マルコ隊長の場合
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航海士の見立てだとあと二週間もしないうちに次の島に着くという。
次の島は過去に何度か行ったことがある。
確か冬島だったか…
治安が良くていい酒が揃っていたはずだ。
買い出しに力をいれるか、と隊編成を考える。
食堂からは今日の寝不番の2番隊の賑やかな声が聞こえる。
あそこは隊長が若いという事もあり、だいぶ元気な奴らが集まっている。
ふとエースがやってきた事を思い出して小さく笑みがこぼれた。
だいぶ丸くなったものだ。
しばらく書類とにらめっこしていたが、きりのいいところで体を起こして伸びをする。
目の間をグッグッと押すと心地いい痛み。
だいぶ疲れが溜まってるな、と目を閉じる。
寝るつもりは全くなかった。
しかし心地いい疲れがあっという間に意識を深いところへと沈めていった。
ここは何処だ。
見たこともない似たような建物がごちゃごちゃと並んでいた。
だいぶ無機質で空が遠い。
寸分の狂いも無く舗装された道に生活水準の高さが感じ取れる。
すぐにここは夢の中だと理解する。
何も聞こえず、なんの色味もない白黒の世界。
不思議な世界だ。
色のないそこをふらふらと歩き回る。
しばらく歩いていると、ふと声が聞こえた。
それまで何も聞こえなかったからひどく興味をそそった。
何処から…?
声のする方へと歩いて行けば、金網の向こうにベンチに座る人を見つけた。
顔は伏せていて見えないが、長い髪と華奢な体を見るとそれは女だろうと想像がつく。
声を押し殺すように体を震わせながら、それでも堪えきれない泣き声が絶えず耳に届いてくる。
あぁ、あの子の声だったのか。
何が悲しいのか、長い事泣いていた。
ふと風が吹いてカランと高い音がした。
彼女の陰から松葉杖らしきものが倒れたのだ。
そこでようやく彼女は体を起こした。
ふと見えたその表情。
その目には絶望しか映っていなかった。
『ぴぃぃぃぁぁぁあああああああ!!!』
「!!?」
ばちっと目が覚めた。
何だ今の甲高い雄叫びは。
ビリビリと空気が振動し、グラスに入っている酒が震えている。
どんな声量だ。
一瞬ナースの声かとも思ったが、聞いたことのない声だった。
声の出処はさほど遠くない。
廊下へ飛び出してみれば、すぐそばのサッチの部屋でバタバタと音がする。
あそこか…!
「サッチどうしたよい!」
部屋へ駆け込むと目の前にはティーチの後ろ姿。
バタバタと暴れていたのはこいつだったか…
「ティーチ…?お前何して…」
そう声をかければティーチの体が大きく跳ねた。
焦りの色が見える。
何だ…?
「離れろ、小娘!」
「いや!サッチを殺させない!!」
殺させない…?
動いたティーチの向こうに佇むサッチを見るとその姿は血まみれだった。
それにナイフを振り回しているティーチ。
タックルをかけて背後から押し倒す。
「お前ら!取り押さえろ!!」
野次馬どもに声をかければすぐに飛びかかってくる。
それにしても乗りすぎだ…!
俺自身も動けなくなる。
もぞもぞと動くティーチの手からナイフを引き剥がし、遠くへ放り投げる。
しばらくそうしていると徐々に体が軽くなり、上に乗った奴らがどけているのだと理解する。
それを感じ取ったのかティーチも暴れ出すからこっちも抑え込むのに必死だ。
ジャラリと音がして素早くティーチの体に鎖が巻きつけられた。
そこでようやく俺も体を起こす。
あっちこっちぐしゃぐしゃだ。
ティーチが起こした体の下に誰かいた。
血まみれの女だ。
そういえばさっき『サッチを殺させない』と叫んでいた奴がいた。
一緒につぶしちまったか…。
嫌な汗が流れる。
そんな時、ふと女が笑った。
この状況で?
声をかけようと体を動かすが、先にサッチが動いた。
徐々に閉じられていく瞼。
これはもう手遅れだ…
そう思った。
サッチが女に声をかけながら頬を軽く張るが反応がない。
抱き上げながらサッチが縋るような目を俺によこした。
もう無理だとサッチも思ったに違いない。
だけど俺の能力ならならどうにか出来るんじゃないかと…
無理なもんは無理だ。
それなのに…
「先に医務室行け!俺もすぐ行く」
手遅れだと思うのに口からはそんな言葉が滑り落ちれば、サッチは弾かれたように走り出した。
サッチについていた血はどうやら全てあの女の物らしい。
床にもおびただしい量の血が落ちている。
どう考えたってあの華奢な身体から流れ出ていい量じゃない。
その上大勢の野郎共に押し潰されている。
治療を施そうにもおそらく身体がもたない。
それなのに…
「しくじったなぁ」
ゼハハ、と笑いながらつぶやく声に俺は顔を上げる。
しくじったと言いながらも未だギラギラとした炎を目に宿していた。
ティーチはこんな奴だったか…?
ガッとエースがティーチに掴みかかった。
「ティーチ!てめぇ何してんだ!!」
「あいつが…あいつが俺の探し求めていた悪魔の実を手に入れやがったんだ…」
そういえばサッチが悪魔の実を見つけたとか言っていたか…?
ティーチはその実を探し求めてモビーに長いこと乗っていたことを告白した。
確かに大所帯の船だ。
悪魔の実が転がり込んでくる確率はどの船よりも高いだろう。
この野心、まだ先がある。
でなければ何十年も大人しくしていない。
そういえばティーチは時々船を下りていた。
(…仲間がいる…か?)
エースが激高して火拳を繰り出そうとしていたが、ラクヨウに止められた。
なんとか怒りを納めて俺に指示を仰いでくる。
「まずはオヤジに報告だ。お前らはティーチをこのまま連れて行け」
「マルコは」
「俺は…あの女を助けてくる」
今頃ナースたちが輸血の準備をしているだろうが、傷がふさがったところで助かる見込みはかなり少ない。
それでも助けると口にしたのは多分脳裏に浮かぶあの光景…
夢の中で最後、顔を上げた女は目に絶望を浮かべながらこうつぶやいた。
だれかたすけて、と…
次の島は過去に何度か行ったことがある。
確か冬島だったか…
治安が良くていい酒が揃っていたはずだ。
買い出しに力をいれるか、と隊編成を考える。
食堂からは今日の寝不番の2番隊の賑やかな声が聞こえる。
あそこは隊長が若いという事もあり、だいぶ元気な奴らが集まっている。
ふとエースがやってきた事を思い出して小さく笑みがこぼれた。
だいぶ丸くなったものだ。
しばらく書類とにらめっこしていたが、きりのいいところで体を起こして伸びをする。
目の間をグッグッと押すと心地いい痛み。
だいぶ疲れが溜まってるな、と目を閉じる。
寝るつもりは全くなかった。
しかし心地いい疲れがあっという間に意識を深いところへと沈めていった。
ここは何処だ。
見たこともない似たような建物がごちゃごちゃと並んでいた。
だいぶ無機質で空が遠い。
寸分の狂いも無く舗装された道に生活水準の高さが感じ取れる。
すぐにここは夢の中だと理解する。
何も聞こえず、なんの色味もない白黒の世界。
不思議な世界だ。
色のないそこをふらふらと歩き回る。
しばらく歩いていると、ふと声が聞こえた。
それまで何も聞こえなかったからひどく興味をそそった。
何処から…?
声のする方へと歩いて行けば、金網の向こうにベンチに座る人を見つけた。
顔は伏せていて見えないが、長い髪と華奢な体を見るとそれは女だろうと想像がつく。
声を押し殺すように体を震わせながら、それでも堪えきれない泣き声が絶えず耳に届いてくる。
あぁ、あの子の声だったのか。
何が悲しいのか、長い事泣いていた。
ふと風が吹いてカランと高い音がした。
彼女の陰から松葉杖らしきものが倒れたのだ。
そこでようやく彼女は体を起こした。
ふと見えたその表情。
その目には絶望しか映っていなかった。
『ぴぃぃぃぁぁぁあああああああ!!!』
「!!?」
ばちっと目が覚めた。
何だ今の甲高い雄叫びは。
ビリビリと空気が振動し、グラスに入っている酒が震えている。
どんな声量だ。
一瞬ナースの声かとも思ったが、聞いたことのない声だった。
声の出処はさほど遠くない。
廊下へ飛び出してみれば、すぐそばのサッチの部屋でバタバタと音がする。
あそこか…!
「サッチどうしたよい!」
部屋へ駆け込むと目の前にはティーチの後ろ姿。
バタバタと暴れていたのはこいつだったか…
「ティーチ…?お前何して…」
そう声をかければティーチの体が大きく跳ねた。
焦りの色が見える。
何だ…?
「離れろ、小娘!」
「いや!サッチを殺させない!!」
殺させない…?
動いたティーチの向こうに佇むサッチを見るとその姿は血まみれだった。
それにナイフを振り回しているティーチ。
タックルをかけて背後から押し倒す。
「お前ら!取り押さえろ!!」
野次馬どもに声をかければすぐに飛びかかってくる。
それにしても乗りすぎだ…!
俺自身も動けなくなる。
もぞもぞと動くティーチの手からナイフを引き剥がし、遠くへ放り投げる。
しばらくそうしていると徐々に体が軽くなり、上に乗った奴らがどけているのだと理解する。
それを感じ取ったのかティーチも暴れ出すからこっちも抑え込むのに必死だ。
ジャラリと音がして素早くティーチの体に鎖が巻きつけられた。
そこでようやく俺も体を起こす。
あっちこっちぐしゃぐしゃだ。
ティーチが起こした体の下に誰かいた。
血まみれの女だ。
そういえばさっき『サッチを殺させない』と叫んでいた奴がいた。
一緒につぶしちまったか…。
嫌な汗が流れる。
そんな時、ふと女が笑った。
この状況で?
声をかけようと体を動かすが、先にサッチが動いた。
徐々に閉じられていく瞼。
これはもう手遅れだ…
そう思った。
サッチが女に声をかけながら頬を軽く張るが反応がない。
抱き上げながらサッチが縋るような目を俺によこした。
もう無理だとサッチも思ったに違いない。
だけど俺の能力ならならどうにか出来るんじゃないかと…
無理なもんは無理だ。
それなのに…
「先に医務室行け!俺もすぐ行く」
手遅れだと思うのに口からはそんな言葉が滑り落ちれば、サッチは弾かれたように走り出した。
サッチについていた血はどうやら全てあの女の物らしい。
床にもおびただしい量の血が落ちている。
どう考えたってあの華奢な身体から流れ出ていい量じゃない。
その上大勢の野郎共に押し潰されている。
治療を施そうにもおそらく身体がもたない。
それなのに…
「しくじったなぁ」
ゼハハ、と笑いながらつぶやく声に俺は顔を上げる。
しくじったと言いながらも未だギラギラとした炎を目に宿していた。
ティーチはこんな奴だったか…?
ガッとエースがティーチに掴みかかった。
「ティーチ!てめぇ何してんだ!!」
「あいつが…あいつが俺の探し求めていた悪魔の実を手に入れやがったんだ…」
そういえばサッチが悪魔の実を見つけたとか言っていたか…?
ティーチはその実を探し求めてモビーに長いこと乗っていたことを告白した。
確かに大所帯の船だ。
悪魔の実が転がり込んでくる確率はどの船よりも高いだろう。
この野心、まだ先がある。
でなければ何十年も大人しくしていない。
そういえばティーチは時々船を下りていた。
(…仲間がいる…か?)
エースが激高して火拳を繰り出そうとしていたが、ラクヨウに止められた。
なんとか怒りを納めて俺に指示を仰いでくる。
「まずはオヤジに報告だ。お前らはティーチをこのまま連れて行け」
「マルコは」
「俺は…あの女を助けてくる」
今頃ナースたちが輸血の準備をしているだろうが、傷がふさがったところで助かる見込みはかなり少ない。
それでも助けると口にしたのは多分脳裏に浮かぶあの光景…
夢の中で最後、顔を上げた女は目に絶望を浮かべながらこうつぶやいた。
だれかたすけて、と…
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