yhj series
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あれから、帰るかといえばそうではなく。
「雨!!みんなになんてことするのさ!!!
「お前のためやぞ」
門の中から安倍兄弟の声が聞こえる。
「好き勝手言いやがって」
泥たんが手袋を外し、豆ちゃんが袋を被る。
二人とも化けて門の隙間から中へ入っていった。
「ブラコンも大概にしとけよコラァ!!」
「それをシスコンが言うかね」
「泥田君狸塚君!!」
中からバタンと何かが倒れるような音がしたかと思うと、「あ…雨!?」と晴明センセの声がしたのでおそらくお兄さんが倒れたんだろう。
「と、とりあえず雨がごめんね、皆入って!!」
「大丈夫なの?お兄さん。」
「目ぇ回してるじゃねえか」
「いや~ まさか雨がここまで妖怪が苦手だったなんて…」
「ごめんなさいね雨が失礼なこと言って」
お兄さんは晴明ママの膝に頭をのせられ団扇でパタパタされている。
めっちゃうなされてるけどだいじょぶ?
「いつだったか突然晴にべったりになってね~」
「どこでブラコンこじらせたのやら」
「過保護というかなんというかだな」
「でもそうやって雨がガンガン喧嘩売ってくもんだから…ボク友達できなくてさ…」
「「(それは…気の毒だな)」」
「そうだ、みんなにお願いがあるんだけど、いいかしら」
「なんですか?」
「お祭りのお手伝いとかしてもらえたりしないかしら?」
「お祭り!?」
「そうなの、うちの神―――…コホン、家の隣の神社で今夜お祭りがあるの。私たちも屋台のお手伝い頼まれてるんだけど、あなたたちも手伝ってくれないかしら」
「こんな時期に祭りなんてあんのか?」
「うちの…隣の神社、藤の花が今見ごろでさ
毎年この時期に ふじまつり をしてるんだ。それで僕もお手伝いでうちに帰ってきたって訳。雨があんな状態だから手伝ってくれると助かるんだけど」
皆で顔を見合わせる。
「お手伝い交代で屋台回ったりしていいんですか??」
「ええ、神社も好きに見ていってね」
「僕やりたいー!」
「私もやりたい!」
「そうだな」
「じゃあお手伝いさせていただいていいですか?」
「もちろん!こっちがお願いしてるんだから助かるわぁ!!」
昨日からはじめての経験ばっかりで楽しいなぁ
ところでお兄さんはいつ起きるんだろう
「おお~~!!
屋台がいっぱいある!!!」
「じゃあ金魚すくいと射的を手伝ってくれるかな?」
「じゃあ俺射的がいい!!」
「俺も!」
「にしてもモチベーションの上がんねー景品だな、これで客くんのか?」
「じゃあその辺に生えてるマンドラゴラも景品にしよう」
「ソレその辺に生えてんの!?」
「ホラこうしたらよくない?
みんな一筋縄ではあたらないからスリルがあるよ」
当てれるもんなら当ててみなと喋るマンドラゴラが飛んできたコルク弾を「笑止」とちいさなお手手ではじき返す。
「おい晴明危ないぞ」
いつの間にやら佐野っちに的にされている晴明センセすれすれに紅ちゃんがコルクを飛ばす。
「よっしゃViiUゲットだぜ!!!」
「さすが紅ちゃん上手!」
「あ…当ておった…じゃなくて!!!なんで客になってんのさ!!
もう!!もうすぐお客さん来ちゃうよ!!あとココは妖怪学校じゃないんだから妖怪的なのはだめだよ!!」
「俺は別に妖怪的じゃなかっただろ?」
「そうだねでも一番非人間的なことしてたのは君だからね」
「よーし、じゃあ準備すっか!」
「おー!!」
雨お兄さんが準備に加わってくれたので、金魚すくいに安倍兄弟と佐野っち、射的に紅ちゃん泥たん豆ちゃん私になった。
「すごい賑わってきたね」
「そうだな、こんなに人が来ると思ってなかった」
「…アレ何やってんだアイツ」
「晴明君小さい子に的にされてんじゃん」
「晴明センセぶれないね~」
…あれ、
えっ
駅のナンパ男じゃね?
「べ、紅ちゃん…あれ…」
「ん? ………お…おい泥田…」
お兄さんに退散させられたナンパ男が大阪のおばちゃん風の熟女と腕を組んでお祭りを回っているのが見えた。
あれから何があったの…
「ま、まあ…幸せそうでよかったじゃない」
「そ、そうだね…」
「衝撃だわ」
「あっ あの浴衣可愛い」
赤い、椿の描かれた浴衣の女性が、男性と仲良さそうに手をつないで目の前を通り過ぎて行った。
私もいつかあんなのしてみたいなぁ
「いいなぁ」
「さっきのカップルか?」
「うん、あんなラブラブなのいいよね~」
「名前ちゃんはなんで彼氏作らないの?」
「別に好きな人に告白されたわけじゃないのに付き合う必要ないじゃない?フツーに紅ちゃんと一緒にいたいよ」
「そうだな、いつか彼氏ができても私達は一番同士だ」
「ね~♡」
「(紅子ちゃんに勝てる気がしない)」
人の出入りがある程度落ち着いてきた気がする…
先に泥たんと豆ちゃんに回りに行ってきてもらおうかな?
「そろそろ落ち着いてきたし、お祭り見て回ってくる?」
「そうだな 泥田と名前いってこいよ」
「へ?」
私紅ちゃんと行こうかと…
「え、紅子ちゃん」
「四の五の言わずに行ってこい」
「いってらっしゃ~い」
ニヤニヤした二人に背中を押されて、お店番を任せて後にした。
「…とりあえず、いこっか」
「そ そうだな」
行く宛もなく、名前ちゃんとぶらぶら歩く。
「そういや妖怪なのに神社で気分悪くなったりしないんだね、せっかくの神社だしお参りしよっか?」
「おー、そうだな」
妖怪がお参りってなんか変な感じがするけど、一応やっとくか。
拝殿に向かって歩を進めて段差を登ると、鈴をならして、名前のあとを真似て二回礼して二回拍手してもう一度頭を下げる……時に、願い事をする。
「………………よし、これからどうしようか?」
「なんか食べもんでも買うか」
「そうしよ!
なんか真剣に願い事してたね、何お願いしたの?」
「っ、あー…頭良くなるように!」
「じゃあ向こう帰ったら、少しでもそうなるようにお勉強しよっか」
「げっ 、そういう名前ちゃんは何お願いしたんだ?」
「えへへ、私のは秘密だよ〜」
「ずるくねえ!?」
それから名前ちゃんがいちご飴とこんぺいとう、俺はたこ焼き、それとカステラを買いに行った。
屋台から離れた場所で少し腰掛ける。
「うーん、たこ焼き美味しいなあ」
「美味え」
「そーだ、今度みんなでたこパしよう!」
「いいなそれ!」
「私の部屋にー、紅ちゃんでしょ、豆ちゃん玉ちゃん佐野っち連くん狢んギダちゃん…」
「柳田!?」
「うーん、異物混入しちゃうか…………晴明センセ呼ぶ?」
「なんかろくなことにならなさそうだな……」
「…確かにそうだね………また改めて考えるか
あっカステラひとつちょーだい」
あーん、と口を開けて催促してくる名前ちゃん。
一瞬戸惑うけどひとつつまんで口に放り込んだ、ときに微かに指に名前ちゃんの唇が触れて意識する。
「泥たんもいちごあめたべる?」
「、もらう」
「泥たんの瞳の色といちごの色、お揃いだね」
その言葉に言い表せない気持ちになりながら「はい、あーん」と差し出してきたそれに齧り付くと、パリッとした甘ったるい飴が歯にまとわりついてきて、いちごは酸っぱくじゅわっと広がる。
残りを名前が食べきると「そろそろいこっか」と立ち上がる。
俺はつい、「―――…やっぱ お祭りに二人って…それっぽいよな」なんて溢した。
「それってなぁに?」
名前ちゃんがからかうように笑いながら聞き返してくる。
「それって、あれだよ、……恋人っぽいなって」
「(きゅん) そうだねぇ、手でも繋ぐ?」
おどけるように手を差し出してきたので、勇気をだして名前ちゃんの手を握った。
自分から差し出してきておいてびっくりしたような表情のあとに赤面する名前ちゃん。
「…ひ、泥たん、手ぇおっきいね」
「名前ちゃんが小さいんだろ」
名前ちゃんがどぎまぎしてるのが珍しくて、俺は逆に照れがひいていく。
歩きながらしばらく無言が続いた。
「あ、そ、そういや佐野っちたちのところ行ってないね。戻る前に金魚すくいでもする?」
「…いや、いい」
「え、寄らなくていいの?」
「まだ手ぇ放したくない」
ストレートな言葉に名前ちゃんはボン、と音がしそうなほど真っ赤になって、「あああ私ゴミほってくる!先いく!戻る!紅チャン!!」と言いながら先に行ってしまった。
なるほど名前ちゃんは照れると逃げるんだなって学習した。
………これで少しは、意識してもらえたか?
ちょっと眠たい翌朝。
「じゃあ晴、頑張ってね…!」
新大阪駅まで晴明センセのママと地縛霊、なら動けないから…妖精さん?がお見送りに来てくれてます。
「ありがとうお母さん」
「ちゃんとご飯食べるのよ!!」
「おと…妖精も応援しとるでな!」
今お父さんて言いかけてなかった?
「あばよドッペル!!ちゃんとブラコン治せよ!!!」
「あばよチビ妖怪」
「お兄さんお兄さん」
「なんや?」
「はい、これ」
忘れちゃいけない紅ちゃんの反応のために、LINOのIDを書いた紙を渡すと怪訝な顔で見られる。
うーん、こんな反応新鮮だなあ。
「……妖怪のら登録せんで」
「あら、私妖怪じゃないよ」
「えっそうなん?」
「うん」
悪魔だもん、嘘ついてなーいよ♡
「………なら、まあ登録したってもええ」
「やった♡晴明センセの情報とかたまに送るね、お兄さん」
「それをはよ言えや
…あとお兄さんは何や気色悪いからえー加減やめ」
「そう?雨ちゃん?」
「飴ちゃんみたいに言うな」
「んーもう、じゃあ雨くん!」
「しゃーなしそれでええわ」
「上からだなあもう」
用件が済んだので紅ちゃんのところに戻る。
「紅ちゃん!雨くんのIDゲットできるよ!」
「は?お前また惚れさせたのか」
「違うよ!紅ちゃん雨くんに出会ったときキュンときてたっぽかったから……」
「……私のためとは非常に、非常に嬉しいが、勘違いだ、名前」
「嘘だぁ!赤くなってたもん!」
「紅子ちゃんに春かぁ」
「ブン殴るぞ泥田」
「何で!!」
『まもなく22番線に10:10発のぞみ99号到着いたします』
「しまった!!話し込んでたらもう新幹線来ちゃったみたい、いまアナウンスされてるやつだ!!」
「えっ」
「急げー!」
「みんな走って!!」
晴明ママたちとさよならしてみんな急いで新幹線のホームまで走った。
さらば大阪!