ドタバタと急いでホームまで階段を走る。
ついたホームの時計を見て、よしぎりぎり、と新幹線に乗ろうとする前ふと時計の隣の電光掲示板が目に入った。

…………ちょっと、これじゃない！！！

気づいて、咄嗟に目の前に居た佐野っちを掴んだ。
掲示板に広島博多行きってあるじゃん！私らいくの東京方面だよ！！
そんで今チケット確かめたらのぞみ99じゃなくて9号じゃん！
10:10じゃなくて10:20じゃん！晴明センセのお馬鹿！！
そして「皆、降りて」と言おうとした瞬間無情にも閉まるドア。嘘やん。


「苗字？」
「………次の停車どこだよ…」


皆疲れて座りこんでたじゃん…こっちみてないよ…そのうち私らいないの気づくだろうけど……
そのとき、息を切らしながら雨くんが階段を駆け上がってきた。


「遅かったか……」
「気づいて追いかけてきてくれたんだ」
「おん…お前ら気ぃついて乗らんかってんな」
「ギリギリね」
「はあ……ほな俺は帰るわ」
「うん、またね雨くん」


さて、これからどうしよう？
とりあえず乗らなかった訳を佐野っちに伝える。


「なるほど…あのカスのせいか」
「偶然気づいたけど私らだけじゃなあ…どうしよう？とりあえず連絡かな」
「そうだな、豆が心配だ」
「紅ちゃん紅ちゃん……」


ぷるるる、と通信音がして、『名前、乗り遅れたのか！？』「あっ紅ちゃん！！」つながった。

「その電車反対行きだよ！！」
『何！？』
「気づいて私咄嗟に佐野っち捕まえちゃって…」
『佐野もいるのか』
「豆はちゃんとそっちにいるよな？」
『ああ、ちゃんといるぞ』
「よかった…」
「どうしよう、待ってたらいい？」
『うーん、……』
『別で帰ろうよ！』
「え？」
「豆ちゃん？」
『また待合せたりするのもややこしいし、ここから別行動でいいんじゃない？』
「……うーん、」
「まあ、豆がいいなら…」
『せっかくだから大阪観光でもしてきたら？』
『おい豆』
『というわけだから、名前ちゃん、佐野君を頼んだよ〜』
「はーい！頼まれた～！！
紅ちゃん、気を付けてね！！変なのに絡まれたら晴明センセを盾にするんだよ！！」
『任せろ……なあ名前』
ぷつっ と電話が切れた。


「あれっ、切れた……？かけ直そう」
「別にいいだろ、要件は済んだんだし何かあるなら向こうからかけなおしてくるだろ」
「………そっか。どうする？私ら、20分の電車で帰る？」
「……豆の言ってたとおり、せっかくだから観光でもしたらいいんじゃねーの？」
「へっ」
「別に嫌ならいい」
「えっ嫌とかじゃないよ、意外だっただけ！！
そうだね、観光しよっか！！」
「おー」
「せっかくだったら、切符もったいないし京都まで行かない？
京都、狸のものたしかわりとあったよ、ごはんたべるとことか、お寺とか」
「行く」
「さすが早いなあ、じゃあいそご、乗り換え後少しだ！！」


新幹線でとりあえず京都に向かう。切符もったいないけど、こんな機会めったにないししゃーない！












「狸がたくさん……」


狸がたくさん飾ってあるお寺についた。
佐野っちが目を輝かせてる。本物の動物じゃなくてもオッケーなんだねぇ


「来てよかったねぇ、あんまり人もいないしなんか落ち着く」
「そうだな、晴明が来てからそういやなんかゆっくりした覚えないわ………」
「佐野っちセンセによく巻き込まれてるよねえ」


けらけらと笑っているとひと睨みされたので視線をそらした。
もう佐野っちってばこわーいなぁ。
そういえば、


「チョット心配だったんだけど、佐野っち別にお寺入っても気分悪くならないんだね」
「ああ、まあな……お前は？」
「私はどちらかというと教会じゃない？別にそれでも気分悪くなったことないけど」


ふとスマホを見るとお昼時。


「もうお昼だね、もう少し境内回ったらお昼いく？」
「そうだな、」
「ふふ、狸いっぱいで可愛いね」
「ああ」


嬉しそうな佐野っちがなんだか可愛くて笑ってしまう。
なんだか普段より幼く見える。


「お昼はがっつりがいい？」
「いや、べつになんでもいい」
「じゃあ、このカフェいかない？さっきから探してたんだけどなんかね、このお店小動物とかがいて、触ったりもできるみたいなんだよ！！」
「！！　行きたい」
「ふふ、決定だね！！」