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三倍アイスクリーム!!!feat.ピーニャ
「えっと集合場所は喫茶室なぎさ前ねえ……っと」
アローラ地方を飛び出して、ここはパルデア地方ピケタウン。ミミはマップアプリを表示したスマホを片手に壊れたコンパスの如くその場でくるくると回っていた。リザードンポーズには死んでもならない。
傍らに控えるパートナーが緑の尻尾も静かにその末を見届ければ、暫くしてそのコンパスは回ることを止め腕と指をピンと真上へ立てた。水平に振り下ろして一つの方角を指す。日が帰って行った西の空は既に真っ暗だ。
「にぃに、あっちだね」
『逆です。マップの向きを北に固定したらどうですか』
「……いいと思う。そうする」
アプリに案内されるルートをなぞり始めるミミとミュウツー。だから何だという訳ではない話をしながら採掘の町の坂道を下っていく。
前回テーブルシティ集合の時は店舗を間違えたからなあ。
同じ店が無駄に密集していますからねあの街は。
とそういう話題になってミュウツーマネージャーから念を押された彼女は、同じミスは繰り返さないよ、と強気に答えたが念の為に己のスマホを見直した。指差し確認入力OK!
「後はここから道なりに徒歩2分。集合時間5分前には着くね」
『ですが、彼の性格ならもう待っている筈ですよ。ほらレッツゴー』
「はいはいレッツゴーレッツゴー」
今回会う人物なら遅刻をしても、急だったもんね、ごめんね等と反対に謝って来そうではあるのだが。冷静に急かされて石畳を蹴り出す。氷上を滑るように低空飛行するエスパーポケモンを背後に引き連れて、ミミはポーンポーンと跳ねるように下り坂を進んだ。
見えて来た待ち合わせ場所の前には白い帽子の男の子が立っていた。脇に抱えているPCで暇潰しするでもなく遠くを見渡していた彼に早々と見付けられる。
「ミミくーーんっ!!」
勇気凛々元気溌剌、大きな声。発光エフェクトの幻影を見せる聖属性の笑顔。名を呼ばれていない仕事帰りの働き者達まで声の方を注目する。
あわわわとスピードアップした彼女を見たらアッと思ったらしい。その子は風を切る程大きく振っていた手を首に掛けたヘッドフォンへ戻して見る見るちいさくなる俯く。
そうしてみても居た堪れなくなったのだろう。彼はスタスタスタと逃げ足早足でミミとの合流を急いだ。
「ピーニャくんごめんね、お待たせしたねっ」
「いやいやいいよ、急だったもんね。来てくれてサンキューだよ」
ここまで来れば大声不要だ。背丈の高いピーニャがミミに合わせて、右頬へキス、左頬へキス、パルデア式の挨拶をする。
カントー育ちのセニョリータは未だにこのDos besosに緊張するそうだが初めの頃よりは慣れてきた様子。
ドキドキされたらボクまでドキドキしちゃうって。
シンクロ的な?
そうそうシンクロ的な?
そんな会話があったのはこの地方の挨拶を教えてと頼まれた時だった。
しかし彼、今は挨拶なので特別意識することがないけれど、今また頬へキス出来るかと問われたら出来ないピュアピュアなボーイなのだ。
「それよりごめんね?恥ずいことになっちゃって。ちょっとテンション上がってるかも……。
仕事で呼び出しておいて何だけど、ミミくんに会うの楽しみでさ」
なんて、はにかみつつも話す素直な後輩は先輩から頭を、否、頭までは届かないので右と左の頬を、両手で挟まれてうりうりと潰された。
上機嫌な先輩から後輩は次のように思われている。赤い帽子のあの人をファイティングドッグに例えるならピーニャはセラピードッグだなと。
「ちょ……!やめてよ~!」
「あっはっはっ可愛い奴めえ」
言葉では抵抗している風だがその顔はニッコニコなので良し。
にぃにと会うのも楽しみにしてたよ!そう言われて当ポケモンも目を細めている。ミミがミュウツーも満更でもなさそうだと態々伝えたのはテレパシーは秘密だからだった。
「……にしても。いやあ……ピケタウンには初めて来たけど、面白い町だねここ」
「初めてなんだ?」
「バッジコレクターとして世界各国津々浦々旅をして来たけど、ジムがない所はノーマークだったから」
洞窟住居が建ち並ぶ町並にしっとりした岩の呼吸を感じながら。家々に灯る白や帰り道を行くトロッゴンの石炭の赤。キラキラを映す彼女の瞳へピーニャは微笑みを返した。
彼とミミの出会いも、ダンバッジくれー!という道場破り紛いの事案だったりして。懐かしい。
「じゃ次いでに観光していきなよ。ボクで良ければ付き合うし」
「そうしようかな。
それじゃ仕事仕事!今回の依頼内容を聞いても?」
「OK!助けてほしいのはポケモンの保護……まぁ、先ずは捜索からなんだけどさ」
喫茶室に入るか伺われたが、長くはならない話だしとアイスかクレープどちらがいいか尋ねてそちらへ移動しつつ。
スマホロトムにガイドを頼んでいる依頼主の横ではアナログ派がヒップバッグから取り出した手帳と鉛筆でメモを始める。不注意になりがちな前方は優秀ミュウツーがカバー。
「どこを怪我しているのかな?」
「怪我の状態は掴めてないね」
「ほう?なのに保護を?」
「それが……そのポケモン、ガラルのポニータっぽいんだよ」
「何とおっ!?」
驚くのも無理なかった。ガラル地方は所謂島国、泳げない飛べない陸上グループの野生ポニータ1匹が越境して来られる場所ではない。
「シュウメイとビワちゃんが水色のたてがみの白い馬ポケモンを見たって言うし、気になるっしょ?それでアカデミーで生物の先生に訊いたらさ、特徴が類似するってさ」
「誰かが逃がしたのか……。何にせよ早く保護してあげたいねっ!」
一ポケモンレンジャーとして、生態系を乱す人為的行為には早急に対応して行きたい所存である。ミミはフンゴフンゴと息巻いている。
ポケモン第一。やる気。乗り気。気後れもなければ拒否もしない性格を頭では理解していたが、その反応を受けてピーニャは漸く安堵した。
「取り敢えずは東3番エリアをモトトカゲ走らせて捜す感じね。ボクのは3XLサイズで2人乗りOKだし」
「了解っ!」
手分けした方が良くない?とか言うのは良くない。二重遭難等の危険性もないが、夜間だし見落とし対策のダブルチェックも大切だからということにしておこう。
そして2人はアイス屋台、あまいやつめたいやの前に到着。Hola! と販売員と挨拶を交換する。
「アイスの種類はどれがいいとか、わかる?」
「エスパータイプのポケモンに遭遇し易くなるのって、チョコチュロスなんだよね……。
ピケにチュロス屋はないし、今日は好きなやつでいいんじゃないかな」
ここでパルデア文化、食事パワーについて。
当たるも八卦、当たらぬも八卦、当地方ではポケモンを捜したりする時に願掛けとして特定の食事を摂って行くことが多いのだ。食材の摂取を優先して、挟まないサンドウィッチを好むポケモントレーナーも多いのだとか。
「にぃにはチョコミントだよねえ」
「ミント嫌いのポケモンって見ないよね」
「……あ、ああ、うん、人間は意外と多いよね、え、ええとどれにしようかなあ私もチョコミントかなあ」
……だからドラッグミントをまんまと食わされて、人間好みに調教されて仕舞う輩が多いんですよね……。
ミュウツーが溢した哀傷は拾わずにそのまま土葬する。ミミはそっと手帳を閉じてバッグの奥へと仕舞い込んだ。
「あ、でもこの、コジオソルトも気になる」
「じゃボクがコジオソルト先に買うよ。それで味見したらいいじゃん」
「神対応……!天才!いいのっ?」
「いいって!こんなことでそんなに喜ばなくていいってば……!」
わあいと呑気に万歳をする彼女から視線を逃がして、照れるピーニャは大きな声で販売員へ声を掛けた。
「えっと集合場所は喫茶室なぎさ前ねえ……っと」
アローラ地方を飛び出して、ここはパルデア地方ピケタウン。ミミはマップアプリを表示したスマホを片手に壊れたコンパスの如くその場でくるくると回っていた。リザードンポーズには死んでもならない。
傍らに控えるパートナーが緑の尻尾も静かにその末を見届ければ、暫くしてそのコンパスは回ることを止め腕と指をピンと真上へ立てた。水平に振り下ろして一つの方角を指す。日が帰って行った西の空は既に真っ暗だ。
「にぃに、あっちだね」
『逆です。マップの向きを北に固定したらどうですか』
「……いいと思う。そうする」
アプリに案内されるルートをなぞり始めるミミとミュウツー。だから何だという訳ではない話をしながら採掘の町の坂道を下っていく。
前回テーブルシティ集合の時は店舗を間違えたからなあ。
同じ店が無駄に密集していますからねあの街は。
とそういう話題になってミュウツーマネージャーから念を押された彼女は、同じミスは繰り返さないよ、と強気に答えたが念の為に己のスマホを見直した。指差し確認入力OK!
「後はここから道なりに徒歩2分。集合時間5分前には着くね」
『ですが、彼の性格ならもう待っている筈ですよ。ほらレッツゴー』
「はいはいレッツゴーレッツゴー」
今回会う人物なら遅刻をしても、急だったもんね、ごめんね等と反対に謝って来そうではあるのだが。冷静に急かされて石畳を蹴り出す。氷上を滑るように低空飛行するエスパーポケモンを背後に引き連れて、ミミはポーンポーンと跳ねるように下り坂を進んだ。
見えて来た待ち合わせ場所の前には白い帽子の男の子が立っていた。脇に抱えているPCで暇潰しするでもなく遠くを見渡していた彼に早々と見付けられる。
「ミミくーーんっ!!」
勇気凛々元気溌剌、大きな声。発光エフェクトの幻影を見せる聖属性の笑顔。名を呼ばれていない仕事帰りの働き者達まで声の方を注目する。
あわわわとスピードアップした彼女を見たらアッと思ったらしい。その子は風を切る程大きく振っていた手を首に掛けたヘッドフォンへ戻して見る見るちいさくなる俯く。
そうしてみても居た堪れなくなったのだろう。彼はスタスタスタと逃げ足早足でミミとの合流を急いだ。
「ピーニャくんごめんね、お待たせしたねっ」
「いやいやいいよ、急だったもんね。来てくれてサンキューだよ」
ここまで来れば大声不要だ。背丈の高いピーニャがミミに合わせて、右頬へキス、左頬へキス、パルデア式の挨拶をする。
カントー育ちのセニョリータは未だにこのDos besosに緊張するそうだが初めの頃よりは慣れてきた様子。
ドキドキされたらボクまでドキドキしちゃうって。
シンクロ的な?
そうそうシンクロ的な?
そんな会話があったのはこの地方の挨拶を教えてと頼まれた時だった。
しかし彼、今は挨拶なので特別意識することがないけれど、今また頬へキス出来るかと問われたら出来ないピュアピュアなボーイなのだ。
「それよりごめんね?恥ずいことになっちゃって。ちょっとテンション上がってるかも……。
仕事で呼び出しておいて何だけど、ミミくんに会うの楽しみでさ」
なんて、はにかみつつも話す素直な後輩は先輩から頭を、否、頭までは届かないので右と左の頬を、両手で挟まれてうりうりと潰された。
上機嫌な先輩から後輩は次のように思われている。赤い帽子のあの人をファイティングドッグに例えるならピーニャはセラピードッグだなと。
「ちょ……!やめてよ~!」
「あっはっはっ可愛い奴めえ」
言葉では抵抗している風だがその顔はニッコニコなので良し。
にぃにと会うのも楽しみにしてたよ!そう言われて当ポケモンも目を細めている。ミミがミュウツーも満更でもなさそうだと態々伝えたのはテレパシーは秘密だからだった。
「……にしても。いやあ……ピケタウンには初めて来たけど、面白い町だねここ」
「初めてなんだ?」
「バッジコレクターとして世界各国津々浦々旅をして来たけど、ジムがない所はノーマークだったから」
洞窟住居が建ち並ぶ町並にしっとりした岩の呼吸を感じながら。家々に灯る白や帰り道を行くトロッゴンの石炭の赤。キラキラを映す彼女の瞳へピーニャは微笑みを返した。
彼とミミの出会いも、ダンバッジくれー!という道場破り紛いの事案だったりして。懐かしい。
「じゃ次いでに観光していきなよ。ボクで良ければ付き合うし」
「そうしようかな。
それじゃ仕事仕事!今回の依頼内容を聞いても?」
「OK!助けてほしいのはポケモンの保護……まぁ、先ずは捜索からなんだけどさ」
喫茶室に入るか伺われたが、長くはならない話だしとアイスかクレープどちらがいいか尋ねてそちらへ移動しつつ。
スマホロトムにガイドを頼んでいる依頼主の横ではアナログ派がヒップバッグから取り出した手帳と鉛筆でメモを始める。不注意になりがちな前方は優秀ミュウツーがカバー。
「どこを怪我しているのかな?」
「怪我の状態は掴めてないね」
「ほう?なのに保護を?」
「それが……そのポケモン、ガラルのポニータっぽいんだよ」
「何とおっ!?」
驚くのも無理なかった。ガラル地方は所謂島国、泳げない飛べない陸上グループの野生ポニータ1匹が越境して来られる場所ではない。
「シュウメイとビワちゃんが水色のたてがみの白い馬ポケモンを見たって言うし、気になるっしょ?それでアカデミーで生物の先生に訊いたらさ、特徴が類似するってさ」
「誰かが逃がしたのか……。何にせよ早く保護してあげたいねっ!」
一ポケモンレンジャーとして、生態系を乱す人為的行為には早急に対応して行きたい所存である。ミミはフンゴフンゴと息巻いている。
ポケモン第一。やる気。乗り気。気後れもなければ拒否もしない性格を頭では理解していたが、その反応を受けてピーニャは漸く安堵した。
「取り敢えずは東3番エリアをモトトカゲ走らせて捜す感じね。ボクのは3XLサイズで2人乗りOKだし」
「了解っ!」
手分けした方が良くない?とか言うのは良くない。二重遭難等の危険性もないが、夜間だし見落とし対策のダブルチェックも大切だからということにしておこう。
そして2人はアイス屋台、あまいやつめたいやの前に到着。Hola! と販売員と挨拶を交換する。
「アイスの種類はどれがいいとか、わかる?」
「エスパータイプのポケモンに遭遇し易くなるのって、チョコチュロスなんだよね……。
ピケにチュロス屋はないし、今日は好きなやつでいいんじゃないかな」
ここでパルデア文化、食事パワーについて。
当たるも八卦、当たらぬも八卦、当地方ではポケモンを捜したりする時に願掛けとして特定の食事を摂って行くことが多いのだ。食材の摂取を優先して、挟まないサンドウィッチを好むポケモントレーナーも多いのだとか。
「にぃにはチョコミントだよねえ」
「ミント嫌いのポケモンって見ないよね」
「……あ、ああ、うん、人間は意外と多いよね、え、ええとどれにしようかなあ私もチョコミントかなあ」
……だからドラッグミントをまんまと食わされて、人間好みに調教されて仕舞う輩が多いんですよね……。
ミュウツーが溢した哀傷は拾わずにそのまま土葬する。ミミはそっと手帳を閉じてバッグの奥へと仕舞い込んだ。
「あ、でもこの、コジオソルトも気になる」
「じゃボクがコジオソルト先に買うよ。それで味見したらいいじゃん」
「神対応……!天才!いいのっ?」
「いいって!こんなことでそんなに喜ばなくていいってば……!」
わあいと呑気に万歳をする彼女から視線を逃がして、照れるピーニャは大きな声で販売員へ声を掛けた。
おしまい