エース隊長の場合
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「お疲れぃエース」
モビーへ戻るとマルコが声をかけてくれた。
別に疲れてなんかいない。
なんせ指先に炎を灯しただけだ。
だけどいつもより体が重い。
「ティーチのビブルカードは燃え尽きたよい」
「……あぁ」
テンガロンハットを目深にかぶり直す。
マルコはそれ以上は何も言わず、オヤジと船内へと消えた。
「少し寝ろエース」
「サッチ…」
ぽん、と肩に置いた手の主も、少し傷ついた顔をしていた。
そうだ。
サッチはティーチと仲が良かった。
「俺の隊の奴がすまねぇ、サッチ」
「お前が気に病む事じゃないさ」
「だけどよ…」
「悪いと思うなら…医務室で寝てる奴の事、ちっと気にかけてやてくれ」
医務室で寝ている奴…?
そういえばサッチが女を医務室へ運んでいったっけか。
寝てるってことは無事だったのか。
そいつもティーチのせいで大怪我をした。
俺の隊の奴のせいで、っていう気持ちと、なんでティーチがって気持ちがぐるぐると渦巻く。
ティーチを討った事自体に後悔はない。
鉄の掟を破ったのだ。
だけど何でティーチはあんな事をしたのか…
なんで俺に討たせた。
なんで…
ティーチの馬鹿野郎…
酷い顔のまま医務室へ行くのは憚られたので、一旦部屋に戻って仮眠をとった。
だいぶ寝た気がしたけど三時間も寝てなかったらしい。
それでもだいぶ頭はすっきりした。
「おう、エース来たか」
「サッチ?」
医務室のドアをくぐると、サッチが椅子に座ったまま振り返った。
なんだ、いたのか。
「だいぶ顔色良くなったな」
「わっ、やめろよ!」
わしわしと頭を撫でられて思わず抗議の声が出る。
だけどその俺の声がでかすぎた気がして慌てて口を手で押さえた。
そんな俺にサッチは苦い顔で笑った。
「大丈夫だ、多分まだ当分起きねぇ」
「そうなのか?」
「血を流しすぎたからな」
貧血なのだという。
たしかに青白い顔で寝ている。
やたら髪が短い女。
俺よりも短いんじゃないだろうか。
下手したらルフィよりも…
そのせいか、ナースたちみたいに『女』って感じがあまりしない。
だけど布団から見える白い肩が、あまりにも華奢で折れちまいそうだと思った。
この女もティーチのせいでこんなになっちまった。
俺の隊の奴のせいで…。
「エース、あまり思い詰めるなよ」
「だけどよ…」
「そんな事言ったら俺だって…」
「……?」
「この子な、突然俺とティーチの前に現れたんだ」
「……は?」
サッチがティーチに刺されそうになった瞬間、どこからともなくこの女が降ってきたらしい。
天井に穴なんて空いていなかった。
本当に忽然と現れたのだという。
「俺を助けるために、こんなちっせぇ体でティーチを振り回してたんだ。だけど俺よ、この子がティーチに刺されている間、動けなかった…」
目の前で起こっている事についていけずに、ただ見ているしか出来なかったのだという。
「四番隊の隊長が情けねぇ…」
「…………」
あぁ、だからサッチはここにいるんだ。
オヤジに様子を見てろと言われたらしいけど、それ以上に自分のせいでこんなになっちまった女への罪悪感がサッチの心を支配しているんだ。
大きな背中がやたら小さく見えた。
だからその背中を手のひらでぽんぽんと叩く。
「…サンキュ、エース」
「いや…」
それから俺たちは特に言葉を発することなく、暫く女の様子を眺めていた。
規則正しく上下する布団。
ふと、ある事に気づく。
「サッチ、何でコイツ海楼石の錠なんてつけてんだ?」
「お前、だいぶ時間たってっけど今さらか?」
「だって今気がついたんだもんよ」
たしかにずっと女を眺めていたはずなのに何で今さら気がついたんだろう。
やれやれ、とサッチは立ち上がると、おもむろに布団をはいだ。
「…………はぁっ!?何やってんだよサッチ!!」
慌てて女から目を逸らす。
何でコイツ上何も着てないんだよ…!
上半身バッチリ見ちまった。
……胸、全く無かったな…。
「あー、うん。裸の方じゃなくてね?エース君」
「……?」
きっと今顔が赤い。
ぱたぱたと手で顔をあおぎながらサッチを見る。
「腹に一発、あと背中と脇腹何度も刺されてたんだよこの子」
「…は?傷は?」
「消えた」
思わずもう一度女の姿を見る。
腹も脇腹も、傷らしい傷なんて見当たらない。
ついでにやっぱり胸も見当たらない。
むしろあばら骨なんて浮き出ている。
やっぱり女って感じがしない。
「こいつ、ガリガリだな」
「そうだなぁ…」
触ったら壊れちまいそうだと思った。
それでも青白い頬に触れてみると、本当に生きてんのかって思うくらいひんやりとしている。
思わずパッと手を離すと、サッチが隣で笑った。
それからまた布団を肩までかけてやると椅子にドカッと座り込んだ。
俺もサッチに倣って隣の椅子に再び腰を下ろした。
「得体が知れないんだよ。だから海楼石をつけてる」
そういうサッチの顔は少し歪んでいる。
たしかに拘束なんて命の恩人にする行為じゃない。
だけど得体が知れないから仕方がない。
再び少しの間沈黙が流れる。
そうしているうちに四番隊の奴がサッチを呼びに来た。
あいつは確か、ミラっつったか。
「サッチ隊長、そろそろ仕込みの時間だけど…」
「あぁ、もうそんな時間か。ミラ、先行ってろ」
「了解」
ミラを見送り、サッチも立ち上がる。
「時間が許す限り俺もここにいるつもりだけどよ、俺がいない間エースもちっと気にかけてやってくれよ」
「分かった」
「じゃぁ俺は夕飯の準備に行ってくるから、何かあったらよろしく頼むな」
「おう。……あ、サッチ」
「んー?」
ドアをくぐろうとしていたサッチに振り返る。
ここに来る前よりだいぶ気分が上昇している。
だからニッと笑った。
「俺、肉が食いてぇな」
「任せろ功労者」
サッチもニッと笑うと、後ろ手に手を振りながら部屋を出て行った。
そのドアをしばらく見ていた後、女が寝ているベッドに体の向きを変える。
そしてそのままポスンと女の枕元に頭を置いた。
起きたらきちんと謝らなくっちゃな…
女からは少し鉄の匂いがした。
なんとなく、サボとルフィの三人で過ごしたあの時間を思い出す。
女はルフィと同じくらいだろうか?
それかもっと下か…。
どこか懐かしい匂いに包まれながら、少しの間俺は意識を再び手放した。
モビーへ戻るとマルコが声をかけてくれた。
別に疲れてなんかいない。
なんせ指先に炎を灯しただけだ。
だけどいつもより体が重い。
「ティーチのビブルカードは燃え尽きたよい」
「……あぁ」
テンガロンハットを目深にかぶり直す。
マルコはそれ以上は何も言わず、オヤジと船内へと消えた。
「少し寝ろエース」
「サッチ…」
ぽん、と肩に置いた手の主も、少し傷ついた顔をしていた。
そうだ。
サッチはティーチと仲が良かった。
「俺の隊の奴がすまねぇ、サッチ」
「お前が気に病む事じゃないさ」
「だけどよ…」
「悪いと思うなら…医務室で寝てる奴の事、ちっと気にかけてやてくれ」
医務室で寝ている奴…?
そういえばサッチが女を医務室へ運んでいったっけか。
寝てるってことは無事だったのか。
そいつもティーチのせいで大怪我をした。
俺の隊の奴のせいで、っていう気持ちと、なんでティーチがって気持ちがぐるぐると渦巻く。
ティーチを討った事自体に後悔はない。
鉄の掟を破ったのだ。
だけど何でティーチはあんな事をしたのか…
なんで俺に討たせた。
なんで…
ティーチの馬鹿野郎…
酷い顔のまま医務室へ行くのは憚られたので、一旦部屋に戻って仮眠をとった。
だいぶ寝た気がしたけど三時間も寝てなかったらしい。
それでもだいぶ頭はすっきりした。
「おう、エース来たか」
「サッチ?」
医務室のドアをくぐると、サッチが椅子に座ったまま振り返った。
なんだ、いたのか。
「だいぶ顔色良くなったな」
「わっ、やめろよ!」
わしわしと頭を撫でられて思わず抗議の声が出る。
だけどその俺の声がでかすぎた気がして慌てて口を手で押さえた。
そんな俺にサッチは苦い顔で笑った。
「大丈夫だ、多分まだ当分起きねぇ」
「そうなのか?」
「血を流しすぎたからな」
貧血なのだという。
たしかに青白い顔で寝ている。
やたら髪が短い女。
俺よりも短いんじゃないだろうか。
下手したらルフィよりも…
そのせいか、ナースたちみたいに『女』って感じがあまりしない。
だけど布団から見える白い肩が、あまりにも華奢で折れちまいそうだと思った。
この女もティーチのせいでこんなになっちまった。
俺の隊の奴のせいで…。
「エース、あまり思い詰めるなよ」
「だけどよ…」
「そんな事言ったら俺だって…」
「……?」
「この子な、突然俺とティーチの前に現れたんだ」
「……は?」
サッチがティーチに刺されそうになった瞬間、どこからともなくこの女が降ってきたらしい。
天井に穴なんて空いていなかった。
本当に忽然と現れたのだという。
「俺を助けるために、こんなちっせぇ体でティーチを振り回してたんだ。だけど俺よ、この子がティーチに刺されている間、動けなかった…」
目の前で起こっている事についていけずに、ただ見ているしか出来なかったのだという。
「四番隊の隊長が情けねぇ…」
「…………」
あぁ、だからサッチはここにいるんだ。
オヤジに様子を見てろと言われたらしいけど、それ以上に自分のせいでこんなになっちまった女への罪悪感がサッチの心を支配しているんだ。
大きな背中がやたら小さく見えた。
だからその背中を手のひらでぽんぽんと叩く。
「…サンキュ、エース」
「いや…」
それから俺たちは特に言葉を発することなく、暫く女の様子を眺めていた。
規則正しく上下する布団。
ふと、ある事に気づく。
「サッチ、何でコイツ海楼石の錠なんてつけてんだ?」
「お前、だいぶ時間たってっけど今さらか?」
「だって今気がついたんだもんよ」
たしかにずっと女を眺めていたはずなのに何で今さら気がついたんだろう。
やれやれ、とサッチは立ち上がると、おもむろに布団をはいだ。
「…………はぁっ!?何やってんだよサッチ!!」
慌てて女から目を逸らす。
何でコイツ上何も着てないんだよ…!
上半身バッチリ見ちまった。
……胸、全く無かったな…。
「あー、うん。裸の方じゃなくてね?エース君」
「……?」
きっと今顔が赤い。
ぱたぱたと手で顔をあおぎながらサッチを見る。
「腹に一発、あと背中と脇腹何度も刺されてたんだよこの子」
「…は?傷は?」
「消えた」
思わずもう一度女の姿を見る。
腹も脇腹も、傷らしい傷なんて見当たらない。
ついでにやっぱり胸も見当たらない。
むしろあばら骨なんて浮き出ている。
やっぱり女って感じがしない。
「こいつ、ガリガリだな」
「そうだなぁ…」
触ったら壊れちまいそうだと思った。
それでも青白い頬に触れてみると、本当に生きてんのかって思うくらいひんやりとしている。
思わずパッと手を離すと、サッチが隣で笑った。
それからまた布団を肩までかけてやると椅子にドカッと座り込んだ。
俺もサッチに倣って隣の椅子に再び腰を下ろした。
「得体が知れないんだよ。だから海楼石をつけてる」
そういうサッチの顔は少し歪んでいる。
たしかに拘束なんて命の恩人にする行為じゃない。
だけど得体が知れないから仕方がない。
再び少しの間沈黙が流れる。
そうしているうちに四番隊の奴がサッチを呼びに来た。
あいつは確か、ミラっつったか。
「サッチ隊長、そろそろ仕込みの時間だけど…」
「あぁ、もうそんな時間か。ミラ、先行ってろ」
「了解」
ミラを見送り、サッチも立ち上がる。
「時間が許す限り俺もここにいるつもりだけどよ、俺がいない間エースもちっと気にかけてやってくれよ」
「分かった」
「じゃぁ俺は夕飯の準備に行ってくるから、何かあったらよろしく頼むな」
「おう。……あ、サッチ」
「んー?」
ドアをくぐろうとしていたサッチに振り返る。
ここに来る前よりだいぶ気分が上昇している。
だからニッと笑った。
「俺、肉が食いてぇな」
「任せろ功労者」
サッチもニッと笑うと、後ろ手に手を振りながら部屋を出て行った。
そのドアをしばらく見ていた後、女が寝ているベッドに体の向きを変える。
そしてそのままポスンと女の枕元に頭を置いた。
起きたらきちんと謝らなくっちゃな…
女からは少し鉄の匂いがした。
なんとなく、サボとルフィの三人で過ごしたあの時間を思い出す。
女はルフィと同じくらいだろうか?
それかもっと下か…。
どこか懐かしい匂いに包まれながら、少しの間俺は意識を再び手放した。