エース隊長のお部屋
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日付が変わったモビーの甲板。
なんとなく夜空を眺めながら一人酒を飲んでいた。
するとひょこひょこという独特の足音をさせながら背後に迫る気配。
そして手を伸ばして目を覆ってくる。
「だーれだ!」
「メイだろ」
あれ、バレました?なんて言いながら手を離して後ろから顔をのぞかせる。
「バレるもなにも、こんな事やる奴他にいねぇだろ」
そう言えばメイはこてん、と首を傾げる。
「そうですか?サッチ隊長あたりやりそうじゃありません?」
「サッチ?あー…うんサッチねぇ…」
確かにやりそうではある。
しかしサッチの場合足音どころが気配すら完璧に消してくるだろう。
しかもだーれだ、なんて言いながら目隠しなんてことはせず、首に腕を巻きつけてギリギリと締め上げてきそうだ。
そんな事を考えていると、アオイも同じ事を思ったのか、クスクス笑う。
モビーに現れたばかりの時は子ザルみたいだった髪もすこし伸びて俺と同じくらいの長さになった。
それでも相変わらず触ったら気持ちよさそうな頭に思わず手を伸ばすと、メイはスッと頭を差し出して撫でさせてくれる。
「本当お前の頭は気持ちいいなぁ」
「私も撫でられるの気持ちいいですよ」
ニコニコと笑いながらされるがままになっている。
本当にメイは素直に感想を口にするなと感心する。
ほわほわした髪は手触りが良くて癒される。
ぐりぐりぐりぐり…
なんとなく少し強めに頭皮に髪の毛をこすりつけてやれば、髪どうしが絡まって毛玉みたいになる。
それが面白くていくつか作っていると、だんだんメイの顔が渋くなってくる。
ぐりぐりぐりぐり…
「…エース隊長、毛玉作ろうとしてません?」
「ばれたか?」
「もう!」
唇を尖らせながら頭を引いて髪を整えるメイ。
そんな些細な行動がどうしようもなく可愛く思えて今度は両手で頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「せっかく整えたのに!」
「シシシ!」
整えてては俺にかき回されるのを繰り返すこと数回。
だんだんお互いに楽しくなってきて、終いには声を出して笑い合う。
ひとしきり笑い、そこでそういえばと思い出す。
「そういやどうした?こんな時間に」
いつもはだいたいこの時間はすでに寝ているメイ。
とんだ健康優良児だ。
他の野郎どもは酒を飲んだりしているからモビーでこんな早く寝入っているのはメイくらいだ。
そんなメイが今日は珍しい。
「今日はですね、私たちのいた世界は新しい年を迎える日なんですよ。『あけましておめでとうございます』、って皆で挨拶するんです」
「へぇー」
「それから『今年もよろしくお願いします』っていうんですよ」
(今年もよろしく…か)
そんな新年の挨拶とやらの文句を教えてくれながら、俺の後ろにいたメイは正面に移動してきて向かいあうように正座すると、手をついてすっと頭を下げた。
「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」
「やや、こちらこそよろしくお願いします」
メイのまねをして頭を下げてみれば、頭を上げたメイがふはっ、と吹きだした。
「ん?」
「えへへ、なんか良いですねぇ」
何が、と首をかしげるとメイは少し遠い目をする。
「誰かと新年を迎えられること、もうないと思ってました。…こっちの世界に来れて本当によかったです」
「メイ…」
にこっと綺麗な笑顔を浮かべるが、その顔を見てるとなんだか切なくなる。
笑ってるのに何故だろうな。
何か言葉をかけようと口を開くが、その前にメイは言葉を続ける。
「それに新年を迎える今日…1月1日はエース隊長の誕生日なんですよ」
「…そうなのか?」
言われてみれば日付が変わった今日は俺の誕生日だ。
あぁそうか…だからなんとなく飲みたくなったのか。
俺の中に流れる血と、俺を産み落として死んでいったお袋のことを考えるとあまり好ましい日ではない。
無意識にぐっと眉を寄せていたみたいで、メイが眉間に人差し指を押し当ててぐりぐりと回す。
「何すん…」
「エース隊長、お誕生日おめでとうございます」
「……おう」
あいまいに返事すればメイは困ったように笑う。
「エース隊長?」
「何だ?」
「今年も…と言わず、これからもどうぞよろしくお願いします」
これからも…?
この先も共にいてくれると言ってくれるのか。
鬼の子と言われたこの俺と…
自分の顔がくしゃっと歪んだのが分かり、慌ててテンガロンハットを深くかぶる。
「エース隊長」
「おう…」
「生まれてきてくれて、ありがとうございます」
「…おう」
「大好きですよ、エース隊長。私はエース隊長と出会えて幸せです」
「……おう」
テンガロンハットで隠した顔は今、情けないほどに緩んでいる。
ふと視線を上げればニコニコしたメイと視線がぶつかる。
「……メイ、テメェ覗きこんでんじゃねぇぞ!」
「あれ!?いい雰囲気だったと思ったのに!!」
ふわふわの頭をこれでもかというほどにかき回せばメイはもう下を向くしか出来ない。
こんなしまりのない顔を見られるのはちょっと恥ずかしい。
「ギャー!頭噛まないでくださいー!!」
かき混ぜていた頭を引き寄せガブッと歯を立てれば悲鳴が上がる(毎度のことだが、どこか嬉しそうなのは何故なんだろう?)
生まれたことを感謝される日が来るなんて思いもしなかった。
感謝するのはこっちの方だ。
ふとメイの顔を見たいと思った。
でも今はまだ俺が情けない顔してるから…
メイに顔を見られないよう、メイの頭をぐっと胸に押しつける。
「メイ、ありがとな」
「いいえー」
ぎゅーっと力いっぱい背中にまわされた腕を愛おしいと思う。
ありがとう。
ありがとう。
お前が幸せというなら、俺はどれほどの幸福に包まれているんだろう。
そう思いながらふわふわの頭に顔をうずめ、小さく唇を寄せた。
なんとなく夜空を眺めながら一人酒を飲んでいた。
するとひょこひょこという独特の足音をさせながら背後に迫る気配。
そして手を伸ばして目を覆ってくる。
「だーれだ!」
「メイだろ」
あれ、バレました?なんて言いながら手を離して後ろから顔をのぞかせる。
「バレるもなにも、こんな事やる奴他にいねぇだろ」
そう言えばメイはこてん、と首を傾げる。
「そうですか?サッチ隊長あたりやりそうじゃありません?」
「サッチ?あー…うんサッチねぇ…」
確かにやりそうではある。
しかしサッチの場合足音どころが気配すら完璧に消してくるだろう。
しかもだーれだ、なんて言いながら目隠しなんてことはせず、首に腕を巻きつけてギリギリと締め上げてきそうだ。
そんな事を考えていると、アオイも同じ事を思ったのか、クスクス笑う。
モビーに現れたばかりの時は子ザルみたいだった髪もすこし伸びて俺と同じくらいの長さになった。
それでも相変わらず触ったら気持ちよさそうな頭に思わず手を伸ばすと、メイはスッと頭を差し出して撫でさせてくれる。
「本当お前の頭は気持ちいいなぁ」
「私も撫でられるの気持ちいいですよ」
ニコニコと笑いながらされるがままになっている。
本当にメイは素直に感想を口にするなと感心する。
ほわほわした髪は手触りが良くて癒される。
ぐりぐりぐりぐり…
なんとなく少し強めに頭皮に髪の毛をこすりつけてやれば、髪どうしが絡まって毛玉みたいになる。
それが面白くていくつか作っていると、だんだんメイの顔が渋くなってくる。
ぐりぐりぐりぐり…
「…エース隊長、毛玉作ろうとしてません?」
「ばれたか?」
「もう!」
唇を尖らせながら頭を引いて髪を整えるメイ。
そんな些細な行動がどうしようもなく可愛く思えて今度は両手で頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「せっかく整えたのに!」
「シシシ!」
整えてては俺にかき回されるのを繰り返すこと数回。
だんだんお互いに楽しくなってきて、終いには声を出して笑い合う。
ひとしきり笑い、そこでそういえばと思い出す。
「そういやどうした?こんな時間に」
いつもはだいたいこの時間はすでに寝ているメイ。
とんだ健康優良児だ。
他の野郎どもは酒を飲んだりしているからモビーでこんな早く寝入っているのはメイくらいだ。
そんなメイが今日は珍しい。
「今日はですね、私たちのいた世界は新しい年を迎える日なんですよ。『あけましておめでとうございます』、って皆で挨拶するんです」
「へぇー」
「それから『今年もよろしくお願いします』っていうんですよ」
(今年もよろしく…か)
そんな新年の挨拶とやらの文句を教えてくれながら、俺の後ろにいたメイは正面に移動してきて向かいあうように正座すると、手をついてすっと頭を下げた。
「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」
「やや、こちらこそよろしくお願いします」
メイのまねをして頭を下げてみれば、頭を上げたメイがふはっ、と吹きだした。
「ん?」
「えへへ、なんか良いですねぇ」
何が、と首をかしげるとメイは少し遠い目をする。
「誰かと新年を迎えられること、もうないと思ってました。…こっちの世界に来れて本当によかったです」
「メイ…」
にこっと綺麗な笑顔を浮かべるが、その顔を見てるとなんだか切なくなる。
笑ってるのに何故だろうな。
何か言葉をかけようと口を開くが、その前にメイは言葉を続ける。
「それに新年を迎える今日…1月1日はエース隊長の誕生日なんですよ」
「…そうなのか?」
言われてみれば日付が変わった今日は俺の誕生日だ。
あぁそうか…だからなんとなく飲みたくなったのか。
俺の中に流れる血と、俺を産み落として死んでいったお袋のことを考えるとあまり好ましい日ではない。
無意識にぐっと眉を寄せていたみたいで、メイが眉間に人差し指を押し当ててぐりぐりと回す。
「何すん…」
「エース隊長、お誕生日おめでとうございます」
「……おう」
あいまいに返事すればメイは困ったように笑う。
「エース隊長?」
「何だ?」
「今年も…と言わず、これからもどうぞよろしくお願いします」
これからも…?
この先も共にいてくれると言ってくれるのか。
鬼の子と言われたこの俺と…
自分の顔がくしゃっと歪んだのが分かり、慌ててテンガロンハットを深くかぶる。
「エース隊長」
「おう…」
「生まれてきてくれて、ありがとうございます」
「…おう」
「大好きですよ、エース隊長。私はエース隊長と出会えて幸せです」
「……おう」
テンガロンハットで隠した顔は今、情けないほどに緩んでいる。
ふと視線を上げればニコニコしたメイと視線がぶつかる。
「……メイ、テメェ覗きこんでんじゃねぇぞ!」
「あれ!?いい雰囲気だったと思ったのに!!」
ふわふわの頭をこれでもかというほどにかき回せばメイはもう下を向くしか出来ない。
こんなしまりのない顔を見られるのはちょっと恥ずかしい。
「ギャー!頭噛まないでくださいー!!」
かき混ぜていた頭を引き寄せガブッと歯を立てれば悲鳴が上がる(毎度のことだが、どこか嬉しそうなのは何故なんだろう?)
生まれたことを感謝される日が来るなんて思いもしなかった。
感謝するのはこっちの方だ。
ふとメイの顔を見たいと思った。
でも今はまだ俺が情けない顔してるから…
メイに顔を見られないよう、メイの頭をぐっと胸に押しつける。
「メイ、ありがとな」
「いいえー」
ぎゅーっと力いっぱい背中にまわされた腕を愛おしいと思う。
ありがとう。
ありがとう。
お前が幸せというなら、俺はどれほどの幸福に包まれているんだろう。
そう思いながらふわふわの頭に顔をうずめ、小さく唇を寄せた。
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