君死にたもう事なかれ!
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「え…マルコ隊長…?」
「ほれ、刺せよい」
握らされたナイフとマルコ隊長を交互に見るも、マルコ隊長は変わらずちょっと怖い顔で私を見ている。
つーっと刃に指を這わせてみると切れ味はバッチリですぐに指の腹に赤い線が入る。
それがどうなるのか様子を見ていると、突然ガっと胸倉をつかみあげられた。
「だれが自分の指切れっつったよい!」
「す…すみません!!」
すぐに手は離されたけどそのままナイフを持った手を掴まれた。
とっさに手を引くもピクリとも動かない。
ならばと手を捻ってみたけど握力の差からか、本来なら腕が外れるはずなのにやっぱり外れない。
掴まれただけならまだしも、グイッと引っ張られてマルコ隊長のお腹目掛けてナイフが動く。
「マルコ隊長!?やめてください!」
「駄目だ」
「や…やだっ!!」
掴まれたいない手をマルコ隊長の手にかけてどうにか指を引きはがそうとするけどやっぱり外れない。
わざとなのか、ゆっくりゆっくりとマルコ隊長に向かって手を引っ張られる。
「お願いします!マルコ隊長手を…っ!!」
「メイ!」
刃先がぴたりとマルコ隊長くっついたところで名前を呼ばれてビクッと顔を上げる。
マルコ隊長はまっすぐに私を見ていた。
私はと言えば、どうにか手を離してもらいたくて情けないけどボロボロと涙を流している顔をさらしている。
「何で刺せない?」
「だって怪我するじゃないですか!」
「それをお前は他の奴にやらせようとしてたのは分かってるのか?」
「でも私は治るし…」
さっき切った指もすぐに治っている。
だから、と言葉をつづけようとしたけど、不意に手を引っ張られて感じた感触に思わず悲鳴を上げた。
「いやだぁぁぁぁぁっ!!」
「メイよく見ろぃ」
「……?」
ナイフは確かにマルコ隊長の体に刺さったけど、その瞬間ぶわっと青い炎が巻き起こり血一滴も流すことなく治ってしまった。
そうだった、マルコ隊長は不死鳥で怪我しても治るんだった。
目の前で起こった光景にほっとしたのと同時に腰が抜けてその場にへたり込んだ。
手だけはまだマルコ隊長に握られていたからぶら下がるような感じになってしまっている。
未だ止まることのない涙を流したまま顔を上げるとマルコ隊長はしゃがみこんで私の顔を覗き込む。
私の手を掴んでた手を離して、その手でぐしゃぐしゃと頭を掻きまぜられた。
「俺もお前と一緒だよい」
「一緒…?」
「俺もお前と一緒で怪我してもすぐ治る」
刺したはずのお腹を見ればそこにはやっぱり傷なんてなくて逞しい腹筋があるだけだった。
その事に安心してさらに涙があふれてきた。
よかった…
ぐっと目を腕でこすって無理やり涙を止める。
いつまでも泣いていられない。
マルコ隊長がなんで私に刺せなんて言ったのか、考えなくっちゃ。
でもその答えはすぐにマルコ隊長がくれた。
「お前、その能力に振り回されてるだろ」
「振り回されてる…?」
「好奇心が抑えられないんだろ」
それはあると思う。
怪我するのは痛いし、無茶したら死ぬのは当たり前。
だから今まで無意識のうちにセーブしていたことが、死なないと頭で理解した途端に色々試したくなったのだ。
「俺やエースもそう簡単に怪我をしない。でもメイお前は血が流れるだろうが」
「はい…」
でも傷がつかないのは一緒だ。
だからその過程が知りたいと思ってしまう。
私がそう思っていることが分かっているのか、マルコ隊長は一つ息を吐く。
「さっき俺を刺した時どう思った」
「……マルコ隊長が…死んじゃうって思いました」
お腹から血を流して、その場に崩れ落ちる。
流れる血はどうしても止まらず、そのまま体が冷たくなる。
『あの時』の事を思い出して思わず体を震わせる。
あの時…
あれは中学を卒業した日、家族みんなで出かけた。
今まで持っていなかった自分のスマホを買ってもらって、早速一枚写真を撮った。
夜は外で食べて、その帰り道…
横断歩道を渡っていたら信号無視のトラックが突っ込んできた。
気が付いたら私だけ少し離れた場所に倒れてて、でも左足が凄く痛くてそばに行けなかった。
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも動かない。
皆の体から流れる血を見ているしか出来なかった。
手を伸ばしても届かない。
這って行こうにも動けない
死というものが迫る様を私はただ見ているしか出来なかった。
「私のせいで…マルコ隊長が死んじゃうって…」
「でも俺は怪我なんかすぐに治る」
その言葉に私はハッとする。
さっき私が言った言葉と一緒だ。
「皆お前と同じだよい。治るって分かってても大切な家族を自分の手で傷つけたくなんかねぇんだよ」
大切な家族って言ってくれるのか。
この船に乗船してから日も浅い、得体の知れない私を…。
また零れそうになる涙を奥歯をぎゅっと噛んで我慢する。
泣いちゃいけない。
今泣くのは失礼だ。
ぐっと目に力を入れてマルコ隊長を見れば、今度は優しく笑ってくれる。
「…ごめんなさい」
「それはお前が追いかけまわした奴らに行ってやれ」
「はい」
しっかり頷くと、マルコ隊長はまたワシワシと私の頭を掻き混ぜる。
それからよし、と立ち上がった。
「それでも…」
「……?」
「どうしても好奇心が抑えられねぇんだったらお前に俺を刺させた分、俺がつき合ってやるよい」
「……ッ」
駄目だよマルコ隊長…
そんな安心させてくれるような優しい顔で笑われたら、せっかく我慢したのに泣いてしまう。
こぼれおちた涙を袖でごしごしと拭いて顔を上げる。
「だからもう他の奴らにお前を傷つけさせるなよ?」
「…はいっ」
伸ばされた手に捕まって立ち上がる。
自分の体の事はどの道知らなくてはいけないのだ。
知らないままだと万が一の時に足手まといになりかねない。
マルコ隊長は共犯だと言った。
仲間殺しをタブーとしているこの船で、その禁忌に迫る行為をする事、させる事。
それにとことん一緒に付き合ってくれると。
「ありがとうございます」
「まぁ…覚悟はしておけよい」
「……?」
さっきとはうって変わって意地の悪い笑みを浮かべながらヒラヒラと手を振り船内へと入っていくマルコ隊長。
その後ろ姿をいつの間にか起き上ったサッチ隊長の横で見送った。
「あーあ。メイ、覚悟しとけよ」
「え?」
「まー頑張れ」
「???」
サッチ隊長が手を伸ばすから、後ろに体重をかけながら引っ張り立たせた。
触れた手は冷たくなんかない。
生きているぬくもりを感じて私は噛み締めるようにぎゅっと目をつぶった。
「ほれ、刺せよい」
握らされたナイフとマルコ隊長を交互に見るも、マルコ隊長は変わらずちょっと怖い顔で私を見ている。
つーっと刃に指を這わせてみると切れ味はバッチリですぐに指の腹に赤い線が入る。
それがどうなるのか様子を見ていると、突然ガっと胸倉をつかみあげられた。
「だれが自分の指切れっつったよい!」
「す…すみません!!」
すぐに手は離されたけどそのままナイフを持った手を掴まれた。
とっさに手を引くもピクリとも動かない。
ならばと手を捻ってみたけど握力の差からか、本来なら腕が外れるはずなのにやっぱり外れない。
掴まれただけならまだしも、グイッと引っ張られてマルコ隊長のお腹目掛けてナイフが動く。
「マルコ隊長!?やめてください!」
「駄目だ」
「や…やだっ!!」
掴まれたいない手をマルコ隊長の手にかけてどうにか指を引きはがそうとするけどやっぱり外れない。
わざとなのか、ゆっくりゆっくりとマルコ隊長に向かって手を引っ張られる。
「お願いします!マルコ隊長手を…っ!!」
「メイ!」
刃先がぴたりとマルコ隊長くっついたところで名前を呼ばれてビクッと顔を上げる。
マルコ隊長はまっすぐに私を見ていた。
私はと言えば、どうにか手を離してもらいたくて情けないけどボロボロと涙を流している顔をさらしている。
「何で刺せない?」
「だって怪我するじゃないですか!」
「それをお前は他の奴にやらせようとしてたのは分かってるのか?」
「でも私は治るし…」
さっき切った指もすぐに治っている。
だから、と言葉をつづけようとしたけど、不意に手を引っ張られて感じた感触に思わず悲鳴を上げた。
「いやだぁぁぁぁぁっ!!」
「メイよく見ろぃ」
「……?」
ナイフは確かにマルコ隊長の体に刺さったけど、その瞬間ぶわっと青い炎が巻き起こり血一滴も流すことなく治ってしまった。
そうだった、マルコ隊長は不死鳥で怪我しても治るんだった。
目の前で起こった光景にほっとしたのと同時に腰が抜けてその場にへたり込んだ。
手だけはまだマルコ隊長に握られていたからぶら下がるような感じになってしまっている。
未だ止まることのない涙を流したまま顔を上げるとマルコ隊長はしゃがみこんで私の顔を覗き込む。
私の手を掴んでた手を離して、その手でぐしゃぐしゃと頭を掻きまぜられた。
「俺もお前と一緒だよい」
「一緒…?」
「俺もお前と一緒で怪我してもすぐ治る」
刺したはずのお腹を見ればそこにはやっぱり傷なんてなくて逞しい腹筋があるだけだった。
その事に安心してさらに涙があふれてきた。
よかった…
ぐっと目を腕でこすって無理やり涙を止める。
いつまでも泣いていられない。
マルコ隊長がなんで私に刺せなんて言ったのか、考えなくっちゃ。
でもその答えはすぐにマルコ隊長がくれた。
「お前、その能力に振り回されてるだろ」
「振り回されてる…?」
「好奇心が抑えられないんだろ」
それはあると思う。
怪我するのは痛いし、無茶したら死ぬのは当たり前。
だから今まで無意識のうちにセーブしていたことが、死なないと頭で理解した途端に色々試したくなったのだ。
「俺やエースもそう簡単に怪我をしない。でもメイお前は血が流れるだろうが」
「はい…」
でも傷がつかないのは一緒だ。
だからその過程が知りたいと思ってしまう。
私がそう思っていることが分かっているのか、マルコ隊長は一つ息を吐く。
「さっき俺を刺した時どう思った」
「……マルコ隊長が…死んじゃうって思いました」
お腹から血を流して、その場に崩れ落ちる。
流れる血はどうしても止まらず、そのまま体が冷たくなる。
『あの時』の事を思い出して思わず体を震わせる。
あの時…
あれは中学を卒業した日、家族みんなで出かけた。
今まで持っていなかった自分のスマホを買ってもらって、早速一枚写真を撮った。
夜は外で食べて、その帰り道…
横断歩道を渡っていたら信号無視のトラックが突っ込んできた。
気が付いたら私だけ少し離れた場所に倒れてて、でも左足が凄く痛くてそばに行けなかった。
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも動かない。
皆の体から流れる血を見ているしか出来なかった。
手を伸ばしても届かない。
這って行こうにも動けない
死というものが迫る様を私はただ見ているしか出来なかった。
「私のせいで…マルコ隊長が死んじゃうって…」
「でも俺は怪我なんかすぐに治る」
その言葉に私はハッとする。
さっき私が言った言葉と一緒だ。
「皆お前と同じだよい。治るって分かってても大切な家族を自分の手で傷つけたくなんかねぇんだよ」
大切な家族って言ってくれるのか。
この船に乗船してから日も浅い、得体の知れない私を…。
また零れそうになる涙を奥歯をぎゅっと噛んで我慢する。
泣いちゃいけない。
今泣くのは失礼だ。
ぐっと目に力を入れてマルコ隊長を見れば、今度は優しく笑ってくれる。
「…ごめんなさい」
「それはお前が追いかけまわした奴らに行ってやれ」
「はい」
しっかり頷くと、マルコ隊長はまたワシワシと私の頭を掻き混ぜる。
それからよし、と立ち上がった。
「それでも…」
「……?」
「どうしても好奇心が抑えられねぇんだったらお前に俺を刺させた分、俺がつき合ってやるよい」
「……ッ」
駄目だよマルコ隊長…
そんな安心させてくれるような優しい顔で笑われたら、せっかく我慢したのに泣いてしまう。
こぼれおちた涙を袖でごしごしと拭いて顔を上げる。
「だからもう他の奴らにお前を傷つけさせるなよ?」
「…はいっ」
伸ばされた手に捕まって立ち上がる。
自分の体の事はどの道知らなくてはいけないのだ。
知らないままだと万が一の時に足手まといになりかねない。
マルコ隊長は共犯だと言った。
仲間殺しをタブーとしているこの船で、その禁忌に迫る行為をする事、させる事。
それにとことん一緒に付き合ってくれると。
「ありがとうございます」
「まぁ…覚悟はしておけよい」
「……?」
さっきとはうって変わって意地の悪い笑みを浮かべながらヒラヒラと手を振り船内へと入っていくマルコ隊長。
その後ろ姿をいつの間にか起き上ったサッチ隊長の横で見送った。
「あーあ。メイ、覚悟しとけよ」
「え?」
「まー頑張れ」
「???」
サッチ隊長が手を伸ばすから、後ろに体重をかけながら引っ張り立たせた。
触れた手は冷たくなんかない。
生きているぬくもりを感じて私は噛み締めるようにぎゅっと目をつぶった。