。
「アラバスタで賞金首にされた恨み、忘れてませんからね?」
もうどこかに強制的にどこかに飛ばされるのはゴメンだ。
するとエース隊長は爽やかすぎる笑顔を私に見せた。
「……エース隊長」
「ん?」
「その笑顔と手に持ってる物、一致しないんですけど」
「そうか?」
首を傾げながらじゃらり、と手に持ってる物を持ち上げて見せる。
それは少し長めのだいぶ頑丈そうな鎖だった。
その片側には手錠が、そしてもう片側には首輪がついている。
「エース隊長…私でもさすがにそういう趣味は…」
そう言えばエース隊長はもの凄くびっくりした顔をした。
どういう意味!?
「だってお前、ラクヨウに締め上げろって頼み込ん…」
「忘れてください」
「そりゃ無理だ」
言った本人忘れてたのになんでその時船にいなかったエース隊長が覚えているんだ。
恨みがましく睨みつけると全く堪えていないらしく、エース隊長は私の頭をかき混ぜた。
「これで俺とお前繋いでたらどっか飛ばされても一人じゃねぇだろ?」
言いながらエース隊長は早速私の首にガチャリと首輪をつけた。
「…………」
「…………」
「エース隊長」
「うん、ゴメン」
なんで廊下で変態プレイみたいな事しなきゃいけないんだ。
エース隊長もようやく気がついたらしく、凄く渋い顔をしていた。
でもすぐにまぁいいか、と切り替えて自分の腕にも手錠をかけた。
「これで準備バッチリだ」
「バッチリだ、じゃないですよ。舐めませんからね?」
繋がれたままリネン室の扉をくぐる。
中で残っている作業をしていたお兄ちゃんたちがこちらを見て一瞬ギョッとしていたけど、すぐにどこか納得したという様に二度三度頷き作業に戻る。
うわーん!
みんなしてどういう意味だよー!!
「エース、メイと遊ぶなら他所でやれよ。邪魔だから」
「おう」
「メイももういいぞ。エースにたーんと遊んでもらえ」
「…………」
助け船は0、か。
とりあえず二人でリネン室を後にした。
「ほら、メイさっさと舐めろって」
「いーやーでーすー」
「この鎖が有る限り逃げらんねぇぞ?」
「逃げ出す方法ならいっぱいありますよ」
「俺がにがすとでも?」
「…………」
怪しく光るエース隊長の目が逃がさない、と言っている。
もーやだ!!
「ほらメイ早くしろって」
「いーやー!」
「我儘言ってると…無理矢理ヤるぞ」
「我儘言ってるのはどっちで……ん?」
「ん?」
あれ、気のせいかな。
今不穏な事言われた気がしたんだけど。
首を傾げていると痺れを切らしたエース隊長が鎖を手繰り寄せて私を捕まえた。
「ほら…早く出しな」
「……ッ!!わかりましたっ!わかりましたから離してくださぁぁぁい!!」
ついでに耳元で囁かないでください!
本気で身の危険を感じて私はバッグから慌てて飴ちゃんを一つ取り出して口に放り込んだ。
「あ、意外に美味しい」
「ブドウ味か?」
「いえ、これはオレンジ…はッ!」
味が違うとわかるとエース隊長はそうかそうかと楽しそうに笑う。
「いろんな味があるんだな」
「もうあげませんよ」
「どうだろな」
次からは速攻でマルコ隊長の部屋に逃げ込んでやる!
コロコロと口の中で飴ちゃんを転がすも、一向に何かがおきる気配がない。
「ハズレだったかな?」
「まだわかんねぇぞ。口の中から消えてからだからな」
「そうなんですか?」
「おう」
それならばとコロコロ転がす事を辞めてほっぺに入れる。
そうすればエース隊長に片手でムニっと両頬を掴まれた。
「早く舐めろ」
「ふぁい」
チッ、ダメか。
またコロコロと飴ちゃんを口の中で転がす。
まさか飴玉舐めるだけなのにこんなに緊張する日が来るとは思わなかった。
「エース隊長…」
「ん?」
「またどこか行っちゃっても、守ってくれますか?」
「当たり前だろ?安心しとけって」
クシャクシャと頭を撫でられて、少しドキドキが収まる。
そうこうしているうちに口の中から飴ちゃんは消えて行き…
ボンッ!!
「ニャーーー!!?」
変な爆発音と辺りに白い煙が立ち込める。
急に身動きが取りにくくなって、一生懸命もがいた。
「にゃ、に、に、…………にゃ?」
なんで口から出る音がにゃーにゃーにゃー?
ようやく顔がもぞもぞの中から這い出せて視界が開けた。
目の前には何故かエース隊長の黒いブーツ。
そこから徐々に上を見上げるも、なかなかエース隊長の顔まで辿りつかない。
「あはははははは!!!」
「に!?」
エース隊長は大爆笑しながら私の首根っこを持ち上げた。
そうすれば私はぶらーんと吊るされる形になるわけで…
「可愛いぜ?メイ」
「にゃ?」
にゃ?
「にゃー」
エース隊長。
「おう」
「にゃーにゃーにゃーにゃー」
もしかしなくても私、猫になりましたね?
「あぁ、猫だ」
手のひらに乗せられて頭を撫でられる。
あ、そこ気持ちいいです。
思わずゴロゴロと喉がなる。
「…………ニャッ、にゃーーー!!!」
って、ちっがぁぁぁう!!!
「うおっ、暴れんなよ落るぞ?」
猫になっちゃったんですよ!?
猫に!!
しかも手のひらサイズの子猫ですか!!?
展開がベタ過ぎんだよぉぉぉおおお!!!
「面白いからこのままオヤジんところ行こうぜ」
面白くなぁぁぁい!
うわーん!!
スタスタと歩きだしたエース隊長。
服!
私の抜け殻回収してください!!
「暴れんなって」
そう言いながらエース隊長は両手で私を包んだ。
…あ、あったかい。
思わずうとうとしちゃう。
だけど次の瞬間にはバーン!とオヤジ様の部屋の扉が開かれた。
「オヤジー!これ見てくれよ!」
「どうしたァ、エース?」
オヤジ様に駆け寄るエース隊長。
流れる景色の片隅に黄色が見えた。
「にゃぁぁぁん!!」
マルコ隊長ぉぉぉ!!
私はエース隊長の手の中から飛び降りて、マルコ隊長に駆け寄った。
「あっ、オイ!!」
「……猫?エース、どっから猫なんて連れてきたんだよい」
「にゃーにゃーにゃー!!」
マルコ隊長の足に飛びついてヨジヨジとよじ登る。
途中でくすぐったそうに身をよじりながらマルコ隊長は私の首根っこをつまみ上げて目線を合わせてくれた。
「にゃー、にゃにゃー!」
「んー?何言ってるかわかんねぇよい」
あ、特に何も言ってません。
にゃーにゃー言ってみただけです。
「マルコ、それメイなんだ」
「は?メイ?」
「にゃーにゃーにゃー」
マルコ隊長、服を回収してください!
「は?服?」
「にゃーにゃー、にゅ、にゃーん」
リネン室前に私の抜け殻とバッグが…!
「そりゃヤベェな。オヤジ、ちょっと行ってくるよい!」
そう言いながらマルコ隊長は立ち上がり、急いでリネン室前まで向かってくれた。
幸いにも抜け殻はそのまま放置された状態で、誰にも飴ちゃんが取られたという形跡はなかった。
「にゃ、にゃーん!にーにーにー!!」
あ、服畳まなくていいですから、私の部屋に放り込んでください!
下着とか恥ずかしいからやめてぇぇぇーー!!
「あーよいよい」
マルコ隊長は途中で畳むのをやめて、服とバッグを掴むとまずは私の部屋に向かってくれた。
服をベッドの上に置いてくれて、これでいいか?と聞いてくれる。
お気遣いありがとうございます。
オヤジ様の部屋に戻る道中、大まかな説明をすればマルコ隊長は深ぁいため息をついた。
「エースも凝りねぇな。今度はどうしてやろうか…」
「にー」
いや、もう過ぎた事ですから何もしなくてもいいです。
そう言えばマルコ隊長は喉を撫でた。
あー、すっごく気持ちいいー…
自然とゴロゴロ鳴る喉は仕方ないと思うんですよね。
「本当に猫だねぃ」
「に」
猫です。
オヤジ様の部屋に戻ると何故か隊長さんたちが勢ぞろい。
え、私を見に来たとかどんだけ皆さん暇なんですか。
そう言えば、エース隊長とマルコ隊長が笑った。
「お前を愛でに来たんだからそう言ってやるなよい」
「え、マルコ今の何て言ったかわかんのか?」
サッチ隊長が首を傾げた事に私も首を傾げる。
途端に緩むこの場の空気。
え、何?
サッチ隊長が手のひらを私の目の前に向けたから、ひっかかないようにそっとてに乗ってみる。
「あー、俺猫あんま好きじゃねぇんだけどこりゃヤベェな。可愛い過ぎだ」
「にー?」
え、猫嫌いなんですか?
首を傾げるとサッチ隊長の顔がさらに緩んだ。
「何言ってるかわかんねぇけど可愛いー」
「に、に、にゃー」
肉球やめてぇぇぇーーー!!
プニプニとされる肉球。
なんか嫌だぁぁぁ!!
「にゃーにゃーにゃー!」
やめろよフランスパン!
サッチ隊長はよくわかんねぇ、とまだムニムニしている。
私の言葉が通じるエース隊長とマルコ隊長が盛大に吹き出した。
「にゃー」
内緒でお願いします。
「OKOK」
エース隊長がムニムニ地獄から助け出してくれた。
あーぞわぞわした。
ひっかかなかった私を誰か褒めてほしい。
するとオヤジ様が楽しそうにグラララと大笑いした。
「エース、こうなった責任としてちゃんとメイの面倒みてやれよ」
「やりぃ!」
あれ?
責任ってオヤジ様言ったよね?
エース隊長喜んでるけど?
散々隊長さんたちに愛でられた後、エース隊長と甲板で追いかけっこしたり、お昼寝したり、案外猫ライフを満喫してしまった。
うん、超楽しかった。
エース隊長遊び上手だ。
今もエース隊長のテンガロンハットの紐を使って猫じゃらしして遊んでいる。
ああああ捕まえられない!
くっそー!
「にっ!」
「うお!?」
思わずエース隊長の手を引っ掻いてしまった。
すると引っ掻いた場所から上がる炎。
「に!?ニャァァァァァァ!!?」
「メイ!?」
燃え移った!!
私燃えてるファイヤァァァアアア!!
「おい、大丈夫か!?」
「に…」
「…お前、随分皮っぽくなっちまったぞ」
oh…スフィンクス…
どうやら猫になっても能力は健在のようで、すぐに毛が生えてきた。
良かった良かった。
「随分汚れちまったから風呂行くか」
「…にゃ?」
はい?
私を手のひらに乗せるとスタスタと風呂場に向かうエース隊長。
え、まだ男湯の時間だけど!?
私を床に降ろすとさっさとズボンを脱ぎ全裸になったエース隊長。
ああああもう立派なものお持ちですね!!
「にゃー!にゃーにゃーにゃー!!」
エース隊長!せめて前、隠してください!!
「んー?ほら、行くぞ」
聞いちゃいねぇ。
手の中で泡だらけにされて、あちこちゴロゴロ撫でられる。
いやだもーエース隊長のテクニシャン!
「気持ちいいか?」
「に」
「そりゃ良かった」
あんまり気持ちよすぎて眠くなってくる。
あー…おちる…
そう思った瞬間。
ボンッ!!
「…………」
「…………」
「おかえり」
「ただいま戻りました」
人間によぉぉぉおおお!!
泡だらけとはいえ、全裸でエース隊長の足の上に座るようにして元の姿に戻ってしまった私。
そりゃもう手のひらに収まりませんよねーーー!!
慌ててどけようとするのにエース隊長に腕を掴まれた。
なんですかもー!!
するとエース隊長がふと真剣な顔をするから思わず動きを止める。
そしてエース隊長は私にこう言いやがった。
「お前、相変わらず胸ねぇのな。俺の上に乗ってるクセに、俺反応しねぇわ」
「知らんわぁぁぁあああ!!」
「どわぁっ!!?」
エース隊長の腕を掴んで一本背負いをおみまいした。
誰かが一本!なんて言っていたけど今はそれどころじゃない。
シャワーで泡を流し、水は止めずにエース隊長にかかるようにしてから慌てて風呂場を後にした。
「うお!?メイ!!?」
「はっ!ジョズ隊長!」
私が何か言う前にジョズ隊長は大きな大きなバスタオルで私の体を包んでくれた。
「ありがとうございますジョズ隊長…」
「なんだ、もう元に戻ったのか」
「そんな残念そうに言わないでください」
ぶー、とむくれると、ジョズ隊長は今だ私を猫と勘違いしているのか顎の下を撫でてきた。
「くすぐったいですよ」
「そうか?でも…」
「随分気持ちよさそうにしてるぜ?」
耳元で囁かれてぞわりと背中が粟立った。
「おうエース」
「…………」
片手を上げるジョズ隊長に私はギギギと後ろを振り向く。
そこには私のせいでびしょ濡れのエース隊長がすごーく怖い顔をしながら立っていた。
「お早いお上がりで」
「そういうメイはあったまってねぇんじゃねぇか?」
「いいえ、だいぶ温まりました」
「ガタガタ震えてるじゃねぇか」
そりゃあなたが怖いからですよ…!!
それなのにジョズ隊長は新しいバスタオルを取りに行くためか、着替えをカゴに入れると背中を向けた。
た…助けて!!
「痴話喧嘩も大概になー」
「どこをどう見たらそう…むぐ!!」
「おう」
私の口をその大きな手で覆うと、ジョズ隊長にひらひらと手を振って見せたエース隊長。
そしてジョズ隊長の姿が見えなくなると、グキッと私の顔を無理やり上を向けさせた。
そして顔が近づいてきたと思ったら…
「みぎゃーーーーっ!!!」
ジョズ隊長が撫でてたそこにチクっとした痛みを感じて思わず変な声をあげた。
するとエース隊長は唇をそこにつけたまま、おかしそうにクスクス笑う。
「なんだ、鳴き声猫のまんまじゃねぇか」
「ぞ…ゾワゾワします!もう勘弁してくださぁぁぁい!!」
エース隊長はいじめっ子だ。
私が本気で泣き出すまで私が嫌がるところを見つけてはくすぐってきた。
「もっ…もうやだぁぁぁ!うわーん!!」
「わ…悪かったって、だからもう泣くなよ」
「びぇぇぇん!!」
(((何処か行ってくれないかなぁ)))
その日のぼせるお兄ちゃん達が続出して、医務室に担ぎ込まれて、その処置に追われたお姉ちゃん達にエース隊長と二人でしこたま怒られたのはまた別の話。
今日はなんだか超疲れた…
もう二度と不思議飴舐めない!!
そう心に固く誓いながらその日は眠りについた。
夢でまた猫になり、エース隊長に追いかけ回されたのは言うまでもない。
洗濯物を干し終えてカゴを抱えているとどこからかエース隊長に呼ばれた。
キョロキョロとしていると、今しがた干し終えたシーツ群の影からエース隊長がひょっこり顔を覗かせた。
「はいはいなんでしょうかエース隊長」
「あのよ、不思議…」
「失礼しまーす」
エース隊長の言葉の途中で私はさっさとその場を離れる為にエース隊長に背中を向けた。
それなのにエース隊長ときたら私の頭を鷲掴みにしてくれやがる。
「いだだだだだ!!!」
「まぁ聞けって」
「どうせまた飴ちゃん寄越せって言うんでしょう?あげませんよ!」
「ちげぇよ」
「……?」
予想した言葉とは別の答えが返ってきて思わずエース隊長を振り返る。
エース隊長は私が持っていたカゴを取り上げると船内へと足を向けた。
多分カゴを置きにリネン室へと向かうんだろう。
私も後に続く。
「メイって不思議飴舐めたことあるのか?」
「ありませんよ」
「舐めろよ」
「嫌ですよ。何が起きるかわからないのになんで舐めなきゃいけないんですか」
「バカだなぁメイ。何が起きるかわかんねぇから面白いんじゃねぇか」
「…つまりは暇つぶしに付き合えと、そう解釈しても?」
「おう」
私はエース隊長からカゴを奪い返すとさっさと歩き出す。
まぁ、足の長いエース隊長はすぐに追い越して後ろ歩きしながら私の顔を覗き込む様にして歩くんだけど。
「アラバスタで賞金首にされた恨み、忘れてませんからね?」
もうどこかに強制的にどこかに飛ばされるのはゴメンだ。
するとエース隊長は爽やかすぎる笑顔を私に見せた。
「……エース隊長」
「ん?」
「その笑顔と手に持ってる物、一致しないんですけど」
「そうか?」
首を傾げながらじゃらり、と手に持ってる物を持ち上げて見せる。
それは少し長めのだいぶ頑丈そうな鎖だった。
その片側には手錠が、そしてもう片側には首輪がついている。
「エース隊長…私でもさすがにそういう趣味は…」
そう言えばエース隊長はもの凄くびっくりした顔をした。
どういう意味!?
「だってお前、ラクヨウに締め上げろって頼み込ん…」
「忘れてください」
「そりゃ無理だ」
言った本人忘れてたのになんでその時船にいなかったエース隊長が覚えているんだ。
恨みがましく睨みつけると全く堪えていないらしく、エース隊長は私の頭をかき混ぜた。
「これで俺とお前繋いでたらどっか飛ばされても一人じゃねぇだろ?」
言いながらエース隊長は早速私の首にガチャリと首輪をつけた。
「…………」
「…………」
「エース隊長」
「うん、ゴメン」
なんで廊下で変態プレイみたいな事しなきゃいけないんだ。
エース隊長もようやく気がついたらしく、凄く渋い顔をしていた。
でもすぐにまぁいいか、と切り替えて自分の腕にも手錠をかけた。
「これで準備バッチリだ」
「バッチリだ、じゃないですよ。舐めませんからね?」
繋がれたままリネン室の扉をくぐる。
中で残っている作業をしていたお兄ちゃんたちがこちらを見て一瞬ギョッとしていたけど、すぐにどこか納得したという様に二度三度頷き作業に戻る。
うわーん!
みんなしてどういう意味だよー!!
「エース、メイと遊ぶなら他所でやれよ。邪魔だから」
「おう」
「メイももういいぞ。エースにたーんと遊んでもらえ」
「…………」
助け船は0、か。
とりあえず二人でリネン室を後にした。
「ほら、メイさっさと舐めろって」
「いーやーでーすー」
「この鎖が有る限り逃げらんねぇぞ?」
「逃げ出す方法ならいっぱいありますよ」
「俺がにがすとでも?」
「…………」
怪しく光るエース隊長の目が逃がさない、と言っている。
もーやだ!!
「ほらメイ早くしろって」
「いーやー!」
「我儘言ってると…無理矢理ヤるぞ」
「我儘言ってるのはどっちで……ん?」
「ん?」
あれ、気のせいかな。
今不穏な事言われた気がしたんだけど。
首を傾げていると痺れを切らしたエース隊長が鎖を手繰り寄せて私を捕まえた。
「ほら…早く出しな」
「……ッ!!わかりましたっ!わかりましたから離してくださぁぁぁい!!」
ついでに耳元で囁かないでください!
本気で身の危険を感じて私はバッグから慌てて飴ちゃんを一つ取り出して口に放り込んだ。
「あ、意外に美味しい」
「ブドウ味か?」
「いえ、これはオレンジ…はッ!」
味が違うとわかるとエース隊長はそうかそうかと楽しそうに笑う。
「いろんな味があるんだな」
「もうあげませんよ」
「どうだろな」
次からは速攻でマルコ隊長の部屋に逃げ込んでやる!
コロコロと口の中で飴ちゃんを転がすも、一向に何かがおきる気配がない。
「ハズレだったかな?」
「まだわかんねぇぞ。口の中から消えてからだからな」
「そうなんですか?」
「おう」
それならばとコロコロ転がす事を辞めてほっぺに入れる。
そうすればエース隊長に片手でムニっと両頬を掴まれた。
「早く舐めろ」
「ふぁい」
チッ、ダメか。
またコロコロと飴ちゃんを口の中で転がす。
まさか飴玉舐めるだけなのにこんなに緊張する日が来るとは思わなかった。
「エース隊長…」
「ん?」
「またどこか行っちゃっても、守ってくれますか?」
「当たり前だろ?安心しとけって」
クシャクシャと頭を撫でられて、少しドキドキが収まる。
そうこうしているうちに口の中から飴ちゃんは消えて行き…
ボンッ!!
「ニャーーー!!?」
変な爆発音と辺りに白い煙が立ち込める。
急に身動きが取りにくくなって、一生懸命もがいた。
「にゃ、に、に、…………にゃ?」
なんで口から出る音がにゃーにゃーにゃー?
ようやく顔がもぞもぞの中から這い出せて視界が開けた。
目の前には何故かエース隊長の黒いブーツ。
そこから徐々に上を見上げるも、なかなかエース隊長の顔まで辿りつかない。
「あはははははは!!!」
「に!?」
エース隊長は大爆笑しながら私の首根っこを持ち上げた。
そうすれば私はぶらーんと吊るされる形になるわけで…
「可愛いぜ?メイ」
「にゃ?」
にゃ?
「にゃー」
エース隊長。
「おう」
「にゃーにゃーにゃーにゃー」
もしかしなくても私、猫になりましたね?
「あぁ、猫だ」
手のひらに乗せられて頭を撫でられる。
あ、そこ気持ちいいです。
思わずゴロゴロと喉がなる。
「…………ニャッ、にゃーーー!!!」
って、ちっがぁぁぁう!!!
「うおっ、暴れんなよ落るぞ?」
猫になっちゃったんですよ!?
猫に!!
しかも手のひらサイズの子猫ですか!!?
展開がベタ過ぎんだよぉぉぉおおお!!!
「面白いからこのままオヤジんところ行こうぜ」
面白くなぁぁぁい!
うわーん!!
スタスタと歩きだしたエース隊長。
服!
私の抜け殻回収してください!!
「暴れんなって」
そう言いながらエース隊長は両手で私を包んだ。
…あ、あったかい。
思わずうとうとしちゃう。
だけど次の瞬間にはバーン!とオヤジ様の部屋の扉が開かれた。
「オヤジー!これ見てくれよ!」
「どうしたァ、エース?」
オヤジ様に駆け寄るエース隊長。
流れる景色の片隅に黄色が見えた。
「にゃぁぁぁん!!」
マルコ隊長ぉぉぉ!!
私はエース隊長の手の中から飛び降りて、マルコ隊長に駆け寄った。
「あっ、オイ!!」
「……猫?エース、どっから猫なんて連れてきたんだよい」
「にゃーにゃーにゃー!!」
マルコ隊長の足に飛びついてヨジヨジとよじ登る。
途中でくすぐったそうに身をよじりながらマルコ隊長は私の首根っこをつまみ上げて目線を合わせてくれた。
「にゃー、にゃにゃー!」
「んー?何言ってるかわかんねぇよい」
あ、特に何も言ってません。
にゃーにゃー言ってみただけです。
「マルコ、それメイなんだ」
「は?メイ?」
「にゃーにゃーにゃー」
マルコ隊長、服を回収してください!
「は?服?」
「にゃーにゃー、にゅ、にゃーん」
リネン室前に私の抜け殻とバッグが…!
「そりゃヤベェな。オヤジ、ちょっと行ってくるよい!」
そう言いながらマルコ隊長は立ち上がり、急いでリネン室前まで向かってくれた。
幸いにも抜け殻はそのまま放置された状態で、誰にも飴ちゃんが取られたという形跡はなかった。
「にゃ、にゃーん!にーにーにー!!」
あ、服畳まなくていいですから、私の部屋に放り込んでください!
下着とか恥ずかしいからやめてぇぇぇーー!!
「あーよいよい」
マルコ隊長は途中で畳むのをやめて、服とバッグを掴むとまずは私の部屋に向かってくれた。
服をベッドの上に置いてくれて、これでいいか?と聞いてくれる。
お気遣いありがとうございます。
オヤジ様の部屋に戻る道中、大まかな説明をすればマルコ隊長は深ぁいため息をついた。
「エースも凝りねぇな。今度はどうしてやろうか…」
「にー」
いや、もう過ぎた事ですから何もしなくてもいいです。
そう言えばマルコ隊長は喉を撫でた。
あー、すっごく気持ちいいー…
自然とゴロゴロ鳴る喉は仕方ないと思うんですよね。
「本当に猫だねぃ」
「に」
猫です。
オヤジ様の部屋に戻ると何故か隊長さんたちが勢ぞろい。
え、私を見に来たとかどんだけ皆さん暇なんですか。
そう言えば、エース隊長とマルコ隊長が笑った。
「お前を愛でに来たんだからそう言ってやるなよい」
「え、マルコ今の何て言ったかわかんのか?」
サッチ隊長が首を傾げた事に私も首を傾げる。
途端に緩むこの場の空気。
え、何?
サッチ隊長が手のひらを私の目の前に向けたから、ひっかかないようにそっとてに乗ってみる。
「あー、俺猫あんま好きじゃねぇんだけどこりゃヤベェな。可愛い過ぎだ」
「にー?」
え、猫嫌いなんですか?
首を傾げるとサッチ隊長の顔がさらに緩んだ。
「何言ってるかわかんねぇけど可愛いー」
「に、に、にゃー」
肉球やめてぇぇぇーーー!!
プニプニとされる肉球。
なんか嫌だぁぁぁ!!
「にゃーにゃーにゃー!」
やめろよフランスパン!
サッチ隊長はよくわかんねぇ、とまだムニムニしている。
私の言葉が通じるエース隊長とマルコ隊長が盛大に吹き出した。
「にゃー」
内緒でお願いします。
「OKOK」
エース隊長がムニムニ地獄から助け出してくれた。
あーぞわぞわした。
ひっかかなかった私を誰か褒めてほしい。
するとオヤジ様が楽しそうにグラララと大笑いした。
「エース、こうなった責任としてちゃんとメイの面倒みてやれよ」
「やりぃ!」
あれ?
責任ってオヤジ様言ったよね?
エース隊長喜んでるけど?
散々隊長さんたちに愛でられた後、エース隊長と甲板で追いかけっこしたり、お昼寝したり、案外猫ライフを満喫してしまった。
うん、超楽しかった。
エース隊長遊び上手だ。
今もエース隊長のテンガロンハットの紐を使って猫じゃらしして遊んでいる。
ああああ捕まえられない!
くっそー!
「にっ!」
「うお!?」
思わずエース隊長の手を引っ掻いてしまった。
すると引っ掻いた場所から上がる炎。
「に!?ニャァァァァァァ!!?」
「メイ!?」
燃え移った!!
私燃えてるファイヤァァァアアア!!
「おい、大丈夫か!?」
「に…」
「…お前、随分皮っぽくなっちまったぞ」
oh…スフィンクス…
どうやら猫になっても能力は健在のようで、すぐに毛が生えてきた。
良かった良かった。
「随分汚れちまったから風呂行くか」
「…にゃ?」
はい?
私を手のひらに乗せるとスタスタと風呂場に向かうエース隊長。
え、まだ男湯の時間だけど!?
私を床に降ろすとさっさとズボンを脱ぎ全裸になったエース隊長。
ああああもう立派なものお持ちですね!!
「にゃー!にゃーにゃーにゃー!!」
エース隊長!せめて前、隠してください!!
「んー?ほら、行くぞ」
聞いちゃいねぇ。
手の中で泡だらけにされて、あちこちゴロゴロ撫でられる。
いやだもーエース隊長のテクニシャン!
「気持ちいいか?」
「に」
「そりゃ良かった」
あんまり気持ちよすぎて眠くなってくる。
あー…おちる…
そう思った瞬間。
ボンッ!!
「…………」
「…………」
「おかえり」
「ただいま戻りました」
人間によぉぉぉおおお!!
泡だらけとはいえ、全裸でエース隊長の足の上に座るようにして元の姿に戻ってしまった私。
そりゃもう手のひらに収まりませんよねーーー!!
慌ててどけようとするのにエース隊長に腕を掴まれた。
なんですかもー!!
するとエース隊長がふと真剣な顔をするから思わず動きを止める。
そしてエース隊長は私にこう言いやがった。
「お前、相変わらず胸ねぇのな。俺の上に乗ってるクセに、俺反応しねぇわ」
「知らんわぁぁぁあああ!!」
「どわぁっ!!?」
エース隊長の腕を掴んで一本背負いをおみまいした。
誰かが一本!なんて言っていたけど今はそれどころじゃない。
シャワーで泡を流し、水は止めずにエース隊長にかかるようにしてから慌てて風呂場を後にした。
「うお!?メイ!!?」
「はっ!ジョズ隊長!」
私が何か言う前にジョズ隊長は大きな大きなバスタオルで私の体を包んでくれた。
「ありがとうございますジョズ隊長…」
「なんだ、もう元に戻ったのか」
「そんな残念そうに言わないでください」
ぶー、とむくれると、ジョズ隊長は今だ私を猫と勘違いしているのか顎の下を撫でてきた。
「くすぐったいですよ」
「そうか?でも…」
「随分気持ちよさそうにしてるぜ?」
耳元で囁かれてぞわりと背中が粟立った。
「おうエース」
「…………」
片手を上げるジョズ隊長に私はギギギと後ろを振り向く。
そこには私のせいでびしょ濡れのエース隊長がすごーく怖い顔をしながら立っていた。
「お早いお上がりで」
「そういうメイはあったまってねぇんじゃねぇか?」
「いいえ、だいぶ温まりました」
「ガタガタ震えてるじゃねぇか」
そりゃあなたが怖いからですよ…!!
それなのにジョズ隊長は新しいバスタオルを取りに行くためか、着替えをカゴに入れると背中を向けた。
た…助けて!!
「痴話喧嘩も大概になー」
「どこをどう見たらそう…むぐ!!」
「おう」
私の口をその大きな手で覆うと、ジョズ隊長にひらひらと手を振って見せたエース隊長。
そしてジョズ隊長の姿が見えなくなると、グキッと私の顔を無理やり上を向けさせた。
そして顔が近づいてきたと思ったら…
「みぎゃーーーーっ!!!」
ジョズ隊長が撫でてたそこにチクっとした痛みを感じて思わず変な声をあげた。
するとエース隊長は唇をそこにつけたまま、おかしそうにクスクス笑う。
「なんだ、鳴き声猫のまんまじゃねぇか」
「ぞ…ゾワゾワします!もう勘弁してくださぁぁぁい!!」
エース隊長はいじめっ子だ。
私が本気で泣き出すまで私が嫌がるところを見つけてはくすぐってきた。
「もっ…もうやだぁぁぁ!うわーん!!」
「わ…悪かったって、だからもう泣くなよ」
「びぇぇぇん!!」
(((何処か行ってくれないかなぁ)))
その日のぼせるお兄ちゃん達が続出して、医務室に担ぎ込まれて、その処置に追われたお姉ちゃん達にエース隊長と二人でしこたま怒られたのはまた別の話。
今日はなんだか超疲れた…
もう二度と不思議飴舐めない!!
そう心に固く誓いながらその日は眠りについた。
夢でまた猫になり、エース隊長に追いかけ回されたのは言うまでもない。
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