君死にたもう事なかれ!
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「メイ、GO」
「あいあい!」
遠征帰りの車の中、引率の先生に窓の外をくいっと指さされた。
国道に出たいんだけど、道が分からず聞いてこいとの指示である(因みに今時カーナビ無し!)
先生が指さす先には広そうなさくらんぼ畑と、そしてその中で作業しているおばあちゃんがいた。
確実に地元の人だと思う。
返事をすると隣に座ってた先輩(ちなみに超絶可愛い)がにっこりと手を振ってくれた。
「メイちゃん行ってらっしゃーい!」
行ってきます!
超行ってきます!!
その笑顔で送り出されるのならばもう地の果てまでも!!!
先輩って超小柄で超美人なのにインターハイ選手なんですよ!
部活何入ろうって見学してた時に先輩が道場からひょっこり顔出して『いらっしゃーい』なんてニッコリ手招きされたからド素人のくせにそのまま他見学しないで空手部入っちゃったよ!!
現在可愛くも鬼強い先輩にビシバシしごかれ中です!
先輩大好き語りはこの辺にしておいて。
ド素人だけど今回は先輩の遠征の付き人として公休でこの地に来ていた。
ってわけで下っ端はパシリに行ってきます!
このまままっすぐ行けば国道にぶつかると教えてもらい、ついでにポリ袋いっぱいにさくらんぼをもらった。
売り物にならなそうなものを選別していたんだって。
おばあちゃんありがとう!
「先生!さくらんぼ頂きました!」
「俺はいらないからふたりで食いな」
車に乗り込み報告すると先生からありがたいお言葉が。
先輩とやったーとハイタッチしながらふたりでもしゃもしゃいただく。
「んまーい!」
「本当にね!」
流れる景色を見ながらもしゃもしゃ。
時々さくらんぼの茎を口で結ぶアレなんかやってみたり。
他愛のない話をしながらもしゃもしゃ。
そんな時、ふと手に取った一つのさくらんぼ。
「せ…先輩…!!見てください!悪魔の実!!」
「あはは!ほんとうだそっくり!」
先輩笑顔がまぶしいです!(鼻血)
それにしても本当に悪魔の実にそっくりのさくらんぼ。
ぐるぐる変な模様が出来ていて、これは確かに売り物にならない。
…いや、ある意味なるかもしれない。
数があればの話だけど一個ではやっぱり無理だろうなー。
とりあえず珍しいので写真を撮っておこうっと。
「先輩、これ食べたら何の能力発動すると思います?」
「えー?とりあえず…カナヅチ?」
首をかしげる先輩可愛いです!!(鼻血)
でもね、先輩…
「先輩、残念ながら私、元からカナヅチなんです」
「あらら、もうすぐプールの季節だけどうちの高校、一時間も休めないよ?」
「そうらしいですねー」
例え女の子の日だとしても休めば冬のプールが緑色になった頃に補講で休んだ時間だけ入らなくてはいけないらしい。
緑色のプールなんて無理。
万が一溺れて水飲んだらお腹壊しちゃう…!
「まあ、プールの授業って言っても本当ただの水遊びだから気楽に頑張りなよ」
「そうします」
「私は今のところ休まず入れてるけど、冬の補講本当悲惨らしいよ。女の子の日ぶつからないといいねー」
「本当に…」
「過去にタンポン使って冬の補講を免れた先輩がいたらしいよ」
「ぎゃっ!ツワモノ!!私は無理です。重い方だからむしろ学校休みます」
「お前らいい加減下ネタやめろよ!はしたない!!」
運転しながらバックミラーで先生がギロリと私たちをひとにらみ。
ごめんね先生!
「でも先生!マジで死にそうなんですよあの痛み!!」
「死にそうならいっその事その悪魔の実で不死身になっとけよ」
先輩との会話を聞いてないかと思いきや、案外乗ってくる先生。
女の子の日が死にそうに痛くても、本当に死ぬわけじゃないので不死身になっても何の意味があるのかわからない。
というか、既に不死身のキャラがいた様な…
「先生、すでに不死身系なら不死鳥のマルコがいるよ?」
先輩も案外詳しい。
そうそう、白ひげ海賊団の一番隊隊長だったよね。
「あれは動物系の幻獣種だろ」
てか、先生案外ワンピース詳しいな。
へー、マルコって動物系幻獣種の悪魔の実の能力者だったんだ。
あ、だから不死鳥か、なるほどなるほど。
アニメは小さい頃から毎週見てるし、友だちから借りて一通り単行本は最新刊まで読んだけど、あんまり細かい設定知らないんだよね。
「フシフシの実で不死身人間かー…でも溺れ死ぬんですよね?」
「唯一の弱点だな」
バックミラー越しに意地の悪い笑みを浮かべる先生。
それ、不死身じゃないじゃん。
そんなことを考えてたらあれだけあったさくらんぼが残りわずか。
…先輩、その細い体のどこにしまったんですか?
私もさくらんぼ食べたいけど、悪魔の実みたいなさくらんぼを今手に持っているので次のを取るのをためらわれる。
「…先生も見ます?悪魔の実」
「ただのさくらんぼだろ。早く食っちまえ」
「はーい」
こんな珍しい形のさくらんぼなんて二度とお目にかかれないだろうに、先生ドンマイ!
まあ、後から見たいって言うんだったら写真を見せてあげよう。
そんなことを思いながらパクっと口に放りこんだ。
「……マッズーーー!マズ…超マズい!!」
あまりにもマズさにびっくりした拍子にごくりと種ごと飲み込んでしまった。
今まで食べてたさくらんぼが甘くておいしかったから超びっくりした!
腐ってたのかな…
って腐ってたの食べちゃった!
うげー!なんて思ってたら突然先生が悲鳴を上げた。
「うわっ!」
「え?ギャッ!!」
黒猫が飛び出してきたようだけど危機一髪。
まだ私道をノロノロ運転だったからキュッと車は停車した。
シートベルトをしているからぶつからないとは分かっていたけど助手席と衝突しそうになってぎゅっと目を閉じた。
ドン、と体に衝撃ひとつ。
シートベルトにしてはやけに下っ腹に衝撃が来たなー。
そんなことを思いながら目を開けてみれば…
「死ねサッチ!ゼハハハ…ハ?」
「……ん?」
目の前には助手席ではなくて大柄なオッサン。
服は真っ赤に染まっていて…
その笑い声…と……『サッチ』?
なんとなくちらっと振り返ると…
茶髪の今時はやらないリーゼント。
多分この時の頭の回転は今までにないくらい超早かったと思う。
この笑い声に、『サッチ』、そして死ねという言葉。
もしかしたらエースが白ひげ海賊団の船から飛び出して行ってしまった原因が今ここで繰り広げられようとしているのではないか。
先ほど衝撃を感じた下腹部をチラリと見ると、自分の体からナイフが引き抜かれているところだった。
私はそのナイフを追うように目の前にいるオッサンに飛びつく。
そして耳元で…
「ぴぃぃぃぁぁぁあああああああ!!!」
声の続く限り大声を出してみた。
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